「アマゾンが描く2022年の世界」
すべての業界を震撼させる「ベゾスの大戦略」
田中 道昭/著 PHPビジネス新書
【内容紹介】
小売り・流通に変革をもたらしてきたアマゾン。
リアル店舗への進出にとどまらず、クラウド、宇宙事業、AI、ビッグデータなどの分野へも展開するほど、
勢いを増すアマゾンの戦略を、膨大な資料と独自のメソッドで読み解く。
【著者紹介】
立教大学ビジネススクール(大学院ビジネスデザイン研究科)教授。
シカゴ大学経営大学院MBA。
株式会社マージングポイント代表取締役社長。著書に「ミッションの経営学」など。
前半はすっとばして後半だけ読んだ。
アマゾンのリーダーシップ14カ条
◎セルフリーダーシップを重視
チームを抱える一部の管理者のみがリーダーシップを発揮するのではなく、現場の社員一人ひとりが、
リーダーシップの14カ条に則って行動し、自分自身を駆り立てるリーダーになるべきだという考え方。
→ この言葉を知ったことが嬉しかった。リーダーシップで一番大事にしていることなので。
(1) Customer Obsession
カスタマーを起点に考え、行動すること。
カスタマーから信頼を獲得し、維持していくために全力を尽くすこと。
アマゾンのミッション&ビジョンである「顧客第一主義」とほぼイコールであり、それゆえ最も重要な項目です。
(2) Ownership
自分のチームだけではなく、会社全体のために行動すること。
もともとの文章には「リーダーはそれは私の仕事でありません」とは決して口にしませんとある。
センス・オブ・オーナーシップと言えば、日本語の「責任感」のニュアンスがあります。
この仕事は自分のものであるという当事者意識を持て、というプリンシプルです。
(3)Invent and Simplify
イノベーション(革新)とインベンション(創造)を求め、常にシンプルな方法を模索すること。
変化に注意を払い、あらゆるところから新しいアイディアを探し出すこと。
会社のコアバリューである「イノベーション」を現場のメンバーにも値付けさそうとする意図が
感じられる項目です。
(このあといきなり(10)に飛ぶ。筆者のコメントがついたのは4つだけで、あとは表にまとめて掲載されていた。)
(10)Frugality
アマゾンの説明によれば「私たちはより少ないリソースでより多くのことを実現します。
倹約の精神は創意工夫、自立心、発明を育む源になります。
スタッフの人数、予算、固定費は多ければよいというものではありません。」とあります。
これは社外から「倹約体質」として賛否両論が寄せられている項目のひとつです。
フェイスブックやグーグル、アップル、アマゾンといったIT業界「4強」のなかでも、
社員の待遇が厳しすぎる、というのです。
その一方で、限られた環境の中でこそ工夫やイノベーションが生まれるという側面があるのも
事実でしょう。
ベゾスらしい価値観が表れている項目のひとつだと思います。
14カ条はこちら
→ 最初はいいかなと思ってみたが、14項目は多すぎるし、言葉も難しすぎるなと感じた。
最後の筆者の触れた「ベゾスの価値観」これがどうも自分には完全に歩みよれないように感じている。
それはアマゾンが嫌われる理由のところで、そういうことかと納得した。
◎大企業病からアマゾンを守る4つの法則
・本物の顧客志向
・「手続き化」への挑戦
・最新トレンドへの迅速な対応
・高速の意思決定システム
意思決定方法を2つに分類する
70%の情報から意思決定する
反対してからコミットする
自分自身は賛成しないけれど、みんながそう決めていくのであれば、決めた以上は自分はしっかりコミットする
部署間の利害対立を理解する
グーグルとの相違点
◎グーグルの人事制度 「OKR」 「1on1」
→この言葉は知らなかった
OKR Objective and Key Result(目標と主な結果)
全社、セクション、個人で高い一貫性を持って高速でPDCAを回していく仕組み
1 on 1
1対1のミーティングのことですが、グーグルや同社を参考としているIT企業では、
上司が部下を成長させるコミュニケーションの手法として活用されています。
その本質は対話することであり、上司が管理者である自分のためにするものではなく、
あくまで部下を育成するのが目的であることが最大の特徴です。
→「ワーク・ルールズ! 君の生き方とリーダー」(東洋経済)が参考文献らしいので読んでみよう
「イエスの文化を醸成する」ためのものであり、アマゾンの「Disagree and Commit」とは違うもの
◎ピザの2枚ルール
→ この言葉も知らなかった
このルールはアマゾンもグーグルも同じ
「イノベーションのDNA」(クリステンセン教授)でアマゾンの事例を紹介
