「タクシー王子、東京を往く。」
 日本交通・三代目若社長「新人ドライバー日誌」

 川鍋 一朗     文芸春秋





たまたま日曜の朝のTVで日交の若社長が登場しており興味深く見た。
その川鍋さんが本を出しているというので取り寄せて読んでみた。

発行元の文芸春秋の紹介から図書紹介を引用しよう

http://www.bunshun.co.jp/book_db/3/70/18/9784163701806.shtml

■内容紹介■
タクシー業界最大手・日本交通の若社長がドライバー体験を志願。
激動する現場を、経営者自らの新人体験を通して描いた異色の日誌


創業80年、売上高日本一、桜にNのマークでおなじみのタクシー会社・日本交通の創業家3代目社長・川鍋一朗氏(37歳)が、
昨年末、突如、宣言。大晦日から1カ月間、東京で乗務に挑んだ。
慶応大学卒業後、海外留学でMBAを取得、借金で火の車だった経営を立て直すなど、辣腕経営者として注目され、
“タクシー・プリンス”とも呼ばれている彼だが、最大の弱点は「道をよく知らないこと」。
案の定、現場ではドタバタ冷汗の連続で……。若社長は激務にどう立ち向かい、そこから何を学んだのか。
笑いあり、涙あり、出会いありの奮闘の記録を、日頃、タクシーを利用するすべての人々に捧げます。


1ヶ月 社長業がちょっとあく間の12月31日から 1月28日までの1ヶ月間

全13乗務 売り上げ835,710円 営業427回 走行距離4052km
1日平均  60,428円、32.8回、311km

2日に1回 7時〜翌朝の2時だから毎日は無理である。
1台の車を2人の運転手で使うのである。

これだけ一生懸命働いてもこの売り上げだから、燃料費高騰の折、これでは
タクシーの月給をたくさん出せないことがよくわかる。
チップは割合ともらっているようで、どんなに少なくても運転手は嬉しい様子が
よくわかった。
売り上げの1%くらいがチップだったと書いてあるが、それは川鍋さんの態度が良かったからであって
普通の運転手はもっと少ないだろう。チップがないと生活やっていけないようにも感じた。



◎ 「拾われる」時代から「選ばれる」時代に
3000台のタクシーの位置を10秒ごとに把握。一番近い車を配車できるデジタルGPS無線システム。
これによりお客様の待ち時間は確実に短縮された。
それで配車予約が増えた。

しかし、経営者としては辛い面も。
車にはGPSやカーナビ、無線センターには多量のサーバーや詳細な地図ソフト
億単位の設備投資、千万単位でのカスタマイズが日常茶飯事
これが収益を圧迫

「タクシーは拾うから選ぶ時代へ」。事業の構造が変化し、営業への投資をした会社だけが
生き残れる時代なのだ。


● 成田は遠い
成田までタクシーは2万数千円かかってしまう。
これでは観光客のリピータがなくなると心配。

● 料金踏み倒され
カラスのような黒ずくめのお姉さんに品川プリンスホテル行きでイチャモンをつけられた。
南大井から1700円。
タワーだ、高輪プリンスだといいがかり。
常習犯のようだ。2日目だっただけにトラブルにしたくなくて泣き寝入り。

○ AMラジオが深夜の高速の友
今までベテラン運転手たちが、「あの番組がおもしろい」「あのパーソナリティがいい」
と話しているのを聞いてもさっぱり分からなかったのだが、蘇我駅までの万シュウ後の
都心へ帰る高速道で眠気覚ましにちょうどいいというのを知る。

徳のある企業 とお天道さんが見ている というのが印象に強く残った。

◎ 「徳」のある企業
日交が経営危機を脱したが、その再建を手伝ってくださった清水直弁護士の言葉

「自分がやってきた何百件という案件の中で、日本交通の案件は五指に入るほどうまくいった。
なんでだか分かりますか?君はがんばった。私もがんばった。だけどそれだけじゃあ、ここまで
うまくはいかない。この会社が過去に積み上げた徳があったから、もう1回チャンスを与えられた
ということなんだ。いろいろな会社の再生をしていると、ここで何とかしなけりゃいかん、という
局面が必ず訪れる。そういうときに、ダメになってしまう会社と神風が吹く会社がある。
日本交通は後者だ。これは過去にその会社がよい行いをしてきたからだ。
先人が遺した徳が、今の日本交通を救った。
だから会社が復活したら、君はもう一度徳を残さなければいけないよ。」

日交の新しい社是 「徳を残そう」

http://www.nihon-kotsu.co.jp/about/profile.html


◎ お天道さんは見ている
ワンメータのお客様も大切にする人こそ、ロングが巡ってくるからだ。


○ 日交の3種の神器
専用乗り場、 平均2300円
無線、     平均4000円
チケット    平均6300円

流しは平均1400円   なるほどねえ。しかしこの神器には投資が相当入っているのも事実。


○ 急ぎめでお願い という客には
黄色信号はなるべく渡る、やや前のめりの姿勢で運転したり、精一杯の努力を見せる
パフォーマンスともいえるが、ちゃんと相手の目に見える形で急いでいることを伝えるのも
重要なコミュニケーションだと思うからだ。
運転手も一緒に急いでくれている、そう感じればお客様も精神的に納得する。
 ビジネススクールで学んだ、「心理の共有」
  (⇒ 納得である)

● 慶応スキー部主将時代の思い出
絨毯爆撃を繰り返したことの反省。
東大は半分の予算でほぼ同じポイントを稼いだ。
そのリソース配分が優れていたことに衝撃を受けた。
そのときのポイント表は今でも持っているという。 

○ タクシー運転手とは
孤独な仕事だ。
21時間に及ぶ長い勤務時間中、仕事ぶりを見張る上司も、グチをこぼせる同僚もいない。
体調管理を怠らず、コンスタントに高い営収を上げられるかどうかは、すべて自分にかかっている。
同時に、タクシー運転手は人との出会いに満ち、人の役に立ち、人から感謝される仕事である。
その証がチップだ。
サービスがよいと思えば、お客様がチップを下さる。
私の経験から言うと、売り上げの約1%。
タバコ代、ランチ代にはなる。
こんなにチップをもらえる商売はなかなかない。
お客様と出会い、サービスを提供し、感謝される。そこにプライドを感じてやっていこうじゃないか!



他の方の読後記ブログ紹介
http://www.tomomaeno.com/archives/2008/06/post-632.html