「組織戦略の考え方」

- 企業経営の健全性のために-

  沼上 幹  ちくま新書



若手に薦められた本だが、これは×だった。
柴田昌治さんはすばらしかったのですが。
 
机上のロジックであり、しかも人間を信じていない根本がある。
大学から一歩も出ていないことも、頭で考えることに陥っているのだろう。
ところどころいいことを書いているが、根本的なところで人間力がない。

まあ、それでも付箋をつけたページは書き残しておこう。

● 「ルーチンワークは創造性を駆逐する」
ハーバート・サイモンの言う意思決定のグレシャムの法則 (計画のグレシャムの法則)

そもそも人間は、目の前に大量のルーチンワークを積まれると、その処理に追われ、
創造的な仕事を後回しにしてしまう傾向がある。
創造的な仕事とは、仕事のやり方自体を根本から変えるとか、長期的な展望を描いてみるといった作業のことである。

これは別の本でも読んだ。

「人はなぜ失敗するのか」 ディートリッヒ デルナー (著),

ある女性市長役は、学校問題にすべてを集中した。最後には14歳の少年の問題にかかりきりになった。
この市長は自分の能力を基準に問題を選んでしまった。彼女は解決しなければならない問題ではなく、
解決方法を知っている問題の解決を選んだのである。



● 会社と自己実現

近年では会社は皆が「自己実現する場」であると勘違いしている若手が多い。
バブル崩壊後の危機的な状況下でも、リストラの危機感がない若い世代にはそう思い込んでいる人が多いようである。
会社は、しかし個人の社員が自分の生きがいを追及する前に利益を上げていなければならない。
きちんと経営されていないとならないのだ。

⇒ このあたりも浅い。自己実現を何か勘違いしていないだろうか。
  これはマズローで一番大事なのは承認欲求であるとしている姿勢からもわかる。
  非常にむかつく表現であった。

  まだ、養老孟司さんの言い方ならわかる。(脳と魂)
  
   日本には個の哲学がないところになってその「個性」というものを持ち出してきたんです。
   この間、僕、職安の垂れ幕見て怒ったんだ。
   「自分にあった仕事が見つかるかもしれない」ってでっかく書いてあるんだよ。
   ふざんけんじゃねえって。俺なんか仕事に合わせるのにいかに苦労してきたか(笑)
   仕事ってのはお前のためにあるんじゃなくて、世の中が上手に動いていくためにあるんだから、
   てめえに合った仕事なんて、ふざけたことを言うんじゃねえって、ほとんど小言幸兵衞になっちゃったんだけど。
   僕は、一応これでも教育関係の畑なんだけど、暗黙のうちに考えてきたことは、
   人間は当てにならないし、変わるものだということですよ。

   ポイントはここ
    「仕事ってのはお前のためにあるんじゃなくて、世の中が上手に動いていくためにあるんだから」

   この発想がなく、会社は利益を上げないといけない。それが一番大事と説く。
   しかし会社は何のために存在するのか?その本質のために、利益を上げるのが手段になるのである。
   経営学者っていう連中には「理念」が不足している。

この後でもさらに書いている。
本当なら会社の資源を使って自己実現させてもらえるような人材は、ほんの一握りのはずなのに
バブル期はあまりにも多数の人々にその機会がばらまかれたのである。

 ⇒プロジェクト=自己実現 という短絡思考は情けない。
 

◎ 決断こそ経営者の仕事  (決断できる人材不足)
 ⇒ この部分の主張はそのとおりだと思う

決断が不足する組織に現れる兆候

 ・ フルライン・フルスペック要求
   (全方位全面戦争型)
    成長率、新製品導入率、ブランドイメージ、粗利益率、売り上げ数量等々、競争相手と同等
    かそれ以上を書き記しているような戦略計画が出てきたら、何も考えていないことの証である。

    ⇒ そのとおり!

 ・ 経営改革検討委員会の増殖
    経営者が自分で決断できない証
    経営者からすると、何本ものプロジェクトを次々と身の回りで起こしているのだから
    一見、「自分は経営者らしくいろいろ決断している」と自己満足しそうな状況である。
    しかし現実にはその経営者の周辺にいる中堅や若手が忙しくなるがけで、何も決まらないことが多い。
    経営者自身は、検討委員会の設置を決めただけであって、会社をどの方向に向けるのかを決めたわけでは
    ないからである。

 ・ 人材育成プログラムの提案


◎ 権力、パワーの源泉

  @ 賞罰のパワー
  A 正当性パワー 部下が悩まず素直に従う
  B 同一化パワー この人のためなら
  C 情報パワー

 現代社会のように環境が複雑で不確実であれば情報パワーが最も重要となる。

    
 
これくらいにしておこう。 

 以 上