・誰でも創造性を発揮できるという信念のもとに、チームを小さく保ち、社員に仕事を任されたという意識と責任感を持たせていた」
・チームは、ピザ2枚でちょうどお腹がふくれるくらいの少人数−6人から10人−でなければならない
◎トップの意思決定も同様
グーグルのシュミットCEOは、「ハウ・グーグル・ワークス」のなかで
・一般的にCEOは、なるべく意思決定の数を減らすべきだ
・企業の幹部が身に着けるべき重要なスキルは、自ら意思決定すべき問題と、
部下に任せるべき問題を見分ける能力だ
と述べています。
グーグルとアップルのトップマネジメントが意思決定のルールとして共通に指摘していることは、
私たちも大いに参考にすべきと考えます。
●あえて利益を出さない、低利益率のマネジメント
ベゾスはしばしば「アマゾンは競争主義でも商品主義でもない、顧客第一主義だ」と強調していますが、
低利益率の戦略からは「競合を排除していく」という本音が透けて見えるようです。
ともあれ、ベゾスは「利益率を低くする」という英断により、可能な限りの資金を投資に回し、
超高速で事業を拡張、他者の追随を許さない唯一無二のポジションを確立させてきたのです。
◎クリステンセンの「ジョブ理論」実践者アマゾン
ジョブ理論では
・人は自分自身が抱えている問題(=ジョブ)を解決すつために商品を購入する
ということが要諦
アマゾンは創業当初から、顧客のジョブを解決するための3つのポイント
*豊富な品ぞろえ
*低価格
*迅速な配送
に常に意識を集中し、それらを実現できるようにプロセスを整備してきた。
プロセスには、この3つのポイントをどこまで達成できるかを分単位で測定し監視する機能も組み込まれている。
最終目標は顧客のジョブを片付けることであり、すべてはここから逆算して設計されている。
◎アマゾンを凌ぐアリババ
現在の時価総額が53兆円とは驚いた。知らなかった。アリペイのアリババ。
ジャック・マーは中国にとっての神様
経営者の社会貢献的な意識や、CSR的な経営はアマゾンには決定的に欠けているもの。
これを持っていると絶賛。
→ 別の本で読んでみよう。
日本におけるアマゾン対ヤマト運輸の戦いに見るように、
アマゾンは強力会社をどこか「業者扱い」するようなところがありますが、
その点、アリババはビジネスパートナーとして尊重する態度を示しています。
「世界中どこでも72時間以内に配達できる」デリバリーを実現できるポテンシャルを持っているのは、
グローバルのビジネスパートナーたちと上手に協業できるアリババではないかと私(筆者)は考えています。
●なぜアマゾンは批判されるのか
Fortune世界の企業ランキングは2位
金融専門誌「バロンズ」2017ランキング2位
ボストンコンサルティング「イノベーションに優れた企業」5位
ブランドイメージも、顧客からの評価もトップクラス、名実ともに「世界最強」のアマゾンと思いきや一転、
大手リサーチ会社Reputation Institute CSRランキング 2016年62位
国際コンサルティング会社ユニバーサム「最も魅力的な雇用主ランキング」2017年26位」
ここから明らかになるのは、企業としてのアマゾンの総合評価に比して、CSRでの評価、CEOとしての
ベゾスの評価は振るわないという事実です。
ハーバードビジネスレビューの2016年CEOランキングにおいても、
財務的なランキングは1位である一方で、ESG(環境・社会・ガバナンス)ではなんと828位、
総合ランキングにおいて87位。
グーグル、フェイスブック、アップルなど他の4大IT企業のCEOと比べても異例の低評価です。
批判その1 国家以上の影響力
国家ではないのにかかわらず、国家よりも強大な影響を持ってしまった。
なんとなく、アマゾンの影響の大きさに漠然とした不安を抱く人も少なくない。
批判その2 独占の問題
アマゾンの成長により多くの小売業者が閉店に追い込まれており、
2015年までに1億3500平方フィート以上の実店舗物件が空室になったといいます。
強すぎるアマゾンがこうして競合を蹴散らすことで、経済界の衰退を招きはしないのでしょうか。
また。私たちユーザーは「何を買うにもアマゾン」という状況を本当に幸福に感じているのでしょうか。
批判その3 社会の弱体化の可能性
アマゾンが従業員の雇用や賃金を抑圧し、所得格差を拡大させている、という根強い批判があります。」
またさまざまな方法で課税を逃れており、2015年第四半期、アマゾンは357億ドルの売り上げに対して
連邦に納税したのは7300万ドル。実効税率はわずか2%と指摘されています。
もし本当に実店舗を廃業に追いやり自らは税金を払わないのだとしたら、地域社会は財源を減らすばかりです。
→ 利益に対する課税では?
