「神様のカルテ0」

  夏川 草介 小学館


     

神様のカルテの最新刊であるが、その4ではなくゼロである。

1,2,3よりも以前になるのである。

4編のオムニバス構成。

第一は「有明」

一止ではなく辰也が主人公的に描かれ一止は脇役に。
学生生活最終年度の回顧である。
圧巻が最後の辰也の千夏へのプロポーズの場面。
これはあまりもカッコよかった。
鷹渡りを見せ、そしてそれが鷹柱ほどの規模に遭遇した瞬間に言ったのであった。
素晴らしい情景であった。


第二が「彼岸過ぎ」まで
ここは一止がお世話になる本庄病院の情景。
一止を研修医で受け入れる直前の病院の様子を見せてくれている。
うるさい金庫番の事務長が実は奥様をガンで亡くしたことを知る大狸先生であった。


第三が「神様のカルテ」
タイトルの神様のカルテがここでわかるのだと期待して読んだ。
一止の最初の患者である國枝さんが胃癌の患者が娘の結婚式に出るために治療を延期したので
御嶽壮の神だなをきれいにして毎朝拝んでいたので、神様かと思ったが違った。

大狸先生が「九兵衛」へ連れて行ってくれて慰労する場面。
やはり日本酒の銘柄が登場してきた「秋鹿」と「信濃鶴」。

そして出てきたのである。
神様のカルテが

◎人間には神様のカルテというものがあるんだ。
 神様がそれぞれの人間に書いたカルテってもんがある。
 俺たち医者はその神様のカルテをなぞっているだけの存在だ。

 そいつを書き換えることは人間にはできない。

 大切なことは命に対して傲慢にならないことだ。
 命の形を作りかえることはできない。
 限られた命の中で何ができるかを真剣に考えることだ。


國枝さんが一止に言ってくれた「優しさ」もいい。
◎相手が何を考えているのか、考える力を「優しさ」というのです。
 優しさとは想像力ですよ。(そのために読書は役立つ)
 優しい人は苦労します。


第四が「冬山記」

ハルさんが出てくる。一止は最後に名前しか出てこない。
このゼロでは一止は完全に脇役である。
ハルナさんは「春奈」かと思っていたが
「榛名」さんであった。
あまりにカッコよく力強い榛名さんの登場であった。