「自覚」
今野 敏 新潮社
キャリア官僚ながら息子の不祥事で大森警察署長へ下った「竜崎伸也」。
彼の活躍は「宰領;隠蔽捜査5」で初めて知った。
その竜崎署長を第3者の部下の視点で捕えた短編集。
竜崎の合理的思考、組織の掟はゼンゼン気にしない、その痛快さとカッコよさを
見せつけてくれる作品である。
読後感は爽快このうえない。
サブタイトルは後から気が付いた。
5.5 隠蔽操作
なるほどである。
私は特に2番目の「訓練」が強く印象に残った。
スカイマーシャル訓練を受けたキャリア女性官僚畠山美奈子が
初日で泣きそうになり思わず夜中に竜崎に電話をして教えを聞き
見違えるほどの成果を挙げ、最後には反感を持って一緒に訓練を受けていた
男性SAT5人組から別れの東京駅で最敬礼を受けたくだりには
感動した。
その教えとは
◎ 訓練の目的は、疑似体験を通して新たな能力を身に着けることだ。
そして、訓練は、自分自身のためにやるものだ。
だから、人それぞれに成果は異なる。
ひとつだけ言えるのは、体力を使うより頭を使うほうが、ずっと大切だということだ。
頭を使ってこそのキャリアであり、体力を補うために頭を働かせてこんその女性ではないのか?
竜崎署長に次いで第2の主人公たる人物がいた。
タイトルの「自覚」で犯人に発砲した戸高刑事である。
仕事中に平和島競艇に顔を出し、そこで指名手配犯を見つけて検挙したことがある勤務態度は悪いが非常に優秀な刑事である。
この反骨分子も痛快だった。