阪神競馬遠征記 2001年春

まだまだ風は冷たいがそろそろ春のクラシックの蹄音も聞こえてくる3月10日土曜日、21世紀初となる阪神競馬遠征が挙行された。今回はなんと宿泊つきで土曜・日曜とも競馬を楽しもうという豪華版である。参加者は四国の井崎先生、キタノさん、O元トラックマン、NINOのいつもの(笑)4人である。今回の遠征のテーマは昨年暮れの中京遠征で途切れてしまった「万馬券ジンクス」の復活である。それでは4人の奮闘記をどうぞ。

<吉田さんの法則>
今回は高速バスを使っての遠征である。なんと言っても往復7020円は魅力だ。JRとの差額で指定席代金がペイできる。井崎先生は前日まで東京出張だったため少々お疲れ気味である。
井崎「中山突撃組には負けられんな。」
この遠征が予定されていなければ当然中山に参戦していた先生である。新しい職場はやたら出張が多く、海外出張もあるとのこと。
NINO「それじゃ、海外競馬も楽しめるんじゃないですか?」
井崎「それが今決まってるのはパキスタンなんだよなあ。」
パキスタン競馬ってのは聞いたことがないなあ・・・。
キタノさんはスポーツ新聞を何紙も買い込んでいる。何でもニッカン、スポニチをはじめそれぞれの新聞に種々の必勝法があるらしい。
井崎「必勝法といえば、"吉田さんの法則"は使えるよ。」
ご存じない方に説明すると、"吉田さんの法則"とは週間競馬ブックで連載中のかなざわいっせい氏のエッセイ「八方破れ」で紹介されたもので、準メインで掲示板にのった騎手がメインレースで連対する、というものだ。

<強い!スパルタクス>
約3時間の後、バスは三宮に到着。どうやら4Rあたりから参戦できそうだ、と思っていたら、やはり井崎先生はすでに電話投票でバンバン買っている。キタノさんも2Rを見事に1点的中だ。阪神競馬場に到着するとちょうど4Rが発走するころだったので、馬券は5Rから参戦することとなった。本日はB指定席で4コーナー寄りの端っこだった。席からコースを眺めると阪神競馬場がいわゆる「おむすび型」をしているのがよくわかる。さて、5レースはスターバレリーナの仔スパルタクスが圧倒的人気である。レースはそのスパルタクスが9馬身差の圧勝。サンデー、河内、長浜厩舎である。アグネス2騎に続いてまた楽しみな馬があらわれた。
8Rのゆきやなぎ賞を迎えるとO元TMの鼻息が荒くなってきた。
O元「私の今日のメインレースはココですよ!」
お目当てはペーパー馬の1枠1番ヴェルデマーレである。皐月賞出走のためにはここを勝つしかない。O元TMはヴェルデマーレから総流しで勝負をかけた。が、ヴェルデマーレは熊沢が出ムチを入れる出足の悪さ。直線に入ると人気のブライアンハニーが抜け出し、1枠でも2番のアスカツヨシの方が差し込んできて3万円を超える万馬券。ヴェルデマーレはもう一息の4着となった。ペーパーオーナーとしては残念な結果となったO元TMだが、まだまだダービーには間に合う。ヴェルデマーレの次走に期待したい。

<単勝買わんかい!>
10Rはジャンプの重賞阪神スプリングジャンプ(J・G2)である。普段は落馬が怖くてジャンプレースを買わない私だが、今日は自信の推奨穴馬がいる。13番の熊沢騎乗ダンシングターナーである。全然人気がないが、ダンシングブレーヴ産駒はリファール系だけにきっと障害の大きいところをとれるはずだ。気合いを入れて流しをかけるが、どういう訳か単勝だけは買わなかった。レース終盤ダンシングターナーが先頭にたつと直線では独走でのレコード勝ち。焦点は2着争いに絞られ、圧倒的1番人気のランドパワーとヤスノテイオーの争いになり、わずかにランドパワーが競り勝った。馬連は一番安目の7050円となった。これは次の日わかったことだが、ランドパワーはレース中に競争能力喪失の故障をしていたのである。不謹慎を承知で言わせてもらえば、故障で競争中止していてくれれば、馬連は380倍を超えていたのだが。それよりもショックだったことは単勝が8980円もついたのに買っていないこと!
井崎「何で単勝買わないんだよ。」
O元「普通このオッズなら買うよ。」
ほんとだよなあ、あー、バカバカ。

