「原発ホワイトアウト」

   
若杉冽    講談社


     


情報通の友人から、今、話題になっていると紹介のあった本。

経済産業省の現役キャリア官僚が書いたもの、最初に坂出鉄塔倒壊事件から始まると聞いて興味を持って読んでみた。

図書館への予約が早かったので10日ほど待ったら手に入った。

あとの予約数はうなぎのぼりとなっていたのでラッキーだった。

3.11の福島ブラックアウト炉心溶融事故の後、参議院選終了し自民党復活、原子力規制庁の審査が始まったところまでほぼ事実を

追っている。

フィクションで名前がすべて架空のもの(県名までもが架空とは笑える)とはいえ、実に生々しかった。

東京電力の政治力の背景は知らなかったが、ほんとかしらと思えるくらいのリアルさだけに事実確認をしたくなった。

東京電力の秘書、電事連専務理事の裏工作力。

落選議員へ就職先をあっせんし恩を売るなど、知らない裏世界の描写が生々しい。

悪意すら感じた。

それにしても、新潟県知事に対して親族の汚職を作り上げ、検察庁のトップである検事総長まで総理大臣を使って動かして、

ついには立件、逮捕して失脚させるなんて…。

原子力規制庁の審議官から日本原電に委員会資料(敦賀の断層評価)が事前に渡されていたことについては

内部の総務課長からの内部告発というシナリオを使って見せており、さもありなんという生々しさ。

現実に、新潟県の泉田知事が東京電力のベントの件で、急に軟化して柏崎の申請を承認したのがこの本の出た直後というのも

何か泉知事への警告になってくれたのかしらんというふうにも思えた。

作者は東大法学部卒の事務官であろう。

法律の内容がしっかりしていること。

検察庁のキャリア検察官が霞ヶ関の中では格が違う(司法試験を合格している)ことを書いていることから

そう思えた。


あと、ホワイトアウトの意味がわからなかったが最後になってやっとわかった。

雪のために、電源喪失して炉心溶融事故が発生するということであった。

電力自由化はあくまで原発再稼働のための手段というのは筆者の勝手な思い込みではと思えたが

議論の余地はあるだろう。

まあ、関係者での飲み会での話題提供にはなるなと読んでいてよかったと思った。

電力関係者は読んでおくことをお奨めします。

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田中龍作ジャーナル よく書けていると思います