ビジョナリーカンパニー
時代を超える生存の原則
ジェームス・C・コリンズ/ジェリー・I・ポラス 山岡洋一[訳]
日経BP出版センター
経営者のアンケートで推薦図書の上位に挙げられる本として知っていたので
前から読んでみたかった。
読んでみてやはりよかった。
原文のタイトルは日本語の副題がメインである。
原文タイトルの方が読んでみてピンとくる感じを受けた。
[Built to Last である。
副題として
Successful Habits of Visionary Companies
経営理念の重要性を再認識した。
愚直に当初の理念を守り通すことでビジョナリーカンパニーとなる。
それを比較対象企業との違いを示すことにより証明している。
ビジョナリーカンパニーとして挙がった会社は以下のとおり18社にのぼる。
スリーエム(3M)
アメリカン・エキスプレス
ボーイング
シティコープ
フォード
ゼネラル・エレクトリック(GE)
ヒューレッド・パッカード(HP)
IBM
ジョンソン&ジョンソン(J&J)
マリオット
モトローラ
ノードストローム
プロクター&ギャンブル(P&G)
フィリップ・モリス
ソニー
ウォルマート
ウォルト・ディズニー
いずれも1950年以前に設立された企業を対象としている。
日本ではソニーがただ1社入っており、トヨタはない。
1995年と10年前ゆえ、日本ではソニーが絶頂だった頃である。
その後映画にシフトしたソニーよりもトヨタの方がこの本のビジョナリーカンパニーに
ふさわしい気もする。
また、経営層は生え抜きということであるが、
面白いことにGE出身のマックナーニ氏が3MのCEOを務めたあと
ボーイングのCEOに就任するらしい。
なんと3社をすべてビジョナリーカンパニーで過ごすということになる。
ま、それはさておき、
どの会社も
「時計を作る」 経営者が変わっても変わらないしくみを作る
「ANDの才能」 AかBかの選択ではなく共に達成する
「基本理念を維持し、進歩を促す」
「一貫性」
ビショナリーカンパニー(VC)はこのような仕組みを持っており、当初は小さくともすばらしい成長を見せるのである。
要約
◎ カリスマ指導者は必要ない。長く続く組織を作り出すことに力を注ぐ。
日本では「徳川家康」の江戸幕府がヒントか
◎ 利益は追求するが、基本的価値観や目的といった基本理念を非常に大事にしている。
◎ 理念は必ずしも共通的なものはない。
理念の内容ではなく、理念をいかに深く信じているか、そして一貫して理念が実践されているかということが大事。
「何を価値観とするべきか」ではなく、「われわれが実際に何よりも大切にしているものは何なのか」
◎ 基本理念を信仰し、情熱を持って維持する。
VCは、基本理念をしっかり維持しながら、進歩への意欲が極めて強いため、
大切な基本理念を曲げることなく、変化し、適応できる。
◎ VCは、その基本理念と高い要求にぴったりと「合う」者にとってだけすばらしい職場である。
合わない者には病原菌のように淘汰が待っている。
(ノードストロームの場合で例示している)
◎ 綿密な戦略などたてない。
大量のものの試行錯誤によって、結果的に進化している。
あたかもダーウィン「種の起源」の進化論のとおりである。
◎ 基本理念を大事にするため、社外からのCEO招聘は非常に少ない。
→ といいつつ、その後はけっこう増えている。
◎ 競争に勝つでなく、自分に勝つ。すなわちエクセレンスを目指している。
◎ 二者択一を拒否する。AとBの両方を同時に追求する「and」の考え方を大事にする。
1 時を告げるのではなく、時計を作る
すばらしいアイディアと偉大なカリスマが重要ではない。
ソニーやHPは会社はじめただけで、そのときにアイディアはなかった。
VCはきわめて有能な経営者を育成し、社内で昇進させる点で、比較対象企業より優れており、このため何代にもわたって
優秀な経営者が続き、経営の継続性が保たれている。
しかし、すばらしい製品の場合と同様に、VCで優秀な経営者が輩出し、継続性が保たれているのは、
こうした企業が卓越した組織であるからであって、
代々の経営者が優秀だから、卓越した企業になったのではないだろう。
会社を築くにあたって、建築家のような方法を取った。
→ アーキテクチャーということになるのだろう。これが時計を作るということ。
ウォルトンは自ら発展し、変化する組織を作ることに力を注いだが、エームズの経営陣は、どんな変更でもすべて上から命じ、
店長の行動を細かくマニュアルでこまかく指図し、自主性を発揮する余地を残さなかった。
→ 組織のメンバーの自主性を重んじることが重要のようだ。
しかし、その組織のメンバーには経営理念、目的、行動規範を徹底的に刷り込む努力を行う一方で、
