「高千穂伝説殺人事件」
内田 康夫 光文社
10月3日に家内と高千穂へ行ってきた。
家内が九州で行ってみたいところとして宮崎の高千穂と鹿児島の知覧。
博多からの日帰りでは高千穂しか選択肢がなかったので今年は高千穂としたのであった。
私は高千穂が宮崎県とも認識しておらず、家内に言われるまでまったく知らなかったのであった。
現地ではとても歩いて回れないないので、観光タクシーを使ったが
4時間ほどで回れたし、案内も聞くことができたので本当に良かった。
12000円なら安い。
そもそも博多からどうやって行くのかと思っていたがまさか熊本経由とは驚いた。
熊本までの時間のほうが高速道路のせいで熊本から高千穂までの時間よりも短いのである。
高千穂峡、国見ケ丘、高千穂神社、天岩戸神社、天安河原と回った。
荒立神社は工事中で行けなかったのが残念。
ということで、家内から高千穂伝説殺人事件を読んでみたらと言われて
早速帰ってから図書館で借りて読んだ。
やはり現場を回ってきた直後だけにシーンが思い浮かんで楽しかった。
ただ出てきたのは主として高千穂神社、そして高千穂峡だけであったのが残念。
でも神話の話は観光タクシーの運転手の説明で聞いていたのでよく理解できた。
この小説ではまだ鉄道が走っていたと知る。
1986年の書き下ろしなのでそのころは走っていたんだなー。
まずもって最初のシーンがこの鉄道への飛び込み自殺シーンから始まる。
また高千穂が2つもあるというのは知らなかった。
ガイドさんは何も言っていなかったので。
高千穂のことはこのくらいにして小説のことに触れておかねば。
プロローグが浅見光彦と美人ヴァイオリニストの本沢千恵子の見合いから始まる。
その後、事件が起きて父の失踪で千恵子が高千穂へ飛ぶがなかなか浅見との話が
始まらない。
100ページくらいでやっと二人が再開して展開急となる。
内田康夫らしくやはり昔の話がつながってくる。
父の残していた留守録電話
「イスルギですが、例の件について報告します。
ブツはニュータバルからタハチホへ運びました。
運んだのはノベウンで、受け取ったのは市川という、40歳くらいの
人物だったそうです。
夜だったので、場所ははっきりしなかったとのことです。
以上です。報告終わります。
あはははは…」
この解明がカギに。
ニュータバルが宮崎県新富町の「新田原」で航空基地の町であるとはビックリした。
ここで、ノベウン、市川、ブツがつながるのであった。
市川老人とその弟子長田の口上が言いたかったことなのかも知れない。
長田の夜神楽での口上を書いておこう
次にご覧いただくのは、イザナギ・イザナミ両神による国生みの舞であります。
この国生みの思想は、旧約聖書におけるエホバの天地創造と似通ってはおりますが、
たいへんな相違点があることを「かんがえなければなりません。
なんとなれば、西洋の神は人間を作った −− つまり、われわれが人形を作るが
ごとくに作ったというのに対して、わが日本の神は、ご自分のお体を痛められて、
我々をお生みになったのであります。
すなわち、私ども日本人は神の御子なのであります。
私たちは自身が神である。いや、人間ばかりでなく、この国土も、木も草も動物も、
この世にある森羅万象すべてに神の御霊が宿っているというのが、わが日本古来の
自然感なのであります。鎮守の神、産土(うぶすな)の神、氏神様と呼ばれる太古
からの神々は、現代もなお、私たちの意識の底に生き続けているのであります……
しかるに、人々は自然を破壊し、神々を冒涜しつづけております。
そして祭りを忘れ、神々への感謝をないがしろにしているのであります。
いま日本は経済の繁栄に浮かれて騒いでおりますが、その反面で、心の荒廃は
極度に進んでおります。
機械文明の行き着くところ、やがて目的を失ったロボットのごとき人間の
索漠とした社会が待っておりましょう。
われらが遠き親たちが守り伝えてきた祭りの灯がこの日本から消える時は、
日本の神々の死を意味し、国はその守護神を失うことになるのであります…。
楽器のことでマンドリンを壊した家内へ伝えた記述があった
千恵子は夏は嫌いでないけれど、暑さと湿気は極端に敬遠する。
それはヴァイオリニストの職業的な一種の性癖のようなものである。
ちょっとでもヨーロッパの気候を体験した者ならわかることだが、
日本の高温多湿の楽器に与える影響のひどさはほとんど壊滅的だ。