「終わった人」
内館 牧子 講談社
家内が面白くよんだと言うので回されてきたが、今回ばかりは不快感が残って重い気持ちで読み終えた。
ハッピーエンドのようなエピローグで終わっているが、私には今後何の夢もないような終わりかたであった。
仕事で成仏していない田代のもがき。
スーツが息をしている。
銀座のママさんが言ったセリフが強く印象に残った。
田代が鈴木の会社の顧問に就いた日の帰りに立ち寄ったクラブのママが
「再就職決まったんじゃないの?」
と見事にいい当てた。
わかった理由が「スーツが息をしている」であった。
「仕事を離れて、スーツにふさわしい息をしていない男には、スーツは似合わなくなるのよ」
だそうであり、さすがに銀座もママさんに言わしめるセリフと感心した。
きらりと光ったのはここぐらいで、
あとは子会社専務を63歳でリタイアしてもがく田代の
プライドと意地と奥さんとの軋轢のストーリーは苦痛であった。
拾ってくれた鈴木社長の突然死で顧問から代表取締役社長に。
そして海外での事業の入金が入らず、倒産。
代表取締役として多額の負債を抱えることとなってしまった田代。
鈴木社長が元気だったらあと一花咲かせていたことだろう。
きっと。
気の毒であった。
奥さんの千里も娘の道子もキツイ。