窓際OL 会社はいつもてんやわんや」

斎藤 由香  
(斎藤茂吉の孫、北杜夫の娘でサントリーのOL)


「マカ」を世間に広めた立役者として有名な由香さん。
「マカ」にまつわる楽しい話がたくさんでて来て、下ネタも多く、
思わず大笑いする箇所もあるが、そこはカットして自分が重要だと思ったところを
書き残すこととする。


いやー、サントリーって会社はすごいですね。
赤裸々に書かれているのにまったくOK。
取材ネタにいろいろ誘ったりする協力体制。
これも非上場会社だからできることかも知れない。


「ミスター正論」という異名をもつ薪役員(K専務)
「社員は薪のように燃えて下さい」が口癖

コーポレートコミュニケーション本部のT部長
真夜中に残業しながら大騒ぎして土足でみんなの机の上をどしどし歩いたり、
社内で自転車に乗った等々の仰天騒動

胃袋部長はパソコン音痴
全く食べてばかりでメールも見なくてあれで部長なんだから
「必要な時は電話がかかってくるだろう。で悠々としている

社長もおおらか
カンパニー制は成功しそうですか?に対して
「まだ始まったばかりで全くわからん。
まあ、失敗したら、すぐに変えればいいんや。ワッハッハッハッハ」
よくこの社長のワッハッハッハッハは登場する。



社長がお台場新ビルの役員室を社員に見せてあげているのは素晴らしい。
年末年始での引っ越しは本当に大変だったと思う。
12月28日に荷物出し、1月5日に仕事始め。

若手社員は携帯で社長の机をパシャパシャと撮影するので秘書たちは目がテン。
会議室でもワイワイ騒ぐ。
副社長の椅子に座ってピョンピョン跳ねる部長もいた。
私はお客さま用に応接間に入り、どっしりしたソファに座ってお姫様気分だ。

最後にはせっかくだからとお客さま用トイレも使ってみた。
誰にも遠慮がないというか、傍若無人な社員たち。

会社って本当に自由で楽しい。
人事考課のどんよりした気分(彼女はいつも評価が悪い)が元気になった。

おおらかさがいい。
しかし、それだけではなく、ちゃんとしっかりした厳しさもあった。
この後で、彼女の本の中に社長の語る経営理念が登場している。

社長が営業拠点に送信された書類をプリントアウトさせたらダンボールに3箱もあっ
た。
営業マンからパソコンを取り上げたら売上げが5%上がる。
パソコンは使いこなすものなのに使われている。
机の上でパソコンだけたたいているだけではヒット商品は生まれない。
そういえば、今、ウチの会社はパソコン病。
資料作りに膨大な時間が割かれている。


社長曰く
もっと街へ出て映画を見たり、美術館へ行ったり、旅に出て自分の感性を磨いて、
お客さまが喜ぶものを感じ取ってそれを大事にしなければならない。

→これは松浦さんのよく言われていることと一致しています。

総合会議の議事録から社長の言葉
「千人に聞いた、1万人に聞いたらこうだったという説明をよく耳にします。
しかし私は何人のお客さまに聞いても、何もわからないと思っています。
お客さまが喜ぶものを開発者が感じ取って、考え抜いて、具現化して、提案するしか
ないのです。
それに対してお客さまが新たな価値を見出し喜ばれる、
それこそが真のお客さま志向なのです。
そのためには、もっと街へ出る、本も読む、映画を観る、流行の場所にも行く、
またダイビングをするのもいい、登山をするのもいい。
もちろん、ホールで音楽を楽しんだり、美術館で美に触れたり、旅をするのだってい
い。
とにかく外へ出て、自らの感性を磨いている中から、パッと閃くものがあり、
それを大事にしなければならないのです。
理屈ではないのです。
パソコンで夜遅くまで資料を作成しても何も生まれません。
昨年、私は東京都内300店のコンビニエンストアにおける我が社のビール・発泡酒

