「チェンジ・ザ・ルール」
エリヤフ・ゴールドラット著
三本木 亮 訳
ダイヤモンド社
ザ・ゴールの作者の第3部目の作品。
自己実現道場でプロジェクトマネジメントの議論の際にこの本とこれに続くクリティカル・チェーンが
推奨され、11月16日の議論までに読んでおかねばならなくなった。
小説風になっているので読みやすいのがエリヤフさんの特徴である。
クリティカル・チェーンはこれからである。
この本の読後感はゴールを読んだあとのような衝撃はなかった。
TOC(制約理論)がすでに頭に入っていること、
この本はあくまで利益追求のハウツーであり、その先の利益を上げてその会社は何を社会に貢献しているかという
CSRの精神が出ていないことにある。
最近、根源的な問いがない本には響かなくなっているからである。
この本では、ERPを入れて「利益が出たのか?」の一点ばりである。
この問いは確かに必要だが、利益追求の姿勢が強くて、
そこで働く社員の使命感や会社の理念に触れるところがない。
BGソフト社のダンカンは株価、レニーはソフト開発、
唯一営業のマギー女史には顧客価値創造の考えが出ている。
企業が社会で果たす役割をどこかでいいから触れて欲しかった。
昔はこんなこと考えもしなかったのであるが、最近はそういう風に変わってきたので
自分でも驚いている。
ERPを入れて、障壁を取ることができても、ルール自体が旧態前のままであると
何の効果も上げることはできない。
システムを入れて、どのように利益を上げるかをしっかり設計し、ルールも直して初めて
成果が出る。このためには社員の意識を変えることが非常に重要になる。
そのことをモデルケースを示して説いているわけである。
翻って、わが社の様子はどうか。
ERPを入れて、関係会社も含めて経理状況が一目でわかるようになり、
四半期決算が早くできるようになったがそれで利益が上がったのか?
相変わらず経理チームは決算前の季節労働者となり、しかもそれが年4回、
資材購入も中身はよく見えるようになったが、それで何が変わったかというと
システム対応によけいに時間をとられるようになった。
ERPは経営者のツールで従業員のためのものではないというのが私の感想である。
これでは何の役にたっていないのも同然。
間接部門に大きなメスを入れることができるシステムなのに間接部門の組織要員、そしてルールが
なんら変わっていない。
はっきり言って猫に小判状態だな。
まあ、文句ばかりたれてもダメだからこの本のエッセンスだけ抜き出しておこう。
しかしほとんど最初の印象で語ったことにつきる。
それで序文で筆者が書いてくれている要約ポイントだけにしておく。
1 コンピュータシステムの真のパワーとは何か?
2 コンピュータシステムを用いると、どのような限界が取り除かれるのか?
3 これまでの限界に対応していた古いルールとは何か?
4 どのような新しいルールを用いればよいか?
5 ルールの変化に合わせて、コンピュータシステムにどのような変化が求められるか?
6 いかに変化を起こすのか?
コンピュータシステムを用いることにより、これまでは部分最適化しかできなかったことが
全体最適で行うことが可能になる。これが最大のメリット。
生産部門が効率化して大量に生産できるようになると在庫の山になる。
これを在庫を最小限にするように行えば(システムのおかげで行うことができるようになるのであるが)
利益は格段に上がり、納期も短くなれば顧客満足も上がるのである。
そのためにはいろいろとルールを変えねばならない。
ERPで全体が見られるのであるから、権限を移行したり下部におろしたりすればいいのである。
このわかりきったことが、実際には保守的組織では非常にむつかしいのである。
○ 社員にとって一番重要なのは給料ではない。
給料には、単にお金以上の意味がある。
彼らに対する評価、認識、あるいは実力を客観的に表わす尺度なのだ。
それが彼らにとって重要なのだ。
みんな目標にたちふさがる障害を克服するために日々努力しているのだ。
→ これは承認欲求の充足であり、自己実現ではない。
筆者はこのことに気がついていない。
自己実現欲求に社員を導くことができれば給料の重要性は下がる。
もう一押し書いて欲しい部分であった。
● ドラム・バッファロー・ロープ
この言葉は初めて知った。
◎ 社員教育の重要性についての言葉
コンピュータにシステムを追加するのは簡単なことだ。
どんなシステムでも追加できる。そんなことは問題じゃない。
本当に結果を出したいのなら、それ以上の努力が求められる。
プラントマネージャから機械工まで、工場で働くすべての者が、
どうしてこれまでのやり方を変える必要があるのか、
どうしてそれが理にかなっているのか理解して、初めて成功が見えてくる。
マギーが言っている教育とはそういう意味だよ。
だから、コンピュータで作成したスケジュールにしたがって工場を動かす前に、
その教育が絶対に不可欠なんだ。
全員が同じ目的意識を持っていて、結果を出すことにすべてが向けられている。
これまでと全く違う。
コンピュータのデータを正確にするのが目標ではなく、結果を出すことが目標。
◎ 全体最適に向けて評価尺度の変更
時間と金額の両方が加味されねばならない。
・「スループットダラー・デイズ」はゼロを目指し、
出荷が遅れた場合、遅れたオーダーの金額に遅れた日数をかける
インベストリーダラー・デイズはできるだけ低い数字
在庫は金額で評価しているが、どれだけの在庫を持つべきか、工場にその決定を一任するのであれば、
在庫がどのくらいの速さで動いているか (在庫×日数)