「帝王学」
山本七平 文芸春秋
会社の上司のI常務から「貞観政要」を読みなさいと言われて読み始めています。
その趣旨は、中国史に詳しい常務は、中国一の名君といわれた唐の太宗のことを勉強しろということらしい。
私は漢文は大の苦手。
ということで山本七平さんの帝王学(文芸春秋)を読み始めた。
貞観政要は3分の1だが、その部分だけポイントを書いておく。
「HS」と「CS」のエッセンスと言ってもいいのではないでしょうか?
「六正六邪」のところでは、競馬をやるのは邪だそうで、わたしは失格ですわ。ははは。
余暇はもっぱら競馬・競輪・遊里という人も信用できないし…。
との下りがあります。
私は競馬の友はとても信頼できると思っております。
太宗は最後の直臣の意見をよく聞いた。
諫言を職務とする「諫義大夫(かんぎたいふ)」という人を置き、
諌めてもらっていたのである。
その諫義大夫の「魏微」がこの六正・六邪を説いたものである。
[四国の井崎塾生のレス]掲示板より 2006年12月16日 NINO
「貞観政要」は帝王学の原典ですね。以下の部分が印象的です。
太宗が重臣の魏微に明君と暗君の違いを尋ねると、
「君の明らかなる所以の者は、兼聴すればなり」との答え。
つまり明君は広く臣下の意見に耳を傾ける。
暗君はお気に入りの臣下の言うことしか聞かない。
明君は下々の者の意見にまで耳を傾け、そこから教訓を引き出して
自分を戒める。
研修企画を担当するなかで、会社文化を変える10大機能を学びました。
その中の
“経営参加促進機能”(トップやミドルが聴く耳を持ち部下に積極的に発言させること)
“コミュニケーション効率化機能”(上下左右の心理的距離を縮め情報経路や伝達手段を単純化すること)
の2つの機能とも通じるものがあるなと感じました。
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貞観政要ではこんな立派なHPも見つけました。
http://homepage1.nifty.com/hihasui/jouindex.htm
● ポイント抜書き
はじめに (抜粋)
本書を傍らに置くということは、常に、遠慮なく厳しく注意してくれる人を傍らに置くようなものである。
何となく皆が、周囲に逆らうことや、マスコミに叩かれそうなことは言わなくなった現代は、
まさに「相惜顔面」の時代かも知れぬ。
こういう時代こそ、諫言・直言・苦言を傍らに置くことは、各人にとって、特に権力・権限のあるものにとって、
必要不可欠のことであろう。- 特に終わりを全うするために。
○ 創業よりも守制が難しい
山頂をきわめたと思ったら、それが断崖絶壁の上の台地で、そこから「遠き道を重荷を負うて」
歩み続けるという状態になる。
北欧の諺に「持ち上げるのは簡単だが、持って行くのは困難だ」というのがあると聞いたが、
似たような状態であろう。
では、どうすればよいのか。持続と維持の方法は、平坦な台地にたどり着いたら、
そこでゆっくり休んでいればいいのか。それても今まで通りの登山的な「創業的行き方」の努力をそのまま続けて
行けばよいのか。どちらもだめで、それまでを継続するまえにまず、「創業的体制」を「守成的体制」に切り替えなければ
ならない。だが、これ自体すでの問題である。というのは、創業の能力者は必ずしも守成の能力者ではないから、
功のあったものをそのまま横すべりさせてはならないからであり、そこでの処遇をどうするかという問題がでてくる。
六正
「聖臣」
きざしがまだ動かず、兆候もまた明確ではないのに、そこに明らかに存亡の危機を見て、
それを未然に封じて、主人を、超然として尊栄の地位に立たせる
「良臣」
とらわれぬ、わだかまりなき心で、善い行いの道に精通し、主人に礼と議を勉めさせ、
すぐれた計りごとを進言し、主人の美点をのばし、欠点を正しく救う
「忠臣」
朝は早く起き、夜は遅く寝て勤めに精励し、賢者の登用を進めることを怠らず、
昔の立派な行いを説いて主人を励ます
「智臣」
事の成功・失敗を正確に予知し、早く危険を防いで救い、くいちがいを調整してