「情熱・熱意・執念の経営」
永守 重信 PHP研究所
永森さんは日本電産社長であるが、
同じ京都ということで京セラの稲盛さんと重なって見えてしまう。
とにかく熱意あふれる人で、その哲学には共感を覚える。
したがって、この本も元気にさせられる本である。
私が自分で考えついていた「と金」の話は永森さんの言葉にもあった。
嬉しいやら残念やら。でも永森さんの方がレベルが高かった。
その表現はこなっている。
将棋にたとえると、手持ちの「歩」を敵陣へ入れて「と金」にするという捨て身の戦法に
徹してきたのです。
○ 必要な「踊り場期間」
階段を一気に駆け上がろうとするとき、もし「踊り場」がなければ、
足を踏み外した途端に下まで転落してしまう。
ベンチャー企業には、成長過程で、この踊り場に相当する期間を設定する必要がある。
組織先行拡大路線から、人の成長に合わせた組織作りへ路線変更をした。
○ 社員の家族に感謝
○ 既存の製品やマーケットだけに頼っていると、予想以上に業績が落ち込むこむ状況もある。
○ 経営者としての信念 :「あらゆる努力」と「とことん謙虚」
○ トイレ掃除
1975年頃から新入社員は1年間トイレ掃除を、ブラシやモップなどの用具は一切使わず
すべて素手でやることになっている。
トイレを汚す者はいなくなった。
○ 一人の百歩より百人の一歩
地道な前進をいかに継続させるかである。
○ 決断するまでのスピード
会社の命運を左右しかねない大きな決済は月曜に下す。
日曜に丸一日かけてあらゆる角度から何度も検討することができるから。
(⇒ やはりトップは考え抜くんだなあ)
通常の意思決定は1分以内を原則。
これを可能にする秘訣は、
「基本方針、基本理念を自分で絶えず反芻、確認していること」
○ 企業の活性化
一番近道は会社を成長させること
○ 優良企業の共通点
トップの高い意識があって、それに社員が共鳴すれば、会社全体の意識が向上する
○ 企業にとっていい人材とは
心の中に種火を持っていて、自分で自分のやる気に火をつけられる人が、いい人材だと言えます。
(⇒ うまいこと言うなあ)
○ 仕事ができる人は声が大きい
永森さんの経験則
○ 能力の差と意識の差
人の総合的な能力の差は、天才は例外としてもせいぜい5倍、普通は2,3倍程度
しかし、やる気、意欲、意識の差は百倍の開きがあると感じている。
多少能力は劣っていたとしても、やる気や意識の高い人を採用するほうが、はるかに戦力になる。
わが社(日本電産)が創業32年で売上高4800億円の企業グループに成長した要因は、
社員の意識を変えたことに尽きると思っている。
○ ユニークな採用試験
「大声試験」 上記のとおり
「早飯試験」 これが一番成功
スルメや煮干をはじめ噛まないと飲み込めないようなおかずばかり。
事前に自分や社員で試したら遅い人でも10分だったので
合格を「10分」と設定し無条件に採用。
「試験会場に早く到着した者から順に採用」
社内で一定期間調べてみると、出社時間の早いか遅いかによってその差があることが
はっきりとデータにあらわれていた。
「留年経験者に限る」
留年したことを後悔していないと断言したものの中に優秀な人材がいたため、
これ以降、毎年何名かの留年組を採用している。
○ 天国と地獄を味わった人
中途採用に選考で考慮。
会社が落ち込んだときの厳しさを知っている人は、会社をよくしようという気持ちが人一倍強い。
(⇒ これは雪印乳業の再生から実感した)
○ 混血は美男美女をつくる
(⇒ なるほどねえ、私が多様性にこだわるのはこうゆうことか)
○ 自由参加の社内研修会
永森社長自らが日曜の講師を受け持つ。
土、日の一泊2日研修。(1年間のうち35週程度)
意識向上のための研修が主であり、
テーマを与えて議論するのがメイン。
自由参加で参加費の1割は自己負担だが毎回盛況。
( ⇒ いいですねえ。金、土にしてもらいたい気はするけど…)
○ 成功体験と成功報酬
成功体験は社員の成長に大きな影響を与える。
そして、この成功体験が成功報酬に直結していることも重要なポイント。
○ 社員教育の基本
ウサギとカメ
しかし現実には、人間の大多数が「怠けないカメ」ではなく「怠けるカメ」
教育の基本はいかに「怠けないカメ」にするかということ。
○ 社員に対する最高の福利厚生は、本人の能力アップだ
[去って欲しい社員の条件] [登用される社員の条件]
・知恵の出ない社員 ・健康管理のできる社員
・言われなければ出来ない社員 ・仕事に対する情熱・熱意・執念を持ち続ける社員
・すぐに他人の力にたよる社員 ・いかなるときもコスト意識を持てる社員
・すぐ責任転嫁をする社員 ・仕事に対する強い責任感を持てる社員
・やる気旺盛でない社員 ・言われる前に出来る社員
・すぐ不平不満を言う社員 ・きついツメの出来る社員
・よく休みよく遅れる社員 ・すぐに行動に移せる社員
● 教育しても無駄な人
・叱ると言い訳ばかりする人
・叱られても平気でいられる人
・他人が叱られていても無関心な人
・他人を叱ることができない人
・プライベートの部分で口を閉ざす人
○ 使い上手は使われ上手
人は人のために働いてみてはじめて、部下の立場がわかる上司になれます。
ところが、年齢やキャリアだけで役職を手に入れた人にはこの機微がわからず、
自分の嫌なことを部下に押し付ける傾向が強くなり、部下の心が離れてしまう。
○ 女性社員は会社を映す鏡
本社の近くの風紀が悪くなった(クラブ、スナック、金融)ので事務所を移転。
大切な女性社員が、周囲の環境に知らず知らずのうちに染まってしまったら大変だとの
思いで実施。
(⇒ これには驚いたが、風紀、マナーがいいというのは非常に重要と納得)
○ 裏方の社員は褒めて動かす
バネと同じで、押しても戻る力を持っている営業や技術の社員は叱ることが有効だが、
管理スタッフには逆効果。
(しかしわが社は管理部門が強すぎるんだけどなあ…)
○ リーダーの役割
トップが出した方針の本質を曲げない範囲で自分の言葉に置き換えたり、
自分流の解釈を加えて部下に伝える。
あるいは、部下の一人ひとりが何をすべきかを明確にして指示を出す。
○ 経営者への扉
管理者からの脱却をはかるには、まずは考える訓練をすること。
○ 倒産する会社の共通点
・工場の清掃が行き届いていない
・出勤率が悪い
・社員同士で会っても挨拶をしない
○ アメリカでは通用しない精神論
現地でアメリカ人労働者を採用した場合に注意しなければならないのが、
辛抱とか我慢、気力といった精神論が全く通用しないこと。
以 上