<万馬券ジンクス復活!>
さて、いよいよメインレースを迎えることとなり、井崎先生は吉田さんの法則のチェックである。中山10Rで掲示板にのったのは北村、後藤、横山典、松永幹、早川(公営)である。わかりやすいのが阪神メインの大阪城ステークスだ。10Rが障害だったため、法則にあてはまるのがグランドシンザンに乗る熊沢だけなのである。グランドシンザンは先生のタイム評価でもBとなっている。単勝は何と万馬券だ。
先に中山牝馬Sの発走だ。エイシンルーデンスが単騎で逃げる予想通りの展開。直線に入ってもセーフティリードだ。外からグリーンプラネット、ラティールが突っ込んできたところがゴール。馬連は万馬券となった。これは残念ながら誰も的中せず、吉田さんの法則も不発だった。
続いて阪神メインの大阪城ステークスだ。レースはタマモヒビキが逃げ、シルヴァコクピットとテイエムトッキューが追いかける展開。圧倒的1番人気フサイチゼノンは中段に構える。4コーナーでもタマモヒビキのリードは大きい。そして、2番手に何とグランドシンザンが上がってきた!
井崎「くまざわー!くまざわー!」
先生の大声(推定150デシベル)が指定席に響きわたる。席が4コーナーなもんだから直線はずーっと叫び通しである。グランドシンザンはタマモヒビキはとらえることはできなかったが、見事2着でゴール。井崎先生の馬券はグランドシンザンからの枠連総流しとワイド総流しであった。気になる3着はこれも人気薄オースミブライトが入った。これも井崎先生の大声パワーか。気になる配当は、
枠連23280円
馬連66680円
ワイド タマモ―グランド 12800円、タマモ―オースミ 6930円、グランド―    オースミ 21970円
である。
井崎「何で枠連と馬連で4万円も差があるんだよ!」
そうなのである。8枠のもう1頭のレガシーハンターが出走取り消し(馬券発売前)のため、枠連も馬連と同じく1頭ずつの組み合わせなのである。この差は枠連を買った人は納得いかないよなあ。しかし、ワイドのW万馬券とあわせて1レースで万馬券3本をゲットの井崎先生であるからして、笑顔、笑顔だ。ここに万馬券ツアーの伝説も見事に復活となった。

<福禍は糾える縄のごとし・・・>
メイン的中の勢いで最終レースも、といきたかったが残念ながら外れ、初日の勝負は終了となった。
井崎「馬券のコピーを取ってくるよ。」
とコピーサービスに向かった先生だが、すぐに引き返してきた。
井崎「・・・馬券が、ない!」
一同「ええっ!」
すぐに指定席に戻る先生。最終レースが終わると掃除のおばさんが待ちかまえていたからゴミが残っている可能性は低い。しばらくして先生が手で大きなバツをつくって帰ってきた。ゲンをかついでメインの的中馬券を最終レースの馬券に重ねていたが、外れ馬券と一緒に捨ててしまったらしい。こんなこともあるんだなあ。拾い屋がいるのもうなずける。それにしても払い戻し金額は合計で58050円(!)である。
井崎「だいたい何で指定席の近くにコピーサービスがないんだよう・・・。」
指定席の近くにコピーがあればメイン確定後すぐにコピーして換金していたはずだ。私ならショックで口も利けなくなるだろうが、中山遠征組に電話で事の顛末を報告する井崎先生。こうして元町中華街での祝勝会は夢と消えてしまい、我々は宿泊先である新神戸オリエンタルホテルへ向かった。ホテルの地下のスーパーでパック寿司とビールを買い込み、部屋で翌日の検討会となった。西船橋の家族亭で反省会をしている中山遠征組に井崎先生が電話を入れる。
井崎「馬券見つかったよ。ホテルで寿司ですよ。ウソウソ、やっぱり出てこなかった。」
でも、先生もすっかり立ち直った様子で安心だ。明日必ず借りを返すことを誓い床についたのだった。

<今日は捨てない>
翌朝は7時40分ロビー集合だ。
キタノ「5時半に新神戸駅でスポーツ新聞買ってきたよ。」
井崎「僕は4時に起きて分析したよ。」
うーん、競馬人は朝に強い!
三宮駅でモーニングを食し、いざ阪神競馬場に突撃である。この日はA指定席で、場所はゴールやや手前であった。何と馬券は自動販売機だった。
井崎「これは買い間違いしそうだなあ。」
前日購入していた赤ワインを開けてまずは前祝いだ。
井崎「赤ワインでローズバドか?」
私は1R1730円、2R1650円を連続ゲットで好スタートがきれた。4Rではセレクトセールでの高馬アドマイヤセレクトとキュロドティグレで決まって1810円。
キタノ「サンデーのワン・ツー!よろしい!」
当然のようにキタノさんがゲットである。
井崎「まったく、いつまでこんなんで当たるんだよ。いやになるなあ。」
キタノ「さすが1億8千万円。」
5Rはジャンプレース。熊沢のコウエイテンカイチが圧倒的な人気だ。昨日見事に重賞を勝った熊沢だけに信頼できそうだ。コウエイからエリモシテンオー、穴でスカイノアーミジャをねらった。するとスタート後間もなくエリモシテンオーが落馬!そして3番手でがんばっていたスカイノアーミジャも終盤の障害で落馬!まったく、何じゃそりゃ!の世界である。ジャンプで2日連続いい思いはできなかった。
O元TMが推奨した6Rのリリースラッガー(7番人気)、7Rのヒカリホーオー(同じく7番人気)が激走するものの、1着が人気馬で残念ながら確率変動はおきず。井崎先生は序盤からコツコツと的中させている。
井崎「今日は馬券を捨てんからな。」
と馬券をキープしているが、すでに厚みが1センチくらいになっている。

