「老いる東京」
佐々木 信夫 角川新書
(内容紹介)
首都・東京の生活都市としての寿命は待ったなし。
待機児童・高齢者対策に加え、建設から50年以上経つ道路や橋などインフラの劣化も進んでいる。
深刻化する東京の諸問題に、都政を長年見てきた著者が切り込む。
(著者紹介)
1948年生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科修了。
法学博士(慶應義塾大学)。
東京都庁企画審議室等を経て、中央大学教授。
専門は行政学、地方自治論。著書に「東京の大問題!」など。]
タイトルに惹かれて読んでみたがイマイチぱっとしなかった。
筆者もあとがきでそう書いている。
問題点の洗い出しはできているが、その解決策がイマイチぴんと来ない。
東京中心で書かれてはいるが、実は日本の高齢化の将来の展望がまったく見えていない
憂いの書である。
解決策はJR民営化の成功を手本とし、10州2都市州といった広域圏の自立が切り札になると説く。
私も道州制には賛成である。
最近どうして話題にならなくなってしまったのだろう。
県単位ではなく9電力区域をベースとした道州制はいいのではないかと思っている。
ただそれが切り札になるかどうかというのはわからないが。
「老いる東京」「劣化する東京」議論は、じつは「老いる日本」「劣化する日本」という全国につながる話でもあります。
その先駆けが東京であり、事態が深刻化するのが東京だというだけの話です。
⇒ 高齢化の将来は真っ先に四国に来るとみている。さきがけが東京というのはおかしいと思った。
バラマキに頼らない自立できる社会を作らないと日本はつぶれてしまう。
その危機感をあおられる書ではあった。
多摩地区
東京都の人口の三分の一が住む多摩地区の人口は419万人で、5年前より少し増加していますが、
増加率は区部に比べて鈍化しています。
多摩地区の中でも奥多摩町や檜原村など町村部(郡部)は1995年以降、減少が続いています。
東京とは現在23区・26市・5町・8村の62区市町村
面積は2190平方キロで日本の0.5%に過ぎませんが、国民の1割を超える人たちが住んでいます。
3.5%の面積の1都3県に国民の約3割が暮らす状況です。
戦後一貫して唱えられてきた地方分散は実現するどころか、「東京一極集中」は未だ衰えていないのです。
◎保育所は廃校舎の利用で
筆者は思うのですが、東京都心部ほど子どもの減少により小中学校が廃校になる率が高い。
それならば、保育所は既設の小中学校で増えている「廃校舎」「空き教室」を改装して使ったら
どうかということです。
すると、学校には文部科学省系の補助金が入っており、厚生労働省系の保育所に転用すると
補助金の流用になるからダメとの役所風の答えが返ってきそうですが、
市民ファーストの視点からするとその回答はおかしい(国も含め)。
⇒まったく同感。少子化に伴い、廃校舎は増えるのでこれを利用しない手はないと思う。
◎家事労働をGDPに
自宅での子育てをやめて、保育所、託児所に子どもを預け、自ら保育士として働き始めるとそこでもらう賃金は
GDPに反映され、見かけ上GDPは増えます。
同じように、自宅での料理を減らし、外食をする機会を増やすと、GDPは増える計算になる。
どこかヘンではありませんか?
……
女性の家事労働が正当に経済評価されていないのです。
そこで政府に提案したい。女性の家庭内の家事労働を一定のモノサシで経済計算し、GDPに織り込んだらどうかと。
するとそれだけで日本のGDPは500兆円から580兆円に増えます。
これで安倍さんの成長戦略は成功したなどと言ってもらっては困りますが、
しかし外で働くことだけが労働評価の対象という考え方を変えるキッカケになるのではないか、
そこから「働き方改革」は始まる、筆者はそう思うのです。
⇒なかなか面白い考え方だと思った。
●インフラ老朽化
↓この事故は記憶にない。具体的地名を載せていないのはよくないと思った。
耐震補強もできないほどに老朽化していた首都圏の市役所の一部が、前触れもなく倒壊したのだ。
玄関ホールと天井と2階の床の崩落は、2階とホールにいた市長、職員、住民を巻き込み、
死者60名、重軽傷者145名の大参事となった。
新設された家族手当の説明会に参加した住民のうち、20名が死亡した。
2階の大会議室で会議中の市長、副市長も殉職した。
建築後60年を経過していた庁舎の建て替え議案を、議会が3度にわたって否決したことが報道された。
「他の地域にはもっと古い庁舎があるのだから、今は必要ない」というのが表向きの理由だった。
だが、実態は、議会の多数を占める反市長派が、市長提案のすべての議案に反対していたにすぎなかった。
皮肉なことに、市議会議長も事故に巻き込まれて死亡した。
議員たちは口々に「反対は議長の意向であり、自分は本意ではなかった」と公言した。
⇒ネットで調べるのだが何市のことなのか判明していない。
●木造住宅密集地域の危険さ
関東大震災や第二次世界大戦の被害を受けず、高度経済成長期に無秩序に建物が造られたのが原因。
東京の山手線の外周部に沿って帯状に広がっています。
東京都が「木密」としているのは、空き地や耐火建築物の面積割合「不燃領域率」が60%未満の
16000ヘクタールです。
特に建物の倒壊や火災危険度が高い計28地域7000ヘクタールを「整備地域」
その中でも計11地域2400ヘクタールを「重点整備地域」として
区画整備などをしかけ、新たな街になるよう取り組んでいます。
⇒ これは知らなかった。
「木密地域不燃化 10 年プロジェクト」実施方針 H24年