「不祥事」

  池井戸 潤   講談社文庫
  

   

若手女性銀行員 花咲 舞 がヒロインの痛快読み物である。

バッサリと悪をあばき片づける舞。

上司の相馬調査役はハラハラドキドキ。

おい、狂咲と言ってしまう、普通の銀行員ではあるが、本質はしっかりしている。

この物語は短編8つがあるが、すべて最後は痛快解決で気分よく終わっている。

しかし、なんかこれってホンマかいなという違和感が大きい。

銀行員でこんなに出世争いにやっきとなり、お客様より自己保身、自分の出世しか
考えない
悪い派閥の奴らがたくさん出てくる。

半沢直樹の内容とたてりは全く同じ。

私自身はそんなに悪い人間はいないのではないかと思っている。
お人よしかもしれないが、悪人をそんなに作って、それを成敗して
気分よしとしている単純なストーリーに何か物足りなさ、奥のなさを感じてしま
う。


今回は銀行窓口のことを「テラー」ということを初めて知りました。

舞のこの言葉はいいと思う。

何度も出てくるがこれが池井戸氏の思いなのであろう。

彼岸花のところである

「私がそう思ったのは、そうすることで真藤部長に銀行という組織で働くことは何
なのか、考えてもらいたかったからです。
真藤さんは、自分の名誉だかプライドだか、あるいは出世だかのために、川野さん
を貶(おとし)めた。
たった一人の人間の自尊心のために、同じ銀行で働いている、家族も将来もある人
間がだめになっていく。
いつから銀行はそんな職場になったんでしょうか。
出世のために人を蹴落としてなんとも思わない、そんな人の経営する銀行に、社会
の役にたつことができるでしょうか?
私がいいたいのは、そういうことです。
この銀行には大勢のひとが働いています。出世や銀行の利益のために、その人だけ
でなく家族の幸せまで奪う、
そんな組織にして欲しくない。
そう思ったから、あの彼岸花、一度だけ送ったらって言いました。
もしそれで真藤さんが気づいてくれたら、もう二度と、彼女(亡くなった川野の
妻)は過去を振り返らない、
そう約束したんです」