「経営者の教科書」 

 江口 克彦 PHP研究所代表取締役社長

松下幸之助から学んだ経営の普遍的理念とは−


ということで100編にまとめられていることから読みやすいと思って購入。
共感を覚えることが多く納得した。

自分のモットーである「熱意」、「誠意」、そして「人を大事にすること」ということが
正しい道であることを再確認できた。

新しくうなったのが「経営理念」である。
どうも理念とは「お経」程度にしか感じていなかったものだが、
それがいかに会社経営にとって大切なものなのかということを
痛切に感じさせられた。
ライブドアの堀江社長には理念が感じられないのが残念である。
経営理念には社会貢献の意義がこめられたものでなければならない。

あとは「人徳」である。
これからはモットーに加えることにしよう。

松下幸之助の経営理念の悟りが99番目に出てくる。
最語の方が非常に内容が重い本であった。

99 王道の経営には、悟りの経営理念が絶対必要

 ……なぜだろうか、なぜだろうかと考え続けた松下は、ハタッと思い当ること、胸を衝くような、
 全身が震えるような答えがうかんだ。
  そうだ、使命だ、使命感があるかないかだ。
 宗教には心の救済という使命がある。人々の魂を救おうとしている。
 それにひきかえ、商売の使命はないか。ない、ないではないか。
 しかし、考えてみれば、人間は心の救済だけでは十分な幸せはない。
 物の救済、物があってまた幸せということになるのではないか。
 いわば人間の救済は物心両面からの救済でなければならない。
 とするならば、物の面から人を救済する、その商売、経営もまた宗教と同じように
 大切なものと言えよう。
 商売の使命とは物の面からの人間救済にある。
 そうだ、そうなのだ。人々を救済する、いい物で安い物。
 人々に豊かな生活を約束する商品を作り続け販売し続けることこそ、
 商売人の使命、産業人の使命だと腹の底で承知した。
 松下幸之助はそのとき、経営の基本の考え、使命を悟ったのである。

  そう悟った松下は、産業人としての使命とは、物資を豊富ならしめることによって
 貧しさをなくし、真の繁栄をもたらして、平和な幸福な社会をつくる手助けをすることであると、
 全従業員の前で発表した。昭和7年のことである。
  この「経営理念の悟り」があればこそ、後の松下電器の発展繁栄が実現した。

 (中略)

 理念なき経営は、目的地を持たないまま飛び立つ飛行機に等しい。
 経営とは厳しいものである。
 口先だけの経営理念では、すぐに挫折してしまう。
 経営者は経営理念を「悟り」として受けとめなければならない。
 そのことの重要性は、何度指摘してもしすぎることはないと思う。
 「オリジナリティ溢れる華やかな経営理念を」などと無理をする必要はあるまい。
 徹底的に考えて、その結果なら、自然な、素朴な言葉でいい。
 しかし、その言葉は経営者の悟りに裏付けられた、純金の、本物の言葉でなければならない。
  王道の経営には、悟りの経営理念が絶対条件と言えるだろう。