「実践・コーポレートブランド経営」
伊藤 邦雄 (編集), 日本経済新聞社広告局 (編集)
アクションラーニングの引用したため、読まないといけないこととなり
家内に図書館で借りてきてもらったところ、
「実践」が頭についているものを借りてきてしまった。
こりゃ違うわ!と言ってもしようがない。
読むか…。
(当然「コーポレートブランド経営」も当たったが、すぐには
手に入らず(こういう経営書は県立図書館マターになってしまうのだ。
「競争の戦略」がそうだった
⇒ とういうことで結局アマゾンで買うことになってしまた。
昨日手に入ったのでまた読めば掲載する)
読んでみると、本当に実践版であり、伊藤先生の記述はほとんどない。
しかし、企業調査で聞かせてもらいたいような事例がたくさん入っており
新しい気づきがあり有益であった。
コーポレートブランド(CB)経営とは、
ザ・ゴール2で読んで腹に入った以下のことと同じことと理解。
>企業はこの3つをすべて同時に実現しなければならない
>◎現在から将来にわたって、お金を儲ける
>◎現在から将来にわたって、従業員に対して安心で満足できる環境を与える
>◎現在から将来にわたって、市場を満足させる
>相反するように見えるかもしれないが連立する解はかならずあるのである。
>それを見つけることができないだけなのである。
すなわちこれらをCBバリューとして数値化しこれを高めようとする試み
(詳細はもう一丁の著書を読んでみることとするので要点だけ示す)
@ 「顧客価値」「従業員価値」「株主価値」の総合価値。 CBアドバンテージ(CBスコア)
企業がステークホルダーに対してどれほど優れた企業像を植えつけているかを表す総合指標
A CB活用力、CB活用機会 (CB倍数)
利益に結びつける能力とその機会
CB活用機会は業界毎で異なるが、同一業界では同じ値となる。
@だけではダメで、Aが低ければ、CBは増大しない。
なるほどねえ。
伊藤氏の強い思い「測定できないものはコントロールできない」。
無形資産が重要になってきている現在、CBの重要性はいやというほどわかるが、
それを数値化できなければダメだ。
その思いが、日経新聞社の協力を得てCBバリューを編み出し、公表されることとなり、
そして多くの企業の経営改革に役立っているようである。
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CB向上成功事例の要因
1.理念・ビションが明確である
2.理念・ビションと組織構造や事業戦略・ビジネスモデルが一貫している
3.各ステークホルダーとのコミュニケーションを極めて重視している
顧客・消費者、従業員、株主・投資家に向けたコミュニケーション活動
PR(Public Relations)
ER(Employee Relations)
IR(Investor Relations)
これらが一体化し、かつ一貫していることがCB価値創造の大前提
CBは、もはや企業イメージの範疇を大きく超えた概念。
それは無形資産をシンボリックに総称したもの。
無形資産が競争優位の源泉になる21世紀において、CB価値創造は競争力に直結する。
これに経営全体で取り組むためには、「価値測定」が不可欠である。
なぜなら「測定できないものはコントロールできない」からである。
(⇒ 納得の主張である)
以下は実践編となる。
印象に残ったものだけを書き留めておこう。
○ 山本 高稔 モルガンスタンレー証券 株式調査部長
CB価値をを高めている理想的な優良企業は、貸借対照表上で無形資産が小さく、
それに載ってこない無形資産を豊富に抱える会社という考え方ができる。
無形資産が小さい会社は一部の装置産業型企業を除いて資産効率を高めやすく、
財務の健全性を維持しやすくなる。
○ 原 良也 大和証券グループ社長
CBの構成要素は3つ。
経営者のビジョン、企業カルチャー、そしてお客様や株主の持つイメージである。
ビジョンについては、わたし自身がCBの「語り部」となり、
いたるところで熱い思いを語り続けてきた。
研修所や支店まわり、メールなどを通じて、
社員のあいだにCBカルチャーを植えつけることに徹底して取り組んでいる。
○ 江藤 邦雄 味の素社長
ブランド価値で評価される会社とそうでない会社における決定的な違いは、
従業員が自分の会社を愛し、誇りを持って働くことが出来るか否かにあるように思う。
○ 立石 義雄 オムロン社長