<連日の絶叫>
10Rの武庫川Sでは先生とO元TM注目のジュエリーソードが出走だ。中山でクリスタルカップとブラッドストーンSが行われる日だけにジュエリー馬名の激走も考えられる。
先生はジュエリーソードからの流しと単勝を購入。レースはハナを切ったジュエリーソードが後続をグングン引き離す。4コーナーを回ってもまだリードは6馬身ある。
井崎「わたなべー!わたなべー!残れー!」
またまた、先生の絶叫(今日は推定180デシベル)が指定席に響きわたり、その後押しをうけたのかジュエリーソードが逃げ切り勝ち。2着に1番人気のグリーンブリッツが入った。先生は当然ワイド総流しをしているだけに注目は3着だが、何と10番人気のスペリオアザーズが突っ込んできた。井崎先生の大声は人気薄をもってくるようだ。配当は単勝5480円、馬連14500円、1着と3着のワイドが10750円である。馬連はなぜか抜けてしまってなかったようだが、見事にワイド万馬券をゲットである。
井崎「メインは吉田さんの法則をチェックだ!」
中山の10Rで掲示板にのった騎手でクリスタルカップに騎乗があるのは、柴田善(リトルソルジャー)、田中勝(コウエイマーベラス)、後藤(カチドキリュウ)、松永幹(レスレクシオン)だ。一方、阪神では渡辺(マックスマリ)、岡部(ハッピーパス)、小牧太(ローズバド)、福永(リキセレナード)である。吉田さんの法則によるとこれらの馬が激走することになる。

<買い間違いで・・・>
自動販売機での買い間違いを心配していた井崎先生だったが、やはり間違ってしまったようだ。メインレースの場名を間違い、中山を買うところが中京になってしまった。馬券はF、H、Iのワイド3点ボックスである。ところがこの買い間違いが炸裂したのである。中京メインの遠州灘Sは1着H番、2着F番、3着I番で決まり、何とワイド3点完全的中である。配当は2040円、3130円、2290円の合計7460円となった。また、ブラッドストーンSもレース番号間違い分が的中して2800円の配当をゲットし、買い間違いだけで3万円近い配当を手にしたのである。
井崎「昨日の半分を神様が返してくれたのかな。」
さて、中山のクリスタルカップは、グラスエイコウオーが逃げ込みをはかるところを大外から伏兵カチドキリュウが差しきった。2着にも人気薄シンボリスナイパーで馬連は72150円の超万馬券。1〜3着までを芝未勝利馬が占めたように、現在の中山の馬場はパワー優先のようだ。これが皐月賞にどう影響するのだろうか。
井崎「ああ!やっぱりウマ枠だったぁ!」
8枠は
イネルレガリア
カチドキリュ でウマ枠となっていたのだが、先生は残念ながら買い漏れしていたようだ。
続いて阪神メインのフィリーズレビューの発走だ。まずスタートでフィールドサンデーが出遅れ。テンザンデザートがレースを引っ張るが岡部ハッピーパスが直線で先頭に立つ。このまま押し切るかと思われたところを外からローズバドの強襲だ。小牧太の公営騎手らしいアクションに導かれて見事1着でゴールイン。やはり赤ワインのローズバドだったか。残念ながら我がチームはメインでは爆発することができなかった。終わってみれば今日は両メインとも吉田さんの法則がズバリはまっていた。

<井崎先生の独り舞台>
帰りのバスの時間のこともあり、最終レースは見ないで帰ることになった。2日目の成績は井崎先生のみ勝利となった。それにしても2日間で4本の万馬券的中はスゴイ。馬券紛失事件といい今回の遠征の"主演男優賞"(そんなもんがあれば)は文句なく井崎先生である。こうして波瀾万丈の今回の遠征は無事終了となった。万馬券ジンクスも復活したし、次回の遠征も非常に楽しみである。
                   【終】