「中国の大問題」
丹羽 宇一郎 PHP新書
石丸社長(石丸製麺)のご縁がなければ読んでいなかった本である。
惜しむらくは丹羽さんのサインをいただけるチャンスを逃してしまったことである。
でも読んでよかった。
丹羽さんスピリットが随所にでていて、中国のことを理解することにも役立った。
現場主義。
丹羽さんは中国各地の現場を回られ、できるだけ庶民の生活場面に触れること(市場など)や
要人に面会をして話をしておられた。
やはり民間出身ならではの大使である。
この本で知らなかったことは、黒竜江省方正(ほうまさ)県の日本人墓地の存在。
戦争の被害国となった政府が加害国の居留民の死者のために共同墓地を作っているのである。
そこにはかつて日本の満州開拓団の本部があり、敗戦時に一部の日本人移民が引き揚げの
際に集結した場所だった。
参戦して国境を越えて押し寄せてきたソ連軍から逃げる途中、飢えと寒さ、感染症の拡大で
多くの日本人が亡くなった。集団自殺もあった。
1960年代に郊外の砲台山のふもとで大量の骨が発見された。
当時の周恩来首相の指導のもと、中国当局は周囲に散らばった7000柱におよぶ遺骨を収集し、
日本人共同墓地をつくって埋葬したのである。
⇒驚いた。そしてこのお墓参りを中国離任前に命がけで実行した丹羽大使であった。
第4章の少数民族という大問題も興味深く読んだ。
日本人と同じ1億2千万人の少数民族がいるのである。
ウィグル自治区、モンゴル自治区、チベット自治区、広西チワン族自治区である。
すべて辺境で国境を成し、資源も豊富。
中国共産党の統制がしっかり敷かれ、経済発展とともに漢民族の流入も多くなっている。
そして丹羽大使はすべて訪問してきている。
本当に現場主義実践の方である。
チベット自治区への行き方が面白かった。
まず、北京から青海省の西寧へ、そして2006年に全線開通した青蔵鉄道を使って西寧から
24時間かけてラサに入った。
鉄道を使ったのは、高度が4000mあるラサに飛行機で一気に行くと、高山病にかかる可能性があるからだ。
⇒なるほどと納得
印象に残ったのはこの2点。