2002年に入ってからは、特に社内での意識改革の推進に注力している。
管理職やリーダー層を対象に昼食を取りながら話をする「ランチョンミーティング」や、
メールを活用したグループ社員へのメッセージ配信など、
ダイレクトかつ2Wayのコミュニケーション活動が目的である。
メールでは、私の想いを出来る限り具体的に語るとともに、
社員からの意見や提案を返信してもらっている。
○ 熊谷 一雄 日立製作所副社長
グループ会社のひとつでも企業ブランドを失墜させるような事件を起こしたら、
それがグループ全体の存立を危うくする。
一人ひとりの気のゆるみが、すぐさま日立ブランドの低下につながるわけである。
仕事だけでなく、社員の市民生活についても同じことが言える。
わたしは、このような話を現場でも研修においても、社員に繰り返し言ってきている。
2002年6月からは全国の日立の支社や事業所を訪問し、
辻説法のようなかたちでCBの意味や必要性を説いて回った。
9月からは400人に及ぶ事業部門の本部長以上クラスを対象に
伊藤邦雄先生を講師に招いた研修をスタートしている。
平日や土曜日を使って20回近く実施する予定である。
○ 大西 敏彦 大和証券グループ本社 IRコーポレートブランド担当部長
ブランドが必要なことは認識できても、今ビジネス環境が厳しいため、
理想と現実のギャップに社員が苦しむ場合が多々あります。
ただし、そんな環境だからこそ、CBに力を入れる意味があるのだと思います。
環境がよくて業績が向上しているなかでは、社員の意識はブランドには向きまん。( ⇒そのとおり!!)
つまり、CBはある意味での危機感の裏返しとして出てきている。
そのことを、これからも忘れてはいけないでしょう。
○ 星野 俊夫 リクルート ブランドマネジメント室エグゼクティブマネージャー
2000年4月からディビジョンカンパニー制の導入により、
それぞれの事業が「部分最適」をつめていくことで、部分最適どうしのコンフリクトが
起こる危険が生まれた。
コーポレートブランドに特化したマネジメント組織を作ることで、
より大きな視点での全体最適を描くことを狙う。
○ 中村 威 アサヒビール 宣伝部
社内外の企業姿勢を再認識していただくために最も分かりやすい表現は、
当社の社員が出演することだと考えました。
社員を登場させることで、社内の結束を意識した一面もあります。
どんな筋の通った話よりも、同僚が出演する広告物のほうが、よほど社員に対する説得力があるはずです。
○ 滝澤 素子 日本ユニシス コーポレートコミュニケーション部
社長は2001年6月の就任以来、ITとは直接関係のない雑誌など、どのようなメディアからの取材に
対しても積極的に発言を続けてきました。また、イントラネットには「Shimada's Daily」というコーナー
があり、社長がこの1週間にどこへ行き、誰と会い、そのような話をしたか、つぶさに報告されるように
なっています。
当社では2002年4月の組織改編があり、広報部はコーポレートコミュニケーション部に生まれ
変わりました。その際、社長が経営企画部を直轄で管理し、その経営企画部の執行役員が
コーポレートコミュニケーション部の役員を兼務するという体制が取られています。
こうした広報部門と経営企画部門のリンケージを見ても、CBを社内外に知らしめようという
社長の強い意志が感じられます。
○ チャック・ペティス アイ・エム・シー常務取締役
経営陣のあいだに、自社がどのような意味や価値に立脚しているかというコンセンサスがないと、
マネジメントブランドは成立しない。
CBは、まず経営陣によってよく理解され、共有されるべきものである。
経営陣=ブランドと言ってもよい。
すべての経営陣は、本当のCBとは何かについて、今一度考え直さなければならない。
それは企業のビジョンやミッションであり、コアビジネスに誠実に取り組む意思であり、
ステークホルダーから預かった信頼である。
同時にまた、社会資本の構築に対して果たすべき役割と責任でもあろう。
小手先のテクニックや「言葉だけ」のブランディングでは、もはや通用しないことを
知らなくてはならない。
○ 本島 康史 モトシマ・インスティテュート・オブ・マネジメント代表
「顧客・従業員・株主に対して、どういう価値を提供していくのか」という視点が、
ブランドを構築する上でのカギとなる。
社内に対するプログラムのポイントは何か?