組織的に社員の自主性が発揮できる仕組み(権限委譲)を行っている。
ウォルトンは自分が作った会社が壊れることなく、自分がいなくなったのちにも、これまで以上に力強く、長く繁栄できると
確信しながら、この世を去っていった。
ウォルトンは自分が2000年まで生きられないと知りながら、1992年に亡くなる直前に、2000年までの大胆な目標を定め、
自分がいても、いなくても、会社はこの目標を達成できるとの自信を持っていた。
「ウォルマートの社員が道をひらいていくだろう」
「当社の社員は活気に満ち溢れている」
アメリカ合衆国建国での最大の課題は誰を指導者に選ぶかではなかった。
「われわれがこの世を去った後も、優れた大統領をずっと生み出すために、そんばプロセスを作ることができるのか。
どのような「国を築きたいのか。国の原則は何か。その原則をどう運用すべきか。
われわれが目指す国を築くには、どんな指針と仕組みをつくるべきか」
2 ANDの才能
利益を超えた目的 と 現実的な利益の追求
ゆるぎない基本理念と力強い変化 と 前進
基本理念を核とする保守主義 と リスクの大きい試みへの大胆な挑戦
理念の管理 と 自主性の発揮
などの一見矛盾する逆説的な考え方をVCは有している。
筆者は中国の陰陽思想の「陰陽模様」をイメージとして使っている。
そもそも二律背反の達成は東洋的思想に近いのであるが
VCは、この ANDの才能に優れているのである。
VCの理念は、現実的な理想主義というべきもの。
VCの「時を刻む時計」の重要な要素は、基本理念、
つまり、単なるカネ儲けを超えた基本的価値観と目的意識である。
基本理念は、組織のすべての人々の指針となり、活力を与えるものであり、長い間ほとんど変わらない。
ソニーの井深は会社設立の10ヶ月足らず、会社の資金繰りもつかないときに「設立趣意書」を作っているのである。
会社創立の目的
・技術者たちが技術することに喜びを感じ、その社会的使命を自覚して思い切り働ける職場をこしらえる。
・日本再建、文化向上に対する技術生産面よりの活発なる活動
・非常に進歩したる技術の国民生活内への即時応用
経営方針
・不当なるもうけ主義を廃しあくまで内容の充実、実質的な活動に重点を置きいたずらに規模の拡大を追わず
・技術上の困難はこれをむしろ歓迎し量の多少に関せず最も社会的に利用度の高い高級技術製品を対象とす。
・一切の秩序を実力本位、人格主義の上に置き個人の技能を最大限度に発揮せしむ
日々の資金繰りに追われながら、こうした崇高な価値観や目的意識を考える創業者を何人思いつくだろうか。
井深から40年後、盛田昭夫はソニーの理念を凝縮し、洗練させた「ソニー・スピリット」を造った。
ソニーは開拓者。その窓は、いつも未知の世界に向かって開かれている。人のやらない仕事、困難であるがために
人が避けて通る仕事に、ソニーは勇敢に取り組み、それを企業化していく。ここでは、新しい製品の開発とその生産・販売の
すべてにわたって、創造的な活動が要求され、期待され、約束されている……。開拓者ソニーは、限りなく人を生かし、
人を信じ、その能力を絶えず開拓して前進してゆくことを、ただひとつの生命としているのである。
フォードの「使命・価値観・指導原理(MVBP)」
1980年の経営危機に当たって、経営陣は時間を取って指導原理を明確にした。
ピープル(人々)、プロダクツ(製品)、プロフィット(利益)の3つのPの優先順位について徹底的に話し合った。
その結果、人々を絶対第一に考えるべきだとの結論に達した。
(2番目が製品、3番目が利益)
GMとフォード。フォードの方がはるかに理念を大切にしている。
GMには人間という面が最も希薄。
HP(ヒューレット・パッカード)
事業の急成長で有能な生え抜きの経営幹部を育てられるかが、特に大きな問題となり、HP経営幹部育成制度を開始。
研修でのデービッド・パッカードの話。
最初に、なぜ会社が存在しているかについて話したい。
言い換えれば、なぜわれわれがここにいるのかだ。
会社は要するにカネ儲けのためにあると、誤解している人が多いと思う。
カネ儲けというのは、会社が存在していることの結果としては重要であるが、われわれはもっと深く考えて、
われわれが存在している真の理由を見つけ出さなければならない。
この点を追求していくと、人々が」集まり、われわれが会社と呼ぶ組織として存在しているのは、
人々が集まれば、個人ではできないことができるようになるからだ、つまり社会に貢献できるようになるからだという結論に
必ず行き着く。
社会への貢献とは使い古された言葉だが、すべての基本である。…
[実業界のなかを]見渡せば、カネにしか興味がない人も確かにいるが、基本的な原動力になっているのは、
カネ以外のこと、製品を作り、サービスを提供すること、つまり価値のある仕事をしたいという強い意欲にある。
