トヨタの思考習慣 

 日比野 省三 (中京大教授)  講談社+α新書
 
トヨタ内部の人が書いたものではなく外部の観点からの考察が書かれている。
やはり内部の方の方が私には響く。外部の方はやはり実践的ではない感を受ける。
それほどインパクトのあるものではなかったが、2,3箇所のみいいところはあったので
書き残すこととする。
 
トヨタのブレイクスルー思考
 ・究極思考 帰納的思考でなく演繹的思考
  目指すゴールを絶対ベンチマーク
  すなわち「原価ゼロ」、「欠陥ゼロ」、「スペースゼロ」、「事故ゼロ」、
  「顧客満足100%」、「稼働率100%」
  ゼロや100%なので絶対ベンチマークと名づけられている。
  この弁とマークは他社の情報収集などを必要とせず、創造性を刺激し現状突破の可能性を引き出し、
  結果としてトップになれるのである。
 
 ⇒ そうは言っても、これに立ち向かおうとする社員の意欲がなければ理論倒れである。
   トヨタにはそれを可能とするDNAがあるのである。
 
トヨタのマネージャ要件(人事評価基準)
 @ 課題創造力
   物事の本質を見通して、組織として飛びぬけた企画を打ち出す力。
   紛れもなく、本質・根本をつかむ能力。
   「ブレイクスルー思考」が求められる。
 
 A 課題遂行力
   組織を動かし、人々をファシリテートして、成果を結実させる力。
   根本を探求し、あるべき姿を示し、人々を活気づけ、適切な判断で決断し、粘り強く「やり抜く」能力
   ファシリテートとは、英語で「Make it easier」: 困難をやさしくすること
   「ブレイクスルー能力」が求められる。
 
 B 組織マネジメント力
   課題達成のため、効果的に組織を運営する力。
   資源を重点的に投入し、仕事の枠組みを作るなど、しくみ作りの能力
 
 C 人材活用力
   組織メンバーの能力を引き上げるために、定期的、計画的な指導と育成を継続し、
   最大限に部下の力を発揮させる能力。
   トヨタの「思考習慣」の代表的な項目
   トヨタは車を作る会社ではなく人を作る会社であるという「思考習慣」を代表している評価基準
 
 D 人望
   最後は、周囲の人々に信頼され、活力を与える能力が求められる。
 

 ⇒ 現在、改訂を検討中のリーダー信条の参考にしよう。
 

トヨタのTQCは自発的、楽しみながらやっている
 
 TQCは、T(とっても)Q(くるしい)C(サークル)活動になりがち
 トヨタ関係者の金田秀治さんは次のように述べている(「超トヨタ式チェンジリーダー」)
 
QCサークルの活動が、帰納的(デカルト思考)の活動であるのに対して、
トヨタの自主研は、演繹法(ブレイクスルー思考)を身につける機会である。
QCサークルは、品質管理手法を皆で勉強し、現場の問題解決に活用する。
それに対して、自主研は「もしこのようになれば圧倒的に勝てるぞ」という
「ありがたい姿」を理屈でなく信念として、一人ひとりが頭に叩き込む。
その教育がなされた上で、「ありたい姿(あるべき姿)」と目に前の
「現場・現物」をぶつけることで、従来はなんら問題とは思いもしなかった
作業が、実は問題であったことに気づく
 
 ⇒ いいですねえ。こういう感覚は私も持っている。
   今、どこでもPDCAを言いすぎていないか?
   そういう問題意識、危機感を抱いている。
   デカルト的にやることは間違いではないが、みんなできること。
   ブレイクスルー思考の癖をつけなければいけないと強く思う。
 

なぜを5回つきつめて考える
 
 なぜを5回というのは有名であるが、この本では例示があったのでよくわかった。
物事の本質に捉える手法であるとわかった。
ただ、しっかり問い詰めることが出来ないと堂々巡りとなる。
 

例示1
 部下のAさんが、無断欠勤した。
 
「なぜ無断欠勤したか?」
 
昨日彼に雷を落としたから
 
「なぜ雷を落としたか?」
 
彼の勤務態度が悪かったから
 
「なぜ勤務態度が悪かったか?」
 
前日深夜まで深酒をして気分が荒れていたから
 
「なぜ気分が荒れていたのか?」
 
人生に夢が持てなくなっていたから
 
「なぜ夢を持てなくなったのか?」
 
会社の風土が硬直化して未来を描ける状態でなくなっているから
 

結局無断欠勤することが本質的な問題ではなく、あなたの会社が硬直化していることが
根本的な問題であることがこの5つの質問で見えてくるのです。
 

 ⇒ これはヒューマンファクターではルートコーズアナリシスと呼ばれるものと同じ。
  私も20年前に会得している。
  しかしこれを常に実践しているかと言われるとお寒い限りである。
  各リーダーがこういう本質見抜く力を発揮させねば会社はよくならない。
  そう思う。
 

創業者の豊田喜一郎さん
 
先進企業フォードは、「大量生産方式」を目指して、ベルトコンベヤーを用いて、
作れるときに大量に作り、プロセスごとに多量の在庫と倉庫を持つことが「最善である」と
考えていた。
喜一郎さんは、欧米先進自動車産業に対抗するためには、どうしたらよいか考え続けました。
その結果出てきた「しくみ」は、「ジャストインタイム」すなわち、欧米先進国とは
全く反対の、「必要なときに、必要なだけ作る」という「コンセプト」だった。
本書の読者は、この喜一郎さんの「思考習慣」に、ぜひ注目していただきたい。
「できないと思われるから、やってみる」
「先進企業をバイパスするためには、まねせず、コンポンを考え、新しいコンセプトで
立ち向かう」という「思考習慣」です。