配荷状況を調べました。主要品が入っているのは50%くらいです。
そして置いていただきたいところに製品が並んでいたのは、その半分以下です。
つまり5分の1以下しか、しかるべき場所にウチの製品が並んでいるコンビニエンス
トアが
ないのです。「ビールは4位だから配荷が低いんですよ」などと、のんびり評論家の
ようなことを
言っている営業マンがいる。4位だから配荷を上げなければならないのです。
問題はそういうことに対して、営業の皆さんが何ら議論もしていないことです。
4位だから、その程度の配荷でしょうがない、本部商談だけでもいいじゃないかと。
そういう発想では、いつまでたっても4位メーカーからは抜け出せない。
他の会社と同じことをやっている間は勝てるわけがないという基本的なことすら議論
されていない」
ウワーッ、怒っている!!S社長は怒ると怖いのだ。


→ これって鈴木さんや谷さんが説かれるマーケティングの重要なポイントではない
のでしょうか?

「またグッドカンパニーの「グッド」とは、ただ会社が大きくなればいい、
利益を出せばいいということではありません。グッドな会社でなければならない。」

→ エプソンさんでも「よい会社」で議論されましたね
四電にはよい会社になろうという意識が低いです。
自分たちはすでに「よい会社だ」と思いこんでいるのでしょう。
自分にとってよい会社であって、顧客視点がなくなる瞬間です。

「そのためには、まずお客さまに最高品質のグッドな製品とサービスをお届けすると
いうことです。
特に我々はお客様の口に入るものを販売しているのですから、お客様に口に入る時の
品質が重要です。
いくら工場を出る時点で最高品質と言っても、それだけでは足りません。
お客様がその製品を召し上がる時の品質が最高でなければグッドカンパニーとは言え
ないのです。
創業以来、利益三分主義ということで社会貢献活動をしてまいりました。
学校経営や老人ホーム、保育園の経営もしています。
また、サントリーホール、あるいは美術館、そうした文化活動も積極的に行っていま
す。
しかし、そういうことをしても、一人一人がグッドな人間でなければ色褪せてしまい
ます。
それがCSR、企業の社会的責任です。

⇒がーん、そう!この「一人一人がグッドでなければ色褪せる」
 分かっているが、言ったことはなかった。

コンプライアンス、コンプライアンスと言って、ただ法律を振り回すのがコンプライ
アンスではないのです。
一人一人のきちんとした行動の結果が本当のコンプライアンスであることを、
みなさんもよく覚えておいてもらいたいものです。

⇒ そうだ、そうだ、その通り。
  こういうことを自分の言葉で語っているのが素晴らしい。


同じことがHPにも書かれていました。
利益三分主義とは利益の3分の1を社会に還元するとの考えでした。
http://www.suntory.co.jp/company/info/president/index.html

経営情報が全くないので(非上場だから当然か)、
決算情報がわかりません。

私が入社した頃は作家の開高健さんや山口瞳さんがよく会社に遊びにいらした。
その昔、宣伝部で芥川賞と直木賞を受賞した二人が机を並べていたという。
今でもそのDNAが残っていて、文化に対する思いはみんな熱い。
サントリーホール、ミュージアム、美術館、音楽財団、文化財団を持ち、
「最高の感動をお客さまにお伝えしたい」と本気で取り組んでいる。

大阪が本社なのでオモロイことには命をかける。
新入社員の入社試験でも、社長は「奇人変人は大歓迎」と言っている。

昨今、就職もせず、働きたくないニートが増えているそうだが、
一年でも二年でもいいから、会社生活を味わって欲しい。
どんな会社にもダメ部長がいて、それを支えている優秀な女子社員がいる。
営業マン達はどんなに必死で頑張っても売上げが上がらない。
成果主義はさらに厳しい。
しかし、それでも目標に向けてみんなで頑張る様子をみると、
「私も頑張らないと!」とパワーをもらえる。
大げさでなく、生きる力を与えられるのだ。
一人の力では無理なことでも、みんなで一緒に解決して大きな成果を達成できるのが
会社生活の魅力だと思う。


⇒ 最後の言葉がじーんときました、