「歴代首相のおもてなし」
 晩餐会のメニューに秘められた外交戦略

  宝島社新書  西川 恵 (毎日新聞社 客員編集委員)


  


おもしろそうなタイトルで興味を魅かれた。


まず筆者が男性なのか女性なのか、キャリアをみてもわからない。
どうも男性のようだが…。

ネットで調べてみると……。

やはり男性でした。 ⇒ 参照


印象に残ったのは小泉さんのワイン好き、
沖縄サミットの日本酒とワインのブレンド、
プーチンのふるまった1985年のワインなど
であった。

第5章 小泉首相の「感動」饗宴

小泉氏が自民党総裁へ選出されたときのお祝いのお酒の届け出の注文で
フランスの赤ワイン シャトー・シュヴァル・ブランが多くあった。
小泉首相のワイン好きはつとに有名である。
社団法人「ソムリエ協会」認定の名誉ソムリエの第一号となったのが1989年。
98年にはボルドー地方のメドックとグラーヴにワイン騎士団に、
翌99年にはブルゴーニュ地方のポマール・ワイン騎士団に叙任された。
それではなぜシャトー・シュヴァル・ブランなのか。
それは同氏の誕生年と関係している。
シュヴァル・ブランはフランス語で白馬。
小泉氏は42年生まれの午年。午と馬をかけただ。
ちなみにシュヴァル・ブラン(白馬)という洒落た名前がついたのは、
16世紀末、宗教戦争を収めたアンリ四世が白馬に乗ってブドウ園近くのシャトーの前身の旅籠に
一夜泊まり、ワインを楽しんだ伝説に由来する。


第3章 森首相−沖縄サミット晩餐会

森首相は石川県だが、鹿児島の焼酎森伊蔵を贔屓に。
(これは、「もり、いいぞう!」と応援してくれるから飲むとのこと、なるほど)
日本食びいきのフランスシラク首相もすっかりファンになったようである。

沖縄サミットの晩餐会が素晴らしかったようだ。これに対して洞爺湖サミットはイマイチ。
これは総合プロデューサーが存在の有無が大きかったようである。

沖縄サミットの晩餐会で出されたお酒
日本酒 「調和」  EUの委員長を加えた9首脳にあわせ全国の9銘柄のブレンドを白ワインの代わりに用意
赤ワイン「八重山」 出席首脳8か国のワインのブレンド
食後酒 泡盛古酒  9首脳の平均年齢56.7歳に合わせたもの

このコンセプトは
沖縄(食前酒)から出発して、沖縄を包み込む日本(乾杯のスパークリングワイン、前菜と魚料理の日本酒のブレンド)、
そして日本を包み込む世界(赤ワインのブレンド)へと広がり、
食後酒で再び沖縄(泡盛古酒のブレンド)に戻る物語である。
全体を貫くメッセージはブレンド(調合)に託した「21世紀に向けた世界の調和」だ。
  → 実に素晴らしい
  

第12章農水省が参画した日本食の宴
 ・ロシアプーチン大統領が出した1855年のワイン

プーチン大統領が安倍首相をクレムリンで歓迎した昼食会 2013年4月末
「午餐会兼ワーキングランチ」
参加者両国あわせて60名

「日本の皆様に日露通好条約が締結された1855年のワインを用意しました。
日ロの今後を祝してソーテルヌで皆様と乾杯したい」

158年前のワインにどよめきが起きた。
この日露通好条約で、日露両国は択捉島とウルップ島(得撫島)の間に国境線を
引いて、国境を画定した。
ソーテルヌは、フランスのボルドー地方に含まれる一地区で、甘口の白ワインの代名詞
にもなっている。収穫を遅らせ貴腐菌の付いた状態のブドウで仕込んだワインだ。
この甘さゆえに瓶内熟成を続け、158年たっても劣化しない。
出席者たちの口内には、濃厚な蜂蜜にも似た、ねっとりとした甘さが広がったに違いない。

 →これには驚きました。

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これ以外では、料理のメニューの中に
日本酒に知らない銘柄がいくつか出てきたのでこれは一度飲んでみないとと思った。

ワインはとても手が届くようなものではないし、まったく価値がわからないので
チンプンカンプン。

でもワインというのは年号があるので、もてなしのときにはそのお客様に光の当たった年のワインで
ふるまうというのは心がこもって伝わるなー。
これってワインのいいところだなーと感心。前述のプーチンの出したワインなどまさにその典型であろう。
味だけでなく地理、歴史も一緒につまった饗宴の重要道具なのだと理解。


私にはわかる日本酒だけをおっかけてみた。


獺祭(山口)
久保田 洗心(新潟)
磯自慢 (静岡) ●
賀茂鶴(広島)  ●
久保田 萬寿(新潟)
飛露喜 (福島) 
東光 (山形) ●
田酒 (青森)
醸し人九平次(愛知)●
和く輪く (京都)●

●印の酒を知らなかったが、先日醸し人九平次は飲むことができた。

フランスへ売り込んでいるお酒 2012年キャメロン首相の歓迎夕食会(野田首相)に出た日本酒 
おこぜの刺身に合わせて飲んだが最初に飲むにはちょうどよかった。
フルーティな香りと味わいであった。


国賓と公賓についてもよくわかった。

日本が招く国賓は基本的に年2人だけで狭き門。
宮中晩餐会が国賓に対してだけ与えられる儀式性の高いイベントで、政治とは切り離した
友好・親善を目的としている。
国賓は10年以上たたなければ改めて国賓としては迎えない。

国賓に次ぐ高い訪問形式が公賓。
元首でも国賓での訪問でない場合は公賓扱いになる。
これも友好・親善を目的としている。

国賓や公賓でない場合、公式実務賓客としてか、単なる実務賓客としての来日となる。
この2つは、会談や政治的協議などが目的の実務的な訪問である。

国賓のときは、国賓が宿舎とする迎賓館、もしくは皇居のいずれかで、天皇、皇后両陛下、
皇族、首相、閣僚らが出席して歓迎式典が行われる。

これに対して公賓、公式実務賓客の歓迎式典は首相官邸で持たれるのである。

皇室は洋食でもてなすことが基本。
官邸では、和食も出され、近年は和食中心で日本の農産物をアピールできる場となっている。
「日本の首相官邸は日本の食文化の発信基地」なのである。
安倍首相の指示で農水省も饗宴に関与するようになって変わってきたようである。
「全日本・食学会」なる学会も誕生していることを知った。
農水省とこの食学会の連携による日本食文化のアピールは安倍首相の外国訪問に際しても展開されている。


以 上