10月25日は四国総研の20周年記念講演会 (10月1日が創立記念日)

えっつ!?、総研が出来たのって原子力保安研修所よりも後だったの?という気持ちもありました。
昨年20周年記念講演会を北村東北大名誉教授を招いて実施していましたので。

それに比べて今日の参加者へヒョエー。
Y本、K藤両相談役、O会長以下役員ズラリ、関係会社のトップも。
質問を頼まれて軽く引き受けていたけれど、当日になって経営企画部長だけでOKとい
うことでお役ゴメンで助かりました。



この質問を用意するためいろいろ調べて準備はしていました。

せっかく準備したので書き残しておくことにします。


演題は「宇宙、人間、素粒子」でした
大きいものと小さいものの間に「人」を入れているところが小柴さんらしいところです。


まずは経営企画部長の質問から
(さすがに緊張して声が上ずっていました)

Q 子ども達の理科教育について
   科学フェスティバルや出前授業のことを宣伝した上で、小柴先生に大事なことを尋ねた。


A  すべての子どもが理科を好きになってくれなくてもよい。
   大事なことは、理科に興味を持っている子どもが、その興味を失ってしまう
ように間違えないようにして欲しい
   ということ、間違った指導をしないように。 ということで、なるほどと唸りました。



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実は原子力安全課長の時代にニュートリノ測定には協力しています。
当時の電事連原子力のT部長が大学の同期で前のめりだったこともあって
四電として積極的支援の姿勢を貫きました。


ニュートリノ測定実験への原子炉運転データの提供について


実は、明日、総研の20周年記念講演会があり、ノーベル賞の小柴昌俊先生のお話
しを聞くことになっています。

そこで質問をしてくれということで、いろいろ調べていたらカムランドもひっかかり
おお、そういえば発電所データを提供していたわい。
それなら宣伝しておこう と思って伊方発電所に問い合わせた次第です。

http://www.awa.tohoku.ac.jp/KamLAND/physics/kamland.html

(1)提供データの項目
※原子炉毎のデータ
 ・原子炉の名前
 ・炉型
※定期検査毎のデータ
 ・サイクル番号
 ・新燃料の炉内体積割合
 ・新燃料の平均濃縮度
 ・サイクル初期の炉心平均絶対燃焼度
 ・初期ウラン重量
※運転時のデータ
 ・定常運転時のサイクル増分燃焼度、炉心熱出力
 ・出力変動した場合の時刻とその時の電気出力
 ・出力変動ロードカーブ



(2)提供頻度
 ・定期(1回/1ヶ月)

(3)提出先
 ・東北大学 末包准教授



この2002年の12月10日に小柴先生がノーベル賞を受賞されたのでした。









小柴昌俊先生の講演会の質問があたっているので
こんな本を読んでいたら、いい言葉に出会ったのでメモしておいた。
http://www.ssken.co.jp/souken-news/news-04b.pdf

「小柴昌俊−上田耕一郎対談 人生の同行者」 新日本出版社

(上田耕一郎の言葉)
僕は、シンクグローバリー、アクトローカリー
(地球的規模で考えて、、地域で行動する)という言葉が好きなんだけどね。

君はシンクコスモス(笑)、宇宙を考えながら住んでいる地域のために行動する


 ⇒ シンクグローバリー、アクトローカリー は大事な言葉として胸に刻みまし
た。

(上田)カミオカンデでは、みんなが魅力を感じられる独創的な目標を出して
さ、それに大勢の
人間を組織したでしょ。あなたは僕にこんなことを言ったことがあるんだよ。
「おれは物理の理論のほうはまあまあだけど、人間を組織することはうまいん
だ」って。

(小柴)そんなこと言ったかな、ハハハ。


カムランド (カミオカンデからの3代目)
カミオカンデの跡地に造られたニュートリノ観測装置。
水の代わりに液体の蛍光物質を使って、200km離れた場所にある原子力発電所から来た
反ニュートリノなどを捕らえることができる。
2002年、反ニュートリノの振動現象の観測に世界で初めて成功した。

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さらに東大総合研究博物館の「小柴先生ノーベル賞受賞記念ニュートリノ」も
読んで人間小柴を知るところとなりかなり感銘を得た。

まずはチェレンコフ光をノーベル受賞式で解説している内容がある

真空中ではいかなる粒子も光の速度より速くなれないという制約があります。
しかし、水のような媒体中では、光の速度それ自体が、真空中の4分の3の速さに
原則します。したがって粒子のエネルギーが非常に高いときには水中では粒子の速度が
光速を超えることがあります。光は水中で減速していますから。そのような高エネルギー
・高速の粒子は水中を走ったとき、チェレンコフ光と呼ばれる衝撃波ができるのです。
チェレンコフ光は荷電粒子の進路を軸として円錐状に放出されます。