この点を頭に刻み込んで、なぜHPが存在しているのかを話し合ってみよう。
……われわれが存在している真の理由は、われわれしか作れない(社会に貢献する)ものを提供することにある。
パッカードは工学部の出身で哲学の出身ではない。しかし、企業哲学とでも呼ぶべき思索にふけり、
経済から離れてHPの「存在理由」を哲学的に探求していたようだ。
パッカードによれば、
「利益は会社経営の正しい目的ではない。すべての正しい目的を可能にするものである」
→ ANDの才能の見事な発揮
比較対象企業 テキサス・インスツルメンツは財務面での成長だけに目がむけられていた
ジョンソン&ジョンソン
1886年「痛みと病気を軽くする」という目標で設立
1908年 この目標を発展させ、顧客へのサービスと従業員への配慮を株主の利益に優先させる経営理念を確立
1943年ロバート・W・ジョンソン・ジュニアは同じ考え方を「我が信条」として書き上げる。
アメリカ独立宣言と同じ体裁でまとめる
1980年代初め、CEOジム・パークは経営者としての時間の優に40%を信条を組織に浸透させることに費やす
社会心理学によると
人々はある考えを公言するようになると、それまではそうした考えを持っていなくとも
その考えに従って行動する傾向が際立って強くなる。
VCは、従業員に基本理念を徹底して教化し、理念を中心に、カルトに近いほど強力な文化を生み出す。
VCは、基本理念に合っているかどうかを基準として、経営陣を慎重に育成し、選別する
VCは、目標、戦略、戦術、組織設計などで、基本理念との一貫性を持たせる。
基本的理念=基本的価値観+目的 心から信じていることを表現することが不可欠!
基本的価値観 : 組織にとって不可欠で不変の主義。
いくつかの一般的指導原理からなり、文化や経営手法と混同してはならず、
利益の追求や目的の事情のために曲げてはならない。
目的 : 単なるカネ儲けを超えた会社の根本的な存在理由。
地平線の上に永遠に輝き続ける道しるべとなる星であり、
個々の目標や事業戦略と混同そいてはならあない。
ほとんどの場合、基本的価値観は鋭く短い言葉に凝縮され大切な指針になっている。
ウォルマート 顧客を他の何よりも優先させる
HP 個人を尊重し配慮すること、人にしてもらいたいと思うことを、人にもしなさい
3 基本理念の維持、進歩
基本理念は変わらないが、戦略は変わる。
何よりも重要なことは、基本理念を維持し、進歩を促す仕組みを整えること。
基本理念を維持することと進歩することが、中国の陰陽思想の陰と陽のように共存する関係。
これが時計をつくる考え方の真髄である。
その具体的な方法としては次の5つ
社運を賭けた大胆な目標(BHAG: Big Hairy Audacious Goals) が進歩を促す(ブレイクスルーを生むということかな)
カルトのような文化 すばらしい職場だといえるのは、基本理念を信奉しているものだけであり、
合わない者は病原菌か何かのように追い払われる。 (カルトというのは新興宗教らしい)
大量のものを試して、うまくいったものを残す (試行錯誤、偶然の産物 まさに進化論を地で行く感じか)
生え抜きの経営陣 基本理念に忠実なものだけが経営幹部となる → 基本理念を維持するため
決して満足しない 徹底した改善に絶え間なく取り組み、未来に向かって、永遠に前進しつづける
以上のポイントについて具体的企業の例で詳しく解説している。
○ BHAG: Big Hairy Audacious Goals 社運を賭けた大胆な目標である
ボーイング社 1952年 民間用ジェット航空機を作る
GE 参入したすべての市場でナンバー1か2になり、当社を小さな企業のスピードと機敏さを持つ企業に変革する
フィリップ・モリス 業界のゼネラル・モーターズになる。
○ カルトのような文化
ノードストローム 誰にとってもいい職場ではない。
合わない人間は追い出される。
VCになるために「やさしく」「居心地のいい」環境を作る必要はない。
VCは勤務成績についても、イデオロギーの信奉という点でも、社員に対する要求が厳しい。
IBM 教会と変わらないほど、自社の信条を組織的に教えている
ウォルト・ディズニー スタッフの雇用に当たって同質性を基準としている 従業員全員がショーのキャスト
厳しい行動規定を徹底的に守らせる
PG&G 秘密主義
秘密の保持と情報管理に執着
飛行機の中で仕事をするな、荷物にPG&Gの社員とわかるような名札を入れるな、人前で仕事の話をするな
(→ 耳が痛いなあ)
VCはイデオロギーに関してカルト的になっている。
しかし個人崇拝のカルトを作るべきということではない。
◎基本理念を熱心に維持するしっかりしたしくみを持つ組織を作ること
創造性と多様性が失われるのでは?