いずれにせよ、税金逃れははなはだしく、日本でも納税がない事実がある。
日本で儲けているのに、そのお礼として、またインフラを使った使用料としての税金は
絶対に必要なものだと思っている。
納税は企業の社会的責任の第一のものだという自覚がないので昔から腹が立っているので
ほんと必要最小限しかアマゾンは利用していない。
企業文化は変わらないだろう。
それがベゾスの価値観だろうから。
批判その4 消費者の潜在的な脅威になっている」
アマゾンは膨大な顧客情報を背景に、優れたユーザー・エクスペリエンスを開発してきました。
しかし、ユーザーはそれを享受する一方で、個人情報を丸裸にされています。
そこに危険はないのでしょうか。
●要塞の中での買い物は、私たちを幸せにするか
アマゾンは、そのインフラによって究極ともいえる利便性をユーザーに提供してきました。
しかし反面、アマゾンの要塞から疎外された産業、企業をスポイルし、
新しい事業機会や成長機会を奪うという批判は、避けがたいものになっています。
たとえば、アマゾンは自らの潤沢な資金をもとに戦略的に必要だと判断した商品を、
それ単品では赤字が出るほどの安価で販売しています。
これでは、十分な資金力を持たない他社は競合のしようもありません。
そして、奪った顧客を囲い込むのに機能しているのが、アマゾン・プライムが提供する各種の特典です。
こうなると顧客はアマゾン以外で買い物をするインセンティブがなくなります。
結果として、競合関係にある小売業者にも「アマゾンのプラットフォーム上で売る」よう強いることに
なります。
アマゾンは小売り業者からも、税金のようにして手数料を徴収していくのです。
お金だけではありません。各種事業者の販売データも自分のものをしたアマゾンは、
それを自社独自の商品ラインの開発に活かしています。
要するにアマゾンは、他社のデータを用いて自社商品を開発し、他社の価格戦略を見て値段を下げ、
それによって市場シェアを広げ、得られた利益で要塞をさらに強固にしているという側面もあると
言えるでしょう。」
競合から見たら恐るべきサイクルです。
●雇用削減、低賃金、そして地域経済の衰退という批判
アマゾンが成長するほどに、従業員の本来受け取るべき利益が減らされ、
小売のリアルショップは閉店し、地域経済は財政を悪化させている
のだとしたら、その見返りとして顧客に優れたユーザー・エクスペリエンスを提供しているのだとしても、
批判を受けるのはやむを得ないといえるでしょう。
これらの批判が、先に述べたアマゾンのCSR面等での低評価につながっているものと思われます、
近年。企業の社会的責任が問われるようになってきました。
「企業は社会の公器であるべき」だとするCSRの考え方に立つならば、
真の顧客第一主義とは、狭義の顧客だけではなく、
広く取引先や関連業界、社会全体のことまで大切にする価値観でないかと考えられます。
あれだけ狭義の直接的な顧客への想いは毎年のアニュアルレポートの中でも熱く語られているににもかかわらず、
社会への責任についての言及がベゾスからほとんどなされていないのは、本当に残念に思うのです。
●利便性vs個人情報−その潜在的な脅威
現実的に個人情報は完全にプロテクトされていないという問題。
●真の顧客第一主義はベゾスから示されるか
アマゾンジャパンでは、「三方良し」を大切にする日本独特の分野やニーズを米国本社に理解してもらうことで
腐心しているようです。
PHP新書
https://www.php.co.jp/books/detail.php?isbn=978-4-569-83733-8
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