ビジネス・アカウンティング」 
  MBAの会計管理

 山根 節  慶應義塾大学大学院経営管理研究科教授
これも研修の課題図書であったのだが、非常に良かった。
B/S(バランスシート),P/L(損益計算書)との格闘である。
その見方を親切に教えてくれる。

情報リテラシー(読み、書き、そろばんなどの基本的能力)が経営管理者に必要な能力のすべて

企業のトップやミドルには「行動力」が求められるが、
それは組織のメンバーへのメッセージ、シンボリックな情報発信
言い換えれば、有業員に向けたアピール力であり、説得という情報能力

情報リテラシーの具体的なもの
 1 自然言語  母国語が当然重要
 2 機械言語  コンピュータを使いこなす
 3 会計言語  会計は経営の「写像」 「地図」 


経営の4つの選択肢
  「Yes」, 「No」のほかに,「条件付Yes」と,「条件付No」があるというのは
 当たり前とはいいながら自分にとってコロンブスの卵であった。

ソニーの事例研究のテーマで
 創業者の一人、盛田昭夫さんの考えを初めて知った。
 盛田さんが、ニューヨークやシカゴのビジネス街を歩くたびに、
「ソニーを、いつかあんな大きな会社にしたい」と考えていた。
30年前のその頃、そこで巨大な本社ビルを構えていたのが音楽・映画などの
エンターテイメント企業や、銀行・保険などの金融業だった。
日本でもいつか、金融業やエンターテイメントが基幹産業になっていく。
そう確信した盛田さんは、「いつかソニーでも、銀行や映画会社をてがけたい」と
思っていたのである。
  
第9章 マネジメント・コントロールについての解説は非常に興味深く読んだ。
そうなんだよとひざを打つ箇所が多かったのである。

アメリカ企業が計数管理と統制シシテムを経営の中心にすえ、米国ビジネススクールで
マネジメントコントロールが教育されればされるほど、皮肉なことにアメリカ企業が衰退していった。
ビジネススクールで会計管理を極めたMBAプラスCPA(公認会計士)の有資格者が経営者に就任すると、
企業業績が悪化しはじめる。
彼らがマンハッタンにある分厚いじゅうたんの社長室で、実績管理資料を眺めながら、
遠く離れた営業所や工場の管理職に檄を飛ばせば飛ばすほど、事態はますます悪くなった。
アメリカの主要な製造業であった繊維産業→鉄鋼業→家電・エレクトロニクス産業→自動車産業が、
次々と日本企業との競争の前に、敗れていったのである。

このような事例としてスーパー「正直家」店長の苦悩が載せられている。
 
「ホーソン工場」の実験
人間関係論 
  ⇒ 物理的、経済的条件より、感情や集団の雰囲気が作業能率に大きな影響を及ぼすことが
    明らかとなった


数学的管理会計の偏重がアメリカ製造業を衰退させた。
(現実を過度にモデル化しているのにもかかわらず、現実と混同している)

日本は、いわゆる「現場主義」に立ち、管理資料の数字を見る前に現場に行って改善活動をしている。
この日本的経営ブームがいつの間にか消えてしまった。
「顧客の満足に対する配慮」や「働く人々に対する目」が重要

定義の変化

マネジメントコントロールとは

アンソニー 
 マネージャーが組織目的達成のために、資源を効果的かつ能率的に取得し、使用することを
 確保するプロセス
  P−D−S, P−D−Contorol、 P−D−C−A


伊丹・加護野
 組織の人々の動機付けを行い、しかも彼らの行動が究極的に組織目的に合致するよう
 まとめ上げ、引っ張っていくための仕組みやプロセス


◎ 業績=環境×工夫×情熱

    ・環境を見つめる (市場、消費者、競争者)
    ・事前の工夫:計画と連携  ・事中の工夫:コントロールのうまさ  
    ・やる気・努力 達成感・喜び ・協同の意欲、チームワーク、調和

◎ マネジメントの基本  

   「支持された戦略」でコントロール
  
  マネジメントの誤解
   「戦略の代理変数」でコントロール
    手段が目的化 ⇒ 環境に目をむけなくなる
                 工夫の意欲にブレーキ
                 情熱に水を差す

 計画は、戦略を数値に落とし込んで作成されう。
 つまり戦略の代理変数が予算であり計画である。
 この代理変数で組織がコントロールされるのだが、ここで誤解が起きる。
 
 代理変数は、放っておくと一人歩きを始める。
 数値でコントロールするものだと誤解してしまうのである。  
 数字は性格上冷厳そのものなので、人々を縛り始める。
 数字を振り回すほど、人々はすくみ、金縛りにあったようになる。

 マネジメントコントロールの基本は「人々に支持された戦略」によって
 組織コントロールが行われることである。
 代理変数によってコントロールされることが、本日ではない。
 予算は戦略の代理変数だが、その元となる戦略が人々に支持されないまま振り回されれば、
 それは凶器となる。ここで手段の目的化が始まる。
 これはマネジメントの誤解に基づく、大きな間違いである。

非常に納得した。ウン、ウン。

 このあと、伊勢丹の専務から乞われて松坂屋、そして東武百貨店の社長として再建を果たした
山中竅iかん)さんの従業員のハートをつかんだ経営のエピソードが紹介されている。