変化を阻害しないか?
確かにカルトのような文化は危険であり、会社にとって制約になりうる。
ただし、そうなるのは陰陽のもうひとるの側が欠けているときである。
カルトのような文化は基本理念を維持するものであり、
これとバランスを取るものとして、進歩を促す強烈な文化がなければならない。
○ 大量のものを試して、うまくいったものを残す
アメリカン・エキスプレス 意図しないまま金融サービスと旅行サービスに進出
ダーウィンの進化論はVCに当てはまる。
アメックスのこの例は「変異」であった。
進化の過程は、「枝分かれと剪定」に似ている。
木が十分に枝分かれし(つまり変異を起こし)、枯れた木をうまく剪定すれば(つまり淘汰のなかで選択すれば)
変化を繰り返す環境のなかでうまく成長してゆくのに適した健康な枝が十分に持つ木に進化してゆく。
ウォルマート 「なんでもやってみて、手直しして、試してみる」 うまくいったらそれを続ける。
GE 計画のもとでの臨機応変 目標と進化という一軒矛盾する2つの要素を組み合わせた経営スタイル
3M 思いつきの実験を奨励。試してみよう。なるべく早く。
ポストイットの発明
本書では進歩を促す仕組みを詳しく解説している。
比較企業のノートンはがちがちの中央集権による官僚体制で進歩が止まる
5つの教訓
・試してみよう。なるべく早く。
・誤りは必ずあることを認める
・小さな一歩を踏み出す
・社員に必要なだけの自由を与えよう
・重要なのは仕組みである。着実に時を刻む時計を作るべきだ。
してはならないこと
● トップダウンの官僚的手法による恐怖と侮辱の経営スタイル
VCが変異を遂げ、進化してゆくとき、基本理念が求心力をもたらす接着剤になり、指導原理になる。
遺伝コードに変化がないように、VCでは変異を重ねていっても、基本理念に変化がない。
○ 生え抜きの経営陣
社内の人材を登用し、基本理念を維持する。
VCでは社外の人材を経営者として登用する比率が非常に低い。
比較対象企業の六分の一
部外者を選ぶに当たっても、基本理念の維持をはっきりとした目標のして最善を尽くす
健全な変化と前進をもたらしながら、基本理念を維持するきわめて有能な生え抜きの人材を育成し昇進させることがカギ
(経営幹部教育に力を入れている。)
○ 決して満足しない
安心感はVCにとっての目標ではない。
それどころか、VCは不安感を作り出し(言い換えれば自己満足に陥らないようにし)、それによって外部の世界に強いられる前に
変化し、改善するよう促す強力な仕組みを設けている。
ムチを用意する必要があること。
不安感を生み出すなんらかの仕組み
ウォルマートの「過去を乗り越えよう」フォーム (常に前進を促す仕組み)
ノードストローム SPH(1時間当たり売り上げ)のランキング
SPHにはどの金額に達すればよいという基準はない。社内競争
将来のために投資する − そして短期的にも、好業績を上げる
VCで「長期」というのは、5年や10年を意味しない。何十年かを意味しており、50年を意味していることが多い
長期投資に力を入れるVC
売上高に対する設備投資の比率が一貫して高い(15社中13社)
モトローラは、社員1人当たり年間40時間の研修を目標、従業員の1.5%をいつも研修に当てるように求めている。
このようにVCでは、不安感をもたらす仕組みと将来のための長期的投資という観点からみると
自己改善の姿勢がしっかりしていると言える。
厳しい自制、猛烈な仕事、将来のための絶えざる努力 が基本
4 一貫性
VCは、基本的理念と進歩のために、会社の動きのすべての部分が協力しあって一貫性がある。
基本的理念と進歩をビジョンと言い換えてもいい。
ビジョンとは、長期にわたって維持される基本理念と、将来の理想に向けた進歩の2つの組み合わせ
