「嫌われる勇気」

 岸見一郎、古賀史健 ダイヤモンド社


  

タイトルに違和感があったが家内が読めと渡してくれたので読み始める。

するとアドラーの心理学の本であった。
以前からアドラーについては興味があったので読み始める。

最初の100ページ読んでも、目的志向のアドラー心理学という感じしか受けず
「勇気」は何度も出てきたが、タイトルのような意味ではない。

話は青年と哲学者の対話形式で進められるので非常にわかりやすい。

知らなかったがソクラテスは自分で著書を書いていない。
弟子のプラトンがその対話を哲学として記録したものなのだということを。
アドラーもしかりとのこと。

アドラーの説く人生のタスク と学生時代に聞いた人生の3つの節が重なった。

(人生のタスク)  (人生の節)
仕事のタスク     就職
交友のタスク     結婚
愛のタスク      出産

愛のタスクは結婚、出産(親になること)

交友がちょっとないのかも知れないが配偶者は愛よりも交友と捉えてもいいのでは
ないかとも思う。
でもまあ親友でしょうな。

アドラー心理学は自分を変えるための心理学
 ⇒ この歳になるとよくわかるような気がする
   相手を変えよう、変えられるとは思えない。自分が変わらなければ何も変わ
らないという思いに到達する。

愛のタスクではやはり親子関係を重視しているようだ。
配偶者は離婚で切ることはできても親子関係は絶対に切れない。
逃げてはいけない、ちゃんと向き合うことと説く。
 ⇒ 納得である。


変わるために大事なことは善悪でも道徳でもなく「勇気」である。

アドラー心理学は「勇気の心理学」で「使用の心理学」である。


140ページあたりまで来て、やっと「嫌われる」の意図がわかってきたような感
じになった。

課題の分離。
誰の課題なのかということで、割り切ること。
どういうふうに思うかはその人の課題で自分のものではない。
したがって承認欲求は捨てよと。
そして他人の課題には介入せず、自分の課題には誰ひとりとして介入させない。
これは具体的で、なおかつ対人関係の悩みを一変させる可能性を秘めた、
アドラー心理学ならではの画期的な視点となる。

そして160ページ頃に初めて「嫌われたくないのでしょう」という言葉が出てく
るのであった。


あと「承認欲求」がよく出てくるキーワードだ。
タイトルでも
・承認欲求を否定する
・承認欲求は不自由を強いる

そして「課題の分離」ができておらず、承認欲求にとらわれている人は極めて自己
中心的だ。

とある。

確かにモチベーションの研究をしていたときに、この承認欲求が満たされないとき

多くの不適切行動が発生することを理解していた。
だからこの欲求ではなくもっと高次の自己実現欲求に基づく行動ができるようにな
ることが
最も望ましいことと結論づけた。

アドラー心理学でもまさしくこのことを言っており、その方法論まで与えてくれて
いるという
感じを受けた。

上記の研究での会得から、このアドラー心理学の言うことは素直に心に入ってき
た。

対人関係のゴールは「共同体感覚」social interest ということも自己実現につな
がると思う。
ただ、この共同体とは、過去から未来、そして宇宙全体までも含んだ、文字通りの
「すべて」という
概念にはたまげたが、なるほどそうだろうと納得。

そして共同体に対して自らが積極的にコミットして初めて所属感が得られる。
具体的には「人生のタスク」に立ち向かうこと。
つまり、仕事、交友、愛という対人関係のタスクを回避することなく、自ら踏み出
していくこと。
所属感とは、生まれながらに与えられるものではなく、自分の手でかくとくしてい
くもの。


褒めるのも叱ることもダメで有効なことは「勇気づけ」
褒めるとは上から目線、能力のある人がない人に下す評価

そして感謝の念。
 ⇒ これはわかった。褒めるでも叱るでないという問いにこの言葉が浮かんだ
縦の関係ではなく横の関係、すなわち対等な関係での態度となる。

われわれは自分が誰かの役にたっていると思えた時だけ、自らの価値を実感でき
る。
 ⇒ この言葉もすぐに出てきた。
   かようにアドラー心理学の肝はこれまでの人生のなかで自然に会得できてき
ていたと実感。



共同体感覚は自分をありのままに受け入れる「自己受容」、無条件の「他者信
頼」、自分の価値を実感する「他者貢献」で得られる。

アドラー心理学の掲げる目標
行動の目標
@ 自立すること
A 社会と調和して暮らせること

この行動を支える心理面の目標
@ わたしには能力がある、という意識
A 人々はわたしの仲間である、という意識

幸福とは貢献感を実感すること。他者からの承認は必要ない。
 ⇒ 上記のとおり私はこの真理を理解できる。


青年と哲学者の対話を楽しくよませてもらった。

わが意を得たりに近い感覚であった。

最後の「いま、ここ」に強烈なスポットライトを当てよ。
人生は刹那の連続、いま、ここにを真剣に生きよ。
この言葉は初めての言葉だった。

そして最後のフレーズがよかった。

アドラーは「一般的な人生の意味はない」と語ったあと、こう続けています。
「人生の意味は、あなたが自分自身に与えるものだ」と。

そして導きの星は「他者貢献」なのだと。

(2021.3.6 追記)

中田敦彦のユーチューブ大学で講義があった。
わかりやすいので引用しておく。

 https://www.youtube.com/watch?v=N-fT1KjtGGA