「清明」 隠蔽捜査

    今野 敏   新潮社


  



【内容紹介】
  神奈川県警刑事部長に着任した異色の警察官僚・竜崎伸也に、警視庁との軋轢、公安と中国の巨大な壁が立ちはだかる。
  一方、妻の冴子が交通事故を起こしたという一報が…。『小説新潮』連載を単行本化。



今回から竜崎は横浜県警の刑事部長に異動。
書き出しが建物の描写で、円盤を埋め込んだようなデザインだが文京区役所ほどのインパクトはないと書いてあり
どんなものかとネットでみたら、横浜県警は関内の海沿いに建っており、確かに小さな円盤が上部にあるのがわかった。
そしてそれがこの表紙の絵だと知った。

相変わらず竜崎はマイペースで、人を引き付けていく。
まず誰彼、彼を一瞬で信用できると思ってしまうのだ。
唯一、奥さんの冴子さんが自動車教習所へ訓練で行ったのだが、物損事故を起こしひと悶着あったが
その教習所の所長滝口が県警OBだったのだが最初は決裂したが、
その後、後輩からその人物評を聞き、今回の捜査で滝口を力を素直に借りた竜崎に滝口もすっかり溶け込んでしまう。

犯人の中国人諜報員も竜崎を信用して自白してしまう。

いつも隠蔽操作の竜崎にはスッキリさせてもらえる。
家内も大ファンで今回も大喜びして読んでいた。

今野敏もこれだけ言いたいことを竜崎に言わせて書いていて痛快だろうなあと強く感じる。
作家冥利につきる作品だろう。


清明は漢詩であった。
わたしは漢詩が大の苦手。
もう漢字ばかりでいやになるが、今回もちゃんとやさしく解説してくれて理解はできた。

清明についてはWEBから引用する。

と思ったがm最後に中華料理店のテーブルに刻まれた席で家族で食事をする場面での解説を引用しておく

竜崎は、以前滝口から聞いた詩の意味を思い出しながら解説を始めた。

清明の季節(4月上旬)なの、雨が降り続いている。
すっかり滅入った旅人は、酒でも飲もうと通りかかった牛飼いの少年に尋ねる。
この近くに酒屋はないのだろうか。
少年は遥かかなたの、杏の咲く村を指さす。

美紀だけでなく、冴子も聴き入っている。
詩の解説をしながら、竜崎は春雨に煙る、みずみずしい光景を頭の中に描いていた。
それはしばし現実を忘れるくらいに美しく、どこか懐かしかった。

いいエンディングであった。




以上