一貫性の例として3社
フォード 「使命、価値観、指導原理(MVGP)」
メルク 研究所が期待どおりのものとなるよう、支援に全力を尽くすことを約束
社会的責任という基本理念について古くから一貫性を持つ
HP どの点で技術の進歩に貢献できるのだ。技術面で進んでいることがはっきりとしている製品を
開発できないかぎり、発売はできない。市場がどんなに大きくても原則は曲げられない。
(IBM互換のパソコンをいますぐ発売すべきとの営業幹部からの意見に対して:1984年)
HPは人事部門が各部門の人事上の問題に介入するのを禁止している。
−管理職の仕事のなかでは、部下に配慮することが最も重要だ。
人事部門はどんな理由があっても、各部門の人事上の問題を扱ってはならない。
まともな管理職になるためには、人事に対する責任を受け入れ、
人事の問題を自分で解決で処理しなければならない。
「第一線の責任者を教化し、基本理念に適応するようなことが重要だときづいていた。
ほとんどの人たちにとって、第一線の責任者こそが、会社を代表しているからである。」
(設立者 デーブ・パッカード)
一貫性の教訓
VCは基本理念を維持し、進歩を促すために、ひとつの制度、ひとつの戦略、ひとつ
の戦術
、ひとつの仕組み、ひとつの文化規範、ひとつの象徴的な動き、CEOの一回の発言
に頼ったりしない。
重要なのはこれらすべてを繰り返すことである。
ある部分だけではダメ。
すべてが相互に関連した芸術傑作のようなもの。
小さなことにこだわる
従業員は小さなことを見逃さない。
ささいな点に言行不一致があるとそれを見逃さない。
「そら、見ろ、お偉方は煙幕をはっているだけなんだ。心にもないきれいごとを言っ
ているだけなんだ」
下手な鉄砲ではなく、集中砲火を浴びせる。
VCはいくつもの仕組みや過程をバラバラに作っている訳ではない。それぞれが互い
を強化しあい、
全体として強力な全体パンチとなるように、集中させている。
流行に逆らっても、自分自身の流れに従う
正しい問いの立て方は、「これはよい方法なのか」ではなく、
「この方法は当社に合っているのか、当社の基本理念と理想に合っているのか」であ
る。
矛盾をなくす
VCで変えてならない聖域は基本理念だけである。それ以外のものは何でも変えるこ
とができるし、
なくすことができる。
一般的な原則を維持しながら、新しい方法を編み出す
VCが基本理念を維持し、進歩を促すために使う具体的な方法は間違いなく変化し、
進化してゆくだろう。
前述の5項目以外にも新たな方法が生み出されうるのである。
最後に筆者の意見が述べられているが、これが納得できる要約である。
どんな指導者もいずれ死ぬことである。変わることないこの現実を乗り越えるには、
何よりも組織の性格を考えることに焦点を当てなければならない。
企業組織のトレンドを見ればいい。
階層を減らし、権限分散を進め、地理的にも分散し、個々人の自主性を認め、
知識労働者が増えてくる。
指揮命令系統、組織、予算など、従来の管理の方法は、これまでになく通用しなく
なってきている。
技術の進歩によって、ホーム・オフィスやサテライト・オフィスで勤務できるように
なり、
通勤すら不要になってきている。
このため、企業の求心力をもたらすもののなかで、理念の役割が高まっている。
誇りを持てる何かに属していたいという人間の欲求は変わっていない。
価値観をしっかりさせ、目的を持って、人生と仕事に意義を見出したいという人間の
欲求は変わっていない。
共通の信念を持ち、共通の大目標に向かう人たちとの関係を保っていきたいとしたい
という人間の欲求は変わっていない。
従業員は業務上の自主性を要求しながら、同時に、自分たちの関係している組織が、
何かの目的を持って前進するよう求めている。