橘由香里さんが書かれた
研究者・企業家・教育者 〜 3つの顔を持つ小柴昌俊先生の人とその思考

これがよかった。

【研究者】
研究者としてはいろいろな先輩に可愛がられて物理学を行うこととなった。
先輩の藤本陽一(早稲田大学名誉教授)に、原子核乾板を使った宇宙線の観測実験を誘われたことが、
「自分のできる」ものとの出会いであった。
四国総研20周年記念講演会で話を聞くと、物理学を志したのはまさにこのときであったという返事であった。


・ヤマカンは磨かれる。磨けばあたるようになる。
 その人がどれだけ本気であるかということ。

・「今はだめでも、いつかは」という研究の卵を3つ、4つ抱えておくこと
 講演会では【夢の卵を育てよう】と言われていました。

・新星ニュートリノはいい結果だったけど、自分が狙って結果を出したわけではな
い。
 すなわち、もっと観測が難しい太陽ニュートリノの観測に取り組んだから。
 そもそもは陽子崩壊を調べる装置だったカミオカンデが税金の無駄使いにならな
いように
 堅実に成果のでるものの研究も行うという戦略をもっていた (企業人)

 ニュートリノはラッキーだったが、運を捕まえられるかどうかは、
 日ごろからちゃんと捕まえる準備をしているかの差だ。
 運は平等に降り注ぐのだから。


解説
 星が爆発する直前は、星の中心に太陽質量くらいの鉄の塊があり、それが一気に
直径10kmくらいの原子核の塊につぶれる。
その鉄の周りには太陽の何十倍もの質量のガスがあるので、それを押しのけないと
光は出てこられない。しかし透過性の高いニュートリノは素通りできるので、
星の爆発時、ニュートリノは爆発の瞬間に出るが、光は遅れて出てくるので、
タイムラグができる。しかし、そのタイムラグは、「太陽の20〜30倍の星が
爆発したら、光が出るまで数日かかるかもしれない」程度の議論で、実際のところ
何時間なのか、何日なのか誰も知らなかった。


・太陽ニュートリノ観測から「ニュートリノ振動」も発見した。
 地球の裏側から到達するニュートリノが少ないことに気づいたことによる。


・一流の理論屋は、自分の理論の適用限界を知っていて、それ以外のことを自分は
知らないと認める。
困ったことに研究計画の審査委員会には、二流の理論屋が入る可能性が多い。
 すると「これは」という目をみはるような研究は、撥ねられる。数でまとめたら勝てない。
 小柴の研究計画は西島和彦先生(東大名誉教授、仁科財団理事長)が認めてくれることになる。

・小柴は、常識にとらわれず、人目を気にせず
 「欲しいものは欲しい」「やりたいことはやりたい」と率直にいい、できると信じてやってみる。
  ◎ 道楽科学者

【企業家】
・僕は怠け者のリーダーなの。「こうやったらいいのでは」と言って、若い人をたぶらかす。
 いざとなったら、おまえがこれの責任者となれって、人に振って押し付けちゃて、あとは
 まかせちゃう。そうすると自分で考えるしかないから、伸びるの。

・若い男っていうのは、若すぎると思ったとしても、責任ある地位につけるとグングン成長する。
 僕のところの教え子は、ビッグ・プロジェクトに参加させたり、海外で揉まれるように送りこんだ
 りしたから、一本立ちした。

◎カミオカンデの建設にあたっては、建設資金を値切った。工事も直営でやったりした。
 税金を使って研究させてもらっているという自覚と責任感がすごい。そのくだりであるが
 以下のとおり。

・ビッグプロジェクトのボスとして、アイディアが具体化に向けて、人脈を駆使して国や企業を
 「自分の研究への情熱と信念」で口説き、動かし、周囲に異常だと恐れられるほどの予算を
 勝ち取っていくのである。
 しかし、対照的に小柴は「使う金」に対しては非常に「しまつ屋」だ。
 東大教官時代の小柴の口癖は、「国民の血税を使って研究をやらせていただいているのだから、
 業者のいいなりで買うな」だったという。実際に、「カミオカンデの工事は2.2億円の見積もりが
 1.4〜1.5億円で納得させられた」「特注で作らせた直径50cmの光電子倍増管(フォトマル)
 は、1個13万円に値切られため、1000個で3億の減収だった」と、業者らにため息をつかせているのである。



【教育】

・科学は習っているだけでは、ちっとも楽しくない。
 やっていると、とても楽しい。これを若い子に知らせないと。

・教科書を一生懸命覚えて勉強ができることと、研究の開発能力は、X軸とY軸みたいなもの。
 両方備えていればいいが、まったく違う能力だから。



以 上