御手洗冨士夫が語る
「キャノン人づくりの極意」(要約)
・「企業経営は人づくり」であり、その極意は、
利益優先主義
会議結論主義
コミュニケーション徹底主義
目標設定主義
リーダーシップ優先主義
独創力優先主義
辻説法説得主義
の7つである。このうち、従業員の意欲向上という我々のテーマに関するものは、
コミュニケーション徹底主義、リーダーシップ優先主義、辻説法主義である。
・コミュニケーション徹底主義
「沈黙は金ではなく、やる気の無さを自ら認めること」であり、マンツーマンで話す、
自分からアプローチする、自分の言葉で話すことが重要である。語学力ではなく、
相手を理解させ、説得しようという強い気持ちと熱意こそが人を動かす。
御手洗はよく自ら進んで社員食堂におもむき、社員と握手をし、食事を採りながら談笑し、
現場の意見を聞くように努めているという。「現場を知らない人に経営はできない」
という現場第一主義を徹底している。
・リーダーシップ優先主義
トップダウンの経営手法は、単なる上からの無責任で気まぐれな押し付け命令であってはならない。
しかしボトムアップ経営とは、いうなれば「リーダーシップ不在の経営」である。
リーダーシップの不在は、経営環境や市場ニーズなどさまざまな状況変化に対応するまで時間がかかるだけでなく、
危機管理への対応が遅れ、大きな混乱を招く。環境変化に素早く対応し、部下を説得し動かすには、
強いリーダーシップが欠かせない。
ビジネスの原則は自分と相手の「説得と承諾」である。どちらの要素が欠けても組織のトップが
リーダーシップを発揮することはできない。
リーダーシップとは、言い換えれば、「説得と承諾」を経て人を動かす力なのだ。
・辻説法主義
御手洗はトップダウン経営を徹底するために、立ったままで自分の考えを説く辻説法をよく行う。
この超アナログコミュニケーションがキャノン流コミュニュケーションの極意であり、
社員が働きがいを感じながら意欲的に仕事をする社風につながっている。
・社員をやる気にさせるのは「目標設定」と「目標管理」
御手洗は徹底した現場第一主義の経営者だが、生産性を向上させるには、第一にモラールの高揚が大切だという。
その方法論としては、「目標設定」と「目標管理」の2つが必要である。
例えば、部長や課長などの管理職がまず、きちんと自分たちの部門の経営目標を立て経営計画を作ることが重要である。
管理職は、自分たちが作った目標をきちんと部下に説明し、部下にも「目標設定」を行う。
そしてその目標に1年間取り組んだ後に、その成果を正しく評価し、悪い場合はなぜ悪かったのかということを、
管理職から部下に説明する。それを次の目標達成につなげてゆく。これが「目標管理」である。
部下が納得するよう説明するためには、上司は事実にもとづき正しく評価することが大切であり、
それ以前にちゃんとした目標設定ができていなければならない。キャノンでは、この「目標設定」と
「目標管理」を納得したうえで仕事に取り組むことが、社員にやる気を起こさせ、生産性を向上させるための方法論と
とらえている。
・セル方式の生産現場
キャノンはベルトコンベヤー方式ではなく、セル方式の生産ラインを取っていることは有名である。
セル方式は、少人数のひとつのチームに精算を完成させる、多能工技術をベースにした生産システムである。
それぞれの作業員が、与えられた複数の作業工程に習熟することによって、作業時間を大幅に短縮させるだけでなく、
一人ひとりのスキルアップによって、作業人員の削減にも大きな効果が期待できる。
従来のベルトコンベア方式が「機械」の能力に頼っていたのに対して、セル方式は「人間のスキルの習熟度」によって
生産効率を高めることができる。セル方式は、現場作業員たちの連帯感と達成感を与え、単に生産効率向上だけでなく、
創意工夫の姿勢を生み出すことができた。
以 上