「トヨタ式仕事の教科書」
プレジデント編集部編 プレジデント社
プレジデントに掲載された記事を集めたものだろう。
奥田さん、張さん、渡辺さんという最近のトヨタ家以外の社長のエピソードを知った。
奥田さん 仕事のやり方をめぐって上司と衝突し、フィリピンマニラに7年間飛ばされていたのを
豊田章一郎氏が娘婿であった藤本氏(大蔵省:アジア開発銀行出向でマニラ在住)をマニラに訪ねた時
に出会って見抜き、引き上げた。
へー、そんなことがあったんですか。
張さん 歯に衣を着せぬ物言いと大胆な行動の奥田さんとは対照的なのが張さん。
深草将軍型と自称している:小野小町のもとに通いつめ、とにかく通って相手を根負けさせる)
用地買収でのエピソードである。
その後、運命付ける生産管理部へ配属。
鬼軍曹 大野耐一氏の陶酔を受け15年間仕えた。
大野常務、鈴木喜久男の爆弾を落とされた現場を元気づけ続けたのがいつもにこにこの張さんだっと言う。
なるほどねえ。
私の頭の中には、大野さんや鈴村さんの「今おまえがやっていることの目的は何だ」という言葉が染み付いています。
と語られています。
渡辺さん 入社後、配属になったのが給食係でショックを受けた。
しかし、社員食堂を見てムダがたくさんあるのが見え、改善に取り組んだ。
ムダ、ムラ、ムリをムで因数分解してム(ダラリ)、ダラリが多いことに気がついた。
新入社員の目というのは、問題の本質を見抜く。
私自身が本店配属になった初日になんとダラリとした職場だと感じたのに似ている。
それで新入社員の声を聞くことを重要視しているが、その思いがこの渡辺さんのエピソードで
確信に変った。
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以下は残ったフレーズを書き抜きます
奥田さん
○ 21世紀を心の世紀に
20世紀はひたすら金と物質を追いかけてきた。
21世紀は経済的な成長も多少は必要ですが、心という精神の豊かさを求める必要があると思う。
21世紀を「心の世紀」にしなければならない。
これもビジョンには入るでしょうね。
張さん
○ 自信と誇りは大切だが
トヨタがここまで成長することができたのは、お客様を始め、販売店、サプライヤーなど、
トヨタを支えていただいている方々のお陰ですから。
また、残念なことですが、「トヨタの社員は傲慢だ」とか「偉そうだ」ということを
耳にすることがあります。
トヨタの社員には常に「自信と誇り」を持って欲しいと思いますが、
それ以上に「謙虚さ」を身につけて欲しいと思います。
○ 共通の価値感
「我々は何のために、この仕事をやっているのか?」という考え方から、共通の価値感が
生まれてくると思います。
創業者の豊田佐吉翁の「産業報国」にあるように、社会のために貢献することがトヨタの
企業使命なのです。単に儲ければいいというわけではありません。
産業を興し、事業を活発にすることによって、取引先やみんなが栄えていこうという考え方が、
トヨタの人材育成のベースにあるのです。
ものすごく金儲けがうまくなるようにと人材を育てることは、大きな間違いのもとです(笑)。
トヨタウェイの中には、「現地現物」「改善」「チームワーク」というキーワードが入っていますが、
これをベースに、設計、生産技術、調達といったそれぞれの分野でがんばって欲しいと思います。
○ 今後のリーダー像
今までにない知識やフレキシビリティーが、これからのトヨタのリーダーに求められてきます。
しかし、本当に大事なことは、人の心をつかんで、きちんと経営目標をつくって企業をその方向へ
引っ張っていくことです。その辺は、10年後も今も変らないと思いますね。
渡辺さん
○ 桃太郎
工場長時代、現場の人たちに向けた講演で「桃太郎」の話をしたことがあります。
桃太郎は鬼退治して世のため人のために、という夢や志を持っている。
まず何より「日本一」という旗を掲げている。
忠実な従者の犬、知恵者の猿、空を飛んで情報を見つけて甲高い声で教えてくれる情報屋のキジという
よきブレーンを持っている。キビ団子は論功行賞であり、桃太郎はまさに現代にも通じる理想のリーダー像です。
桃太郎のようになれるかどうかはわかりませんが、リーダーとして夢や目標という旗を揚げさせるは
とても大切なことです。
社長就任の折、さまざまなメディアに社長としての夢を述べさせていただいたことがあります。
「走れば走るほど空気がキレイになるクルマ」や
「ドライバーも歩行者も傷つけない、絶対に事故を起こさないクルマ」や
「乗ると健康になるクルマ」
「一度満タンにしたらアメリカ大陸を横断可能な燃費効率の良いクルマ」
を作りたい、などなど。
⇒私はこのような夢に共感を覚えますが、カーキチからは運転して幸福感を味わえるクルマというのが
必要なんでしょうね。
トヨタ嫌いは運転手を抜きにした、このような目指している方向性への反感があるのかも知れないと
思いました。
柴田 昌治氏
○ 健全な危機意識
絶好調のなか、多忙を極めながら、現状が抱える「課題に気がついても対応できていない」という
問題意識をしっかり認識して、それに対処しようとしている。
トヨタでは問題を見つけるDNAが生きているのだ。
こうした人材が経営トップだけではなく、課長クラスまで存在していることが、まさにトヨタらしさで
あると私は思う。
聞きに瀕した会社だけではない。
多くの企業の社員たちは、日々の業務に忙殺され、目の前にある課題を追うことだけを意識して
仕事をこなす習慣を身につけてしまっている。
日々の業務が円滑に進んでいれば「とりあえずはうまくいっている」「問題はない」と考え、
思考をストップさせてしまう。
これでは組織を変革していくことはできない。それどころか平穏な日常の背後に隠れ、見過ごして
いた問題が、いつしか企業にとっての致命傷になることだってあり得る。
そしていざ問題が表面化」してくると、それを隠そうとしたり、犯人探しを始めたり、監視を強化しようとする。
これでは問題はますます見えにくく、解決しにくいものになってしまう。
官僚主義的な企業では、ミスは「あってはならないもの」とされ、ミスした個人の責任が追求される。
上層部は現場への管理を強化し、しめつけることでミスをなくそうとする。
そのために社員は「ミスを隠そう」という意識が生まれる。JR西日本の尼崎線(福知山線?ではないか)
脱線事故で起きたことはまさにこれで、こうした上からの管理では場当たり的な対応は出来ても、本質的な
改善を行うには難しい。
トヨタの場合はアプローチが逆だ。トヨタは「人はミスをするもの」という現実主義的な発想をする。
ミスや失敗を一個人の問題と考えず、根本原因を探ることで、組織を改革していくのだ。
…
…
生産に何か不具合が生じるとラインをストップさせる。作業をしていないときには、忙しいふりをせずに
手をとめる。そうすることで、仕事のムダや問題点が目に見えてくるものなのだ。
人間というのは元来横着なもので、実際に困らない限り知恵を出さない。
だが、本当に困れば知恵をいうものは出る。
だったら問題を「見える」ようにして作業者に知恵を出させればいい。
こうした合理主義を貫いてきたトヨタには、社員のほとんどがそれこそ血眼になって問題を探す風土が
培われている。