社内コミュニケーションでは人をまとめ上げ、鼓舞することが求められる。
この点で人類の英知が結集されているものを、
実は企業経営とはあまり関係のない分野で発見することができる。
それは「宗教」である。
筆者に言わせれば、宗教ほど見事なコミュニケーション・プログラムはない。
下手に他社事例を集めるよりも宗教の手法をひも解くことをお勧めしたい。
(⇒ビショナリーカンパニーでも「カルト」な文化という説明があった。
まさに宗教的なのである)
教祖…シンボルになるヒト ⇒ CEO
奇跡・神話…感情に訴える物語 ⇒ 逸話、伝説
教義・法典…繰り返し読む教科書 ⇒ 冊子、ハンドブック
シンボル・像…ロゴ ⇒ 改革プロジェクトのロゴ
教会・寺院…コミュニケーションの場 ⇒ イベント、ミーティング
牧師・住職…伝道者 ⇒ リーダー
○ 対談 伊藤邦雄 VS 梶 祐輔(日本デザインセンター最高顧問)
[伊藤]
私がいま強く感じていることは、とりわけ従業員のコミュニケーションが大事だということです。
もちろんIRも大事ですが、こういうご時勢もあって、
ちょっと社員が冷めてきているというか、
シラケて閉塞感が出てきている。
トップは社員に向けて「わが社はこういうことを大事にする会社なんだ」ということを
もっともっと熱を込めて粘り強く訴えていかねばならないと思うんです。
[梶]
広告で社外向けに情報を発信すると、
実は社員が非常に興味を持ってよく読むのです。
一方で今の企業広告みたいに当たり前のこと、概念的なことを言っても、
身内は恥ずかしいだけで目もくれない。
企業のトップの熱い思いが外向けの広告の中で語られているとすれば、
それは従業員にもよく読まれるし、感銘を与えられると思います。
逆に言えば、社内を共感・共振させないような企業広告は、
社外に対しても力を発揮するわけがない。
○ 園部 和男、 林 美智代 日経リサーチ
高橋 正剛 日経新聞社
従業員が企業に対して価値を見出せない場合、従業員は不満を感じ、生産性が落ち、
従業員の定着が問題となる。
従業員の満足が低くなり、生産性が低下することは、当然顧客価値に対しても
大きな影響を与えることになる。
日経リサーチの従業員価値測定
A「得られるベネフィット」と B「提供する仕事の質」のバランス
A「得られるベネフィット」
給与やボーナスといった経済的報酬だけではなく、得られる知識や経験、
社会的信用なども対象となる。
B「提供する仕事の質」
提供する仕事の内容や労働時間、周囲とのコミュニケーションなどを含む
仕事を円滑に進めるために必要なことすべてのものを示す。
従業員が仕事を通じて企業に多くのものを提供したにもかかわらず、
期待したアウトプットが得られない場合や、報酬を得るためにあまりにも多くの犠牲や阻害要因
によるストレスを感じる場合は、企業へのロイヤリティは低くなる。
インターネットでのアンケート調査結果ではAとBの比率が6対4となっている。
このページはPDFにとっているので参照されたし。
以 上