「部下を好きになってください」 
  内永 ゆか子 勁草書房


日経ビジネスの巻末に投稿記事が載っていて注目していたが「1枚の絵」はすばらしかった。

それでかの女の本が出たというので読んでみることにした。

1971年入社 東大物理学専攻

彼女はかなりそのまま開示してくれています。

○ ギブバック

彼女は離婚して仕事を取った。
上司に恵まれていろいろなチャンスを与えられる。
そのことには後に気づいている。(当時は自分の力だと過信していたようである)
そして、上司の立場となった今、同じことを部下に対して
「ギブバック」したいといっている。

 → 私は「お返し」という言葉の方が好きだ。
   これまでの人生、生きてこられたのはたくさんの方々のおかげである。
   そのおかえしをしたい そう強く思っている。
   九州電力の山内さんも「九電のおもい」に対するコメントで
   その「お返し」の思いを返してくれていました。

○ 座右の銘

オレが、オレがで突き進んできて「突っ張って」生きてきた。
ステップアップをしていた150人規模の部長を終えて異動するときに
部下にアドバイスを求めたところある課長から言われた言葉がこの本のタイトルに
なっている。

「内永さん、私たちをもっと好きになってください!」
これが彼女の座右の銘となった。

論破することしか頭になかった彼女が180度変わった。
誰も好きになっていなかった。
負けたくないとばかり思って、いつも必要以上に構えてしまう。
そうすると、相手も構えてしまう。
課長の言葉で突っ張っている自分に初めて気が付いた。

それ以来、人と仕事のうえで対立することがあっても、
心の中で「私はこの人が好きなの、好きなの、好きなの」と思うようにしている。
(嫌だなと思うことがあると3回呪文で唱える)
不思議なことに、そうすると自然に顔がにこやかになるし、相手もだんだんそうなっ
てくる。

ただ言うべきことはきっちり言う。そこはどうしても譲れない。
でもその後にまた「好きになる、好きになる」と思うようにする。

→ 「仁」のこころだと思う。まごころを持って相手と付き合うこと。
  彼女は女性ゆえに突っ張らなくてはやっていけない事情があったのも事実。
  それは、以下の感想にある。

○ オールド・ボーイズ・ネットワーク
  社会人としての暗黙のルール
  若い男性は先輩から学べるが、女性には教えてもらえないので全くわからない。
  アウンの呼吸がわからず、この文化の違いで、浮いた存在となる。
  
○ デューワーさんの教え
 入社12年目で管理職になったとき(残業規制があったので、男性と伍して仕事をしたいので
  管理職にしてくれ!という直訴をしたとのこと、偉くなりたかったわけではない)

 @ 自分の仕事の位置付けをしっかり知って取り組みなさい
 A 自分の予定表をつくる。1年に1回見直すこと
   自分の将来設計をしなさい 低いレベルではダメ、高いレベルを希望せよ
   人に言う必要はない。その地位になりたいと思ったら、55歳ではどんな仕事をしないといけないか
   そして、50歳、45歳… 5歳ごとに年を区切って、どんな仕事をしないといけないか、
   どんな役職を経験しないといけないか洗い出してみろ。
   それをもとに年表を作ってみろ。すると勉強しなければならないことが山ほどあるだろう。
   
 これを何度も諭されたので、彼女のモノになった。 1枚の絵の原点はここにありと思った。


 B 服装の教え
   誰も教えてくれなかった。大柄で体力もある彼女はハデな服を好んで着ていたよう。
    デューワーさんはプレゼンについて内容は全く指示はせず、着ていく服を聞き、
   「1週間前にきていた服がいいけれど」と助言。 (グレーのごく普通のスーツ)
   これで自分が場違いな服を着ていたことを悟る。
    重要な場面は、黒やグレーや青系のスーツにボウタイのブラウスというスタイルで通すことに

  → これは「礼」ではなかろうか
    昔は口をすっぱくして、家でも、会社でも礼儀作法は厳しく教育されてきたと思う。
    今、これが崩れてきていると思う。
  
     行儀をよくしろ 
http://homepage2.nifty.com/shigamatsu/book200308.htm
 
  

○ リーダーとは
内永さんの考えるリーダー像 
    → これはそのとおりだと思いました。

 第一にきちんとしたビジョンを持てる人。
 この組織をどう持っていくのか、どのような姿に育てるのかというビジョンをきちんと持てること
 夢のような綺麗なビジョンは持っているけれど、具体的な方針がなく、あとは他人任せで
 あっけらかんとしている人がいます。
 これでは夢を語っているだけでビジョンとは言えません。
 ビジョンを示して、現在の状況からそのビジョンを実現するまでに、どのようなステップで、何を達成してゆくのか
 というマイルストーンを、常に考えられることがリーダーの条件です。
 そして次の手を考えていることも必要です。
   
   
 第二に、その人自身が自分の価値判断の基本と思考のパターンを持っているかどうか、
 しっかりした判断力を持っているかどうかです。
 その時にその場で判断しなければならない課題や会社としての方針、組織としての役割と責任もあります。
 
  → リーダーにはおのれの哲学がなければならないと思っています。
    それをリーダー同士が理解しあうことが必要だと考えています。

 第三に、お客様や社員を大事にすること。
  価値判断のなかにお客様という要素はまず第一に入ってきますが、社員をどれだけ大事に考えるかというのは
  意外に見逃しがちです。
 
  → エッツ?社員を大事にするのを見逃しがちになる。私はそんなことはありませんが、
    内藤さんは上記の部下からの諫言でこのポイントをしっかり押さえることができたのでした。

 

● 負け犬?

 突っ張って生きてこられた内永さんだが、いわゆる「女の幸せ」は?と思うと
つい酒井さんの負け犬の遠吠えが浮かんでくるのでした。
 人生は見事なもので彼女自身には悔いはないと思うが、後輩に同じように捨てるものは捨てて仕事を取れ!という
姿勢はそれで本当にいいのであろうかと感じてしまった。