「家事調停委員の回想」 漂流する家族に伴走して
中島 信子/著 冨山房インターナショナル
【内容紹介】
家事調停委員はどのように問題を解決しているのか。
家庭裁判所、簡易裁判所、地方裁判所で調停委員として29年、
さまざまな調停事件にかかわってきた著者が、その役割と調停の内容をわかりやすく語る。
【著者紹介】
1942年、福島県須賀川市に生まれる。1965年お茶の水女子大学教育学部英文学卒業。
1970〜73年米国オクラホマ州オクラホマ市在住。
1985、新潟家庭裁判所調停委員就任。
2000年、新潟地方裁判所・簡易裁判所民事調停委員就任。
2012年、FPIC新潟ファミリー相談室、面会交流援助活動参加。
2013年、新潟家庭裁判所家事調停委員退任。
2014年、新潟地方裁判所・簡易裁判所民事調停委員退任。
今年の10月に家事調停員に任命されたので先輩の本を探したが、「守秘義務」の縛りからなかなか実際の調停の様子がわかるような著書は見つからなかったが
やっと1冊めぐり合うことができた。
読んでみて、非常にその様子がわかった。
これも2回の研修と2回の調停見学を終えた後で読んだからであろう。
家事調停はほとんどが離婚とそして遺産分割。
その具体例を示してくれて、副題の漂流する家族ということが非常に伝わった。
守秘義務制限の中で上手に書いておられると感心した。
離婚はいきなり裁判とはならず必ず調停の場を経過してからでないと行われない。
裁判で離婚するとなると、明確な理由が必要なのである。
実際、先日立ち会った事件では、不貞の事実が明らかでなく申し立て人の思い込みのようであり770条では離婚できないことは明らかであったので
調停離婚しか道はないと思われた。
(裁判上の離婚)
ん
調停とは
P17 ある裁判官がおっしゃった言葉
「裁判は法律に沿って細くて真直ぐな道です。
それに比べ、調停ではその道幅が5倍にも十倍にも広がると考えてください。
結果、広くなったぶんいろいろ考慮すべきものが見えてくると思います。
しかし、その道から大幅に外れてしまっては困ります」
離婚調停で争われるのは、
「親権」、「養育費」、「面会交流」、「財産分与」⇒これを含めて「婚費」という言葉で使っていて最初は慣れない言葉でわからなかったがやっとわかってきた、「慰謝料」
それぞれのケースについて実例を挙げて説明されていてわかりやすかった。
【主な内容】
第1章 家庭裁判所と家事調停委員 調停委員とは/リークの話…
第2章 調停の申立てから合意成立まで 調停室の現場と守秘義務/調停の中立性/合意の確認と調停成立/子の引渡しの強制執行について…
第3章 離婚調停のAtoZ 協議離婚ができない場合/離婚調停…
第4章 「家」制度の中の家族の姿 「家」制度のもとの家族…
第5章 離婚調停のいくつかのケースレポート 親権の争い/養育費とは/財産分与に関すること/慰謝料に関すること/家庭内暴力…
第6章 遺産分割調停のAtoZ 相続人を確定する/遺言書の存在と検認/具体的な分割方法を決める/遺産相続に附属しがちな争い…
吉田さんが調停委員を始めたのが35年前。その当時と現在ではかなり女性、妻、子供の立場が重視されるようになってきている。
P165
時代が変わりました。今は、「婚姻中に築いた財産は夫婦共有の財産であり、離婚時には特別なことのない限りこれを折半する」という法律ができました。
ネットの法律家のWEBページを引用しておきましょう https://www.adire-rikon.jp/about/money/zaisan.html