「神様のカルテ3」
夏川 草介 小学館
1,2と読んで大ファンとなった夏川草介の神様のカルテ。
春には櫻井翔と宮崎葵の映画を家内と見にいったのだが
原作の良さというか私が好きな部分がほとんど出てこなくてがっくりであった。
そんな中でその3が2年ぶりに刊行。
期待どおり、きれいな場面が目に浮かんで、人物の心模様も深く味わえて
映画でズタズタに壊されたイメージがきれいに復活できた。
よかった。
まずは、映画では全く取り上げられなかった日本酒。
今回も知らない銘柄がどんどん出てきた。
『信濃鶴』 大吟醸
細君が居て、美酒がある。
万事が困難ばかりの日常でも、かかるひと時にかけがいのない愉快がある。
私はただ端然として、この至福の時を楽しむのである。
『福源』 純米 安曇野の産
『天法』 墨子の「天に法(のっと)るに若(し)くは莫し」の一文から、名を取った酒 (生産終了)
『かたの桜』 細君ハルさんと居酒屋九兵衛で 鰹のタタキと合うお酒
『杉の森』 最後の大狸先生のお店で登場するお酒 これを熱燗で
お酒との対照でアルコール中毒患者が次々に出てくるところが面白い。
それにしても救急の現場がこれほどまでに過酷であるということはいつ読んでも思い知らされる。
そんな束の間の休息の場でのお酒がいかに癒してくれるのか、その雰囲気がよく伝わってくる。
アルコール中毒患者の金魚屋横田さんの物語
東西主任看護師と アルコール中毒患者の榊原さん 「ジャン・クリストフ」
82歳 島内爺 手術の問題
読んでいない人に中身を書くわけにはいかないので、以下の書評を引用させていただくことにしよう。
その4が出るのを楽しみに待ちたい。
◎ ただ牛のように図図しく進んでいくのが大事です
● 智に働けば角が立つ、情に掉させば流される
◎ 医者にとって一番大切なこと それは続けることです
書評はこちら http://sankei.jp.msn.com/life/news/120811/bks12081107510002-n1.htm
うまく書かれています。感心しました。
「神様のカルテ 3」
■超ベストセラー 2年ぶり最新作
栗原一止(いちと)は、信州にある「24時間、365日対応」の本庄病院で働く30歳の内科医。
秋9月、新しい内科医としてやってきた小幡奈美先生は、経験豊富なうえに腕も確かで研究熱心、一止も学ぶべき点の多い医師だ。
しかし彼女は、治ろうとする意欲を持たない患者に対して、まともな診療をしないのだった。
抗議する一止に対し、小幡先生は「あの板垣先生が一目置いているっていうから、どんな人かって楽しみにしてたけど、
ちょっとフットワークが軽くて、ちょっと内視鏡がうまいだけの、どこにでもいる偽善者タイプの医者じゃない」と言い放つ。
さらに、老齢の患者をめぐる大きな試練が、一止を待ち受けていた。
「私は、医師がどうあるべきかを、考えることすらしてこなかった。懸命でありさえすれば、万事がうまくいくのだと、手前勝手に思い込んでいた。
だが医療とは、そんな安易なものではない」。転機を悟った一止は、より良い医師となるため新たな決意をするのだった−。
水のように流れる名文が波瀾(はらん)万丈かつ豊かな物語をより味わい深いものにしています。
信州の美しい風景描写も、温かさも、ユーモアも健在ですが、いままでより少しだけビターなのは一止の成長の証しでしょう。
今作では、患者も医者も誰も亡くなりません。
「人が死なずとも、人の心を動かせる物語にしましょう」が著者と私の合言葉でした。
生きていくのに必要なのはただ歩みを止めないことだけ。
「前向きに生きたい」「明日からは頑張りたい」そう思っている方への特効薬をお届けします。(小学館・1575円)
小学館出版局文芸・幾野克哉