町工場こそ日本の宝
 
橋本久義×岡野雅行  PHP研究所
 
元通産官僚の橋本さんと、かの有名な岡野社長の対談集。
補足・解説を橋本さんが入れてわかりやすくまとめてくれており読みやすい。
 
岡野さんが奇しくも言ったことば
「頭のいい人」と「利口な人」
橋本さんは典型的な頭のいい役人、残念ながら至宝の言葉はなかった。
官僚の限界というかスケールが小さい、頭はよくていい人といった印象。
人間的んはやはり岡野さんがスケールがでっかく面白い。
橋本さんのいいところは、自分の限界を知っていて岡野さんという人を
うまく浮き出すことに徹しているところがいい。
それでも通産省はよくやったというくだりについては、やっぱり役人だなあと感じた。
 
以下には岡野さんの言葉で印象に残ったことばを列挙する。
 
それにしても2代目社長として、親のビジネスモデルを変えてしまい、
あげくには引退させ、しかしプレス技術ではまだオヤジの域に達してないという自覚、
若いときにはキャバレーで遊びまくったから今があるとか
いいですねえ、こういうおっさん。
友達になりたいわ。
 
岡野さんは最近日経ビジネスに書いてくれているので、その技術にかける自信と
「人」との信頼を重視する姿勢に共感を覚えるのでこの本をみつけて読んだのだった。
本人が書いたわけでなく、インタビューというのが意外だったが、内容には満足した。
 

−------------------------------------------------------------------------
 
岡野 彼らに「何で?誰のために会社を大きくするの?」って聞きたいんです。
   その人の哲学をね。
 
橋本  やはり、会社を大きくして、たくさんの人を支配したい、という願望はあるのかも知れないですね。
 

⇒ これはひどいと思った。人を支配したい願望で会社を大きくしたいと思っている社長なんていないでしょう。
  哲学を聞いているのに、欲望で答えている橋本さんにはがっくりです。
  自分の会社が社会のためになるという信念があり
  また世の中の役に立つ人をたくさん育てたいという気持ちがある社長は
  会社の成長を願ってもいいと思えるのですがどうでしょう。
 
○ 教えることが勉強になる
 
岡野 ものを書いたり作ったりしたことのある人は絶対すぐわかると思うが、
   他人に教えるというのは問題点を整理する絶好のチャンスである。
   「自分がわかっていないのが何なのか」がよくわかるのである。
   それがわかればある程度先が見える。
   そういう意味では、「人に教える」というのは一番いいチャンスなのだ。
 
⇒ おっしゃるとおり、全く同感である。
 
○ 下駄の雪????

橋本 日本のものづくりを支えるのは求道的なものづくり精神だ。
   日本は表現が難しいが、「下駄の雪」型ものづくりであった。
   「下駄の雪」型とは、「蹴られても踏まれてもついていきます下駄の雪」ということである。
 
⇒ ふーん。なるほどねえ。表現が面白いと思って取り上げた。
  現在の日本の価値感では果たしてどうか…。
 

○ 中国とは違う日本のよさ   
 
橋本  中国は厳罰主義 悪いものをとりかえるという発想。常に20%が切り捨てられている。
    恐怖による支配。これでは限界がある。
    稲盛和夫さんの言葉
    「経営者と従業員の間には本質的な違いはない。だから私は従業員を雇うという気持ちは
    いささかもない。会社というのは惚れあった仲間がそれぞれの夢を実現するための場なんだ」
 
⇒ 上記で橋本さんのたくさんの人を支配したいという願望を酷評していたが、この稲盛さんの話を
  聞いていただければ私の怒りもわかるだろう。
 
 
 
○ 岡野さんが本を読む?ことに違和感??
 
橋本 でもね、岡野さん。普通は勉強の嫌いな人って、本を読まないですけどね(笑)
 
岡野 ところがねえ、やっぱり人間ってのは、いい仕事をしてやらなけりゃあ、という「欲と水攻め」に
   遇うとねm違っちゃうんです。これがまた。(笑)
 

⇒ カネボウの工場長から本を読むことを勧められた岡野さん。
  ドイツ語で書かれた自動機械の本を買って読む。
  ドイツ語がわからなくとも、図面をみればわかるという工場長の指導あり。
  今でも大事にしているとのこと。
  岡野さんはこの工場長を3人の恩人のうちの一人に挙げておられる。
 
岡野 その工場長さんに聞いたんですよ。
   「じゃあねえ、利口ってどんな部類なんだい」って。
   するとね、利口というのは、昔の漁師さんが一番の典型だっていうんですよ。
 
   まだ天気予報がないころ、、漁師たちは「今日はこの風が吹いているから、行かねえほうがいい」とか
   「今日はこの風吹いていてても、雲がこっちに流れているから、あと何時間後には大丈夫だ」と言っていた。
   彼らにはそういう感性がある。感性と勘が強くて、先が読めるのが利口な人間だということなんですね。
   
   でもね、工場長さんはこうも言った。
   「いまの人間はね、みんな天気予報とかいろんなものを当てにしているから、自分の個性を失っている。
   人に与えられたもので動いている。これじゃあ、もうだめなんだよ」ってね。
 
 
○ 会社のお荷物の人物をトップセールスマンに仕立て上げて
 
岡野 やはりダメだ、ダメだといわれている人間もね、ある人とピタッとマッチングしたときにはすごいパワーを
   出すものなのです。
   だから、最低な人間とかダメな人間なんていないんですよ。
   そういう人は個性が強くて、たまたま周囲にいた人とか環境に合わないだけですよね。
   だから僕は、ダメな人間はいないと思う、世の中に。
 
⇒ 全くの同感。「歩でもト金にできる」これが私の思いである。 
 
 
○ 日本人のものづくりのこころ

橋本 だから日本は中国に負けない
  いいものをつくる能力は、中国の人にも間違いなくあると思う。
  だが、それが仕事の質が金額に応じて変るというお金の関数になりがちだ。
  日本人は儲からなくても、自らを鍛えるために能力を発揮していこうとするところがある。
  どうせ作るならいいものをつくろうとする。
  だから、日本人の意欲というものは、あるところから「収入の関数」ではなくなる。
  いいものを作りたいという意欲は、収入が増えるか増えないかに関係なく、
  いいものをつくりたいというかたちになるのだ。
 
  岡野さんのような能力を発言させるために一番大切なのは、
  「いいものを作りたい、周りの人たちに喜んでもらいたい、
  お前よくやったねと言ってもらいたい。」
  という、そういう気持ちや情熱なんだと思う。
  岡野さんも、いちばん嬉しいのはお得意さんから、
  「いや、岡野さんじゃなきゃこういうのできないよねえ」って言ってもらうことだと
  よくおっしゃる。
 
⇒ いいですねえ。こういう日本人の心を大切にした会社経営が日本的経営と言えるだろう。