「これが正しい温暖化対策」
杉山 大志 [編] エネルギーフォーラム
杉山さんは若いけれどもこれまでにあまり見たこともないタイプの
電中研の研究者である。
しっかり自分の意見を話し、それをやさしくていねいにわかりやすく説明できる。
非常に説得力を持った人物である。
同じ電力業界の人間としては頼もしい人物である。
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第4次評価報告書の統合報告書主著
者も務める。
高松で電中研未来エネルギーフォーラムが開催されるということで対応責任者とし
て
杉山さんの話を、東京で初めて聞いたときの印象であった。
そしてこの話は是非みんなに聞いてもらいたかった。
ここで聞いたこの言葉がよかった。
コレ、いただき!
◎ 炎を電気へ (それで地球環境を守る)
標準シナリオ
確実なトレンドとしての電化拡大の延長戦上に位置するものであり、
さらに一層の政策努力によって、ヒートポンプなどの電気機器技術の開発・普及お
よび
省エネルギー化が推進され、電気のCO2原単位の低下を通じて、日本全体の温室
効果ガス
の排出削減が行われる。
2015年、バッテリー技術の進歩によって、プラグイン・ハイブリッド自動車が
導入されます。
石油・ガス価格は2006年の水準(バレル50〜70ドル前後)で高値のまま推
移し、
採算性が低いことから化石燃料の分散型コジェネレーションは衰退します。
利便性の向上および機器コストの低下によって、全電化住宅は新規着工住宅の標準
形となります。
2020年頃から、コストが2円/kWh程度でのCO2回収処分型発電技術の利用
が世界各地で
進み始め、それ以降に新設される火力発電所の標準形となっていきます。
各国の個別普及策に加えて、国際的な枠組みも出来上がり、同技術の世界規模での
普及が
進みます。これにより、発電部門からのCO2削減が容易になったため、電気利用
を通じて
温暖化を防止するという方向性が世界的なコンセンサスになります。
2030年、日本でもCO2回収処分の技術と経済性が確立し、火力発電所・製鉄
所の新設時に
導入されるようになります。プラグインハイブリッド自動車に加えて、本格的な電
気自動車の
普及が始まります。
2050年、高速道路において電車のように電力供給を受けながら自動走行を可能
にする集電・自動
運転システムが導入され、高速道路においてプラグインハイブリッド自動車や電気
自動車、
そしてハイブリッド長距離トラックなどの電気走行が始まります。運輸部門はこれ
以降、
電化が大幅に進みます。
◎ 経済活動と温暖化対策を調和させるシナリオ
上記のシナリオには3つの重要な要素がある
1 電化による削減
電気は、便利・安全・クリーンであり、ITなどの技術進歩も急激であるため、
その利用は拡大する。電気によって他のエネルギーが置き換わることで、CO2が
削減される。
2 省エネ技術の進歩
すでに進んでいる電気機器の省エネを一層進める。
3 CO2原単位の低下
CCSや原子力発電のより原単位の低下
この3つを可能にする根本は、活力ある産業と技術革新。
そして、これこそ日本の得意とする分野なのである。
温暖化防止のためにもっとも重要な、革新的な技術開発のためには、世界でも類を
見ない
日本の製造業クラスターが非常に重要な役割を果たす。
● 排出権の弊害
日本(や韓国、中国)はものづくりの国。
この観点から、産業部門の排出総量を規制する排出枠という考え方は国益を損ね
る。
国内の工場立地を鈍らせ、結果的に技術開発活動にも悪影響を及ぼす。
また、排出権市場のもうひとつの弊害は、企業行動に与える影響。
排出権市場があると、企業の温暖化対策担当者の主な仕事は、排出権の売買になっ
てしまう。
本来であれば、企業には、どのような技術開発を進め、どのような省エネルギーを
実施するか
といったことを検討して欲しい。
排出権市場のもとでは、設備更新は停滞し、技術開発はかえって進まなくなったと
いうのが
米国のSOX排出権の例でもわかっている。
⇒ まったくそのとおりだと思う。
日本が目指すべきは、「国内で技術開発に投資して、それを世界中で使ってもらっ
て世界規模での
温暖化防止を目指す」というもので、京都メカニズムでの「排出権は購入するが技
術開発はしない」
ではないのです。
京都メカニズムは封殺する。
その代わりに、目標の法的拘束力のニュアンスを弱めることが重要。
また、部門別・ガス別に実施可能性をできるだけ詳細に検討したうえで目標設定す
ることで、
不適切な数値目標設定を避けるべき。
日本として当面国際交渉へおいてなすべきこと
・道徳的優位の確立 (長期的な目標を宣言してしまう)
・部門別・ガス別の議論の深化
・省エネ制度形成支援の強化
★温暖化防止政策の原則の確認
第一 長期的な大規模排出削減のための3本柱
省エネ技術の開発普及
電気へのシフト
発電CO2原単位低減
第二 PDCAを回して政策を改善
第三 技術開発普及については、複雑な相互連関がある
(例:携帯電話でバッテリー性能向上など)
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以下は私の思いである。
◎ 炎を電気へ (それで地球環境を守る)
炎を電気に変えれば、地震時に「火を消せ!」がいらない。(See
attached
file:
温暖化対策.txt)
地震では火災が大きく被害を大きくする。(関東大震災)
電気に変えれば、地域の人々の安全を高めることができる。
温水器は保水効果があり、いざというときの飲料水になる。
(そういう用途ができる改良をすべき)
防災対策に力を入れよう。
電気自動車はリチウム電池のおばけ、重い。この弱みを強みに変えればよい。
蓄電池が外を走っていると思えばよい。停車中は常時プラグインで家庭用非常用電
源にもなる。
そう家庭用非常用電源として活用できないか。
オール電化(車も含めて)家庭は防災力を有するのである。
これこそ、電気を売るのではなく、電気のある豊かで安全な健やかな時間を提供で
きることにつながる。
(佐治敬三伝より)
佐治敬三は酒だけを売ろうとしたのではない。
その酒がある生活を売ろうとしたのだ……。
30年前と大きく変わったのが人のこころ。
こころの豊かさは昔の方が上だった。
物質的な豊かさだけを提供するのではなく
安全な電気を送ることによって人々の心をゆたかにしたい。
新しい発想やくつろぎのある時間を提供する。