「食い逃げされてもバイトは雇うな」なんて大間違い
禁じられた数字〈下〉 光文社新書
山田 真哉
上巻で感じていた、哲学・理念の言及不足への不満は緩和されたが、下巻でもまだ
まだ不十分の感を受けた。
全般的には軽さが目だった。若手の入門書にはいいだろうが、経営者には物足りな
い書だといえよう。
【あとがき】より
☆ 数字のセンスの真髄とは、結局のところ下巻の終章でいった、複数の視点を持つ
ことだと思います。
ひと言でいえばそれだけなのですが、これが、なかなか身につかない。
特に、文字では考えられるけど数字になったとたんに思考停止してしまうという方
にとっては、
上巻の「数字を使いこなす」ことよりも、下巻の「数字に騙されない」ことのほう
が優先課題でしょう。
そこで、下巻は、数字に騙されない「考える力」ができるだけ早く身につくような
構成にしました。
「この数字の裏側は何か?」「計画に縛られていないか?」「会計・非会計のどち
らかに偏っていないか?」
「妙手はないか?」と順に考えていくトレーニング・マニュアル−それが下巻の実
体です。
数字のセンスを身につけるために、数字をとおして「考える力」をも鍛えるの
が、この上下巻の隠れた使命だったのです。
○ 「禁じられた数字」(事実だけれども正しくはない)より問題なもの
これは禁じられた数字が生み出される土壌にある。
特にビジネスの世界では禁じられた数字が生み出される土壌が顕著に存在する。
特に「計画」と」「効率化」で使われる数字は禁じられた数字である可能性が高
い。
・筆者はあとがきで、こう書いている
私は会計はもちろんのこと、計画や効率化が嫌いなわけではありません。
ただ、会計・計画・効率化は、一方では「禁じられた数字」を生み出す土壌であ
ります。
それを無批判で信仰する人たちに対して、強烈な違和感を覚えていた
● 準備された効率化は人や会社を豊かにするが、準備なき効率化は人や会社を疲弊
させる
形だけの効率化、数字だけを追っかけた安易な机上論では失敗することを
25店舗に減らしてベテランをリストラの例(仕入れが高くなってしまっ
た)で示している。
効率化の失敗の例
1990年代後半は、日本企業で新規採用が押さえられました。
なかには、新入社員ゼロの有名企業もありました。
その甲斐あってか、2000年代に入って企業の業績は回復し、新規採用も復活
したのですが、
現場では特定の年齢層(30歳前後)の社員がポッカリいないせいで、後輩への
知識や技術の
伝達がうまくできず、現場がダメになるといった会社が出てきました。
また、30歳前後の働き盛りの人材がいないせいで、その分、若手社員が余計に
働かざるを得ず、
疲弊している現場もたくさんあります。
○ 二分法
筆者は二分法で簡単に考えることを推奨している。
長期で高いもの、短期で安いものはOK
長期で安く、短期で高いものは要検討 という経理課長の3秒ジャの例を挙げ
ている。
これではなあ…、あまりに軽すぎると感じていたら、その後で
二分法はあくまで会計的視点 これでは半分
これを超える第三の道、すなわり「非会計的視点」=「妙手」を考え出すのが経
営者の仕事と言っている。
「Aを解決することで、ついでにBもCも解決する」
⇒
これこそWin-Winの道
そんなこと、みんな一生懸命考えているのである
「ついでに」というのもダメだな
一気に というのは私の感覚に近い
● 内部統制とビジネスのソリが合わない理由
科学的な会計から生まれた産物である内部統制と非科学的なビジネスは、どちら
かといえば
真っ向から対立する概念なのです
しかし、非科学的な光を当てることで、行動が効率化するなど、新たな効果も期
待できます。
⇒
会計 = 科学
ビジネス = 非科学
というまさに二分法で対立させているが違和感を感じる。
☆ 結局、ラーメン屋の店主はバイトを雇うのが正解?
「食い逃げされてもバイトは雇うな」というのは「会計の観点からしか見てい
ない短絡的な考え
「お客さんの回転数を増やす」
「少数の社員にたくさん働かせる」
「商品を絞って販売する」
という効率性重視の会計的な行動が経営を不安定にしたように、
「バイトを雇わない」という行動も経営を不安定にする可能性があるのです。
そして、その不安定要素を取り除くために、食い逃げの多いラーメン屋も
効率の悪い「非会計的な行動」をとらざると得なくなるかも知れないのです。
…
「食い逃げを許すラーメン屋」というルーズな印象は、長期的にマイナスに働く
でしょう。
また、「いま食い逃げ程度で済んでいるが、いずれはレジごと盗まれるかも知れ
ない」という
大きなリスクも存在するのです。
…
安定を重視する非会計の観点からは、「食い逃げされないようにバイトを雇
え」が正解になります。
…
「妙手」として、
バイトの人件費増加を売り上げ増加によってカバー
たとえば、もともと出前の多い店なので、これを強化するとか、バイトを使ってチ
ラシ作りやチラシ配りを行うことで
地元への周知徹底や配達エリア拡大を図るのです。
もしくは、ある程度お店を任せられるようにバイトを育てます。
これが成功すれば、店主には売り上げがアップしそうな新メニュー考案のための時
間的余裕ができます。
⇒ あんまり説得力はなかったが、考え方はわかった。
そんなにびっくりするようなものではなかった。
タイトルに釣られて2冊とも読んでしまいました。
この本は紹介してくれた姉川さんのように、立ち読みすべき本でした。