「日本語はなぜ美しいのか 」    

    黒川 伊保子  集英社新書


この本はヒューマンファクター仲間の札幌のS先生、神奈川のHさんと黒川先生との
不思議なメールグループのやりとり(2010年4〜5月)のなかで知り、購入して読んだものです。

その感想を黒川さんにお送りしたものを読後記として残しておきます。


この本を読んで、黒川さんの才能ぶりに感嘆いたしました。

キーワードとして、
「母語」
「発信体感」

この言葉は全く知らない言葉でした。
丁寧な解説でよくわかりました。
Hさんがまとめてくれていますね。


>母語獲得の経緯や重要性や、発音体感という言葉の本質が維持できている
> 日本語の素晴らしさがよくわかります。合わせて、西洋言語の生い立ちなど
> も例示しながら、幼少から英語教育に奔走することへの愚かさ、危険性の啓
> 発、遅遅と進まない西洋言語学界で理解されなかったことに対する切歯扼腕
> など著者の憤慨も、ひしひしと感じます。

黒川さんの発見がソクラテスにつながっていたということ。
それを研究者仲間から指摘されて、また学ばれ、そしてさらに自分の理論を構築さ
れ深化させているところがスゴイ!とうなりました。

P98
ヒトが最初に人生の最初に出会う、発音体感ということばの属性。
それは脳の認知構造の基礎に深く関与しており、ある意味、ことばの本質といってもいいものである。
それなのに、2003年、私が人工知能学会でこのことを指摘するまで、言語学の世界では、
ほとんど、「ことばの本質としての語感」は話題にならなかったのである。

P103
私は、大学での専攻は物理学科であり、一般教養の哲学概論の時間もほとんど寝て過ごして
しまったので、「発音体感がことばの本質である」ことを自分で発見した。人工知能の
研究者として、自分の赤ん坊が言葉を獲得していく姿を見ていたら、自然にわかったこと
である。
やがて、ソクラテスの言語論を知らないまま、「語感は、ことばの発音時の口腔内物理効果
である」ことを発見した。そしてソクラテスによる文字(ことばの音の最小単位)一つ一つ
への解説を知らないまま、音素一つ一つの口腔内物理効果を精査して、ことばの音素並びを
入力すると、発音体感のイメージ・グラフが出てくるプログラムを完成させてしまった。

 →いやー恐れ入りました。すごいです。

やがて、英国の研究者から、「このことはヨーロッパではソクラテスの時代から当たり前の古典的
テーマだ。あなたが発明者ではない」と指摘され、…。

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欧米人は確かに言葉の2400年前に本質は見つけていたが、言葉の真実にたどりつけなかった。
それは欧米各国語の起源がチベット高原ということ。
したがって伝わる間で、変化し「音韻」がズレてしまっているからだと。
それに対して日本語は、源の音韻が生まれたその場所で、音韻から素直に派生した言葉をそのまま
使っている。
そのことで、黒川さんはいとも簡単に「真実」にたどりつけたのである。
ソクラテスを超えた、それは日本人だから。いやーすばらしいです。

英語の祖先がチベットだなんて知らなかった。

そして東から西に伝わりやすいが、西から東には伝わりにくい。
脳は地球の自転と公転を感知している。
自転を感知しているから、東を向いた意識と西を向いた意識は違う。
東を向くと脳は活性化し、西を向くと意識は沈静化する。

住宅のことを書かれていましたが、これは自分でも発見しておりました。
高松市の西の国分寺町に住んでいましたが、
その時、昇る太陽に向かって出勤し、沈む太陽に向かって帰るから
西に住んで東に通うロケーションは最高だ!といつも言っておりました。

自転ということとリンクはさせず太陽に向かってと思っていましたのですが
結果的には一緒だったようで。

ただ現在は高松市の東へ引越して逆になっており、ちょっと複雑な心境で
す。(笑)

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● 残念なのは母音認識の言葉が非常にマイナーであり、世界の人にはわかってもらいにくいこと。
 外国語は子音認識であり、母音は雑音として処理されてしまうと知って唖然としました。


子供の脳の成長については、当社は若い女性が多いのおおいに宣伝しておきます。

(40人ほどの営業本部ですが、この7月に産休が5人となり頭を抱えています。
 しかし将来の日本のために、黒川教の信者としましては、やさしく接したいと思います。
 また社内結婚のダンナも教育しておきます)

今月の電気協会報の「真の夫婦の対話」もこの話しに関連しておりニヤニヤしておりました。
  「30代の妻の絶望と、80代の夫の絶望。」


○ 脳は3歳児までに言語構造の基盤を作り上げる
   母親の発音体感に共鳴することで、全身でことばを捉えていく時期
  3歳までの子と母は、満ち足りた精神状態の中で、本能に従って行動すること。
  それしかない。
   → だから妊婦や若い母親には気持ちが嬉しくなるようにしてあげましょう

○ 4歳〜7歳
  ことば、所作、意識の連携を学ぶとき。
  音楽、アート、ダンス、スポーツなど、身体性を伴う稽古事の開始適齢期。(右脳系の稽古事)
  暗記型の外国語教育は明らかに時間の無駄。

  以上8歳になれば、母語の構造は完成する。
  しかしまだまだ母語の完成のためには修行が必要と黒川さんは説く。

○ 9歳〜11歳
  コンピュータのOSのようなもの。
  この3年間は、感性と論理をつなげ、豊かな発想と戦略を生み出す脳に仕上げていく。
  12歳以降に手に入れる知識は単なるデータファイルにしか過ぎない。
  つまり、脳の性能を決める大事な3年間なのだ。(脳のゴールデンエイジ)
  本人にその意識はなく、一生懸命遊び、本を読み、勉強したり、ゲームしたり、友達と喧嘩したり
  仲直りしながら、その過程を踏んでいく。

   →初等教育の重要性を痛感しました。我々(黒川さんはだいぶお若いですが(笑))の小学校教育は
    土曜日まであり、よい教育を受けたと思います。
    TVもそれほど見ておらず、携帯やパソコンもなく、脳にとってよい時代だったのではないかと
    思います。睡眠時間もしっかりとっておりました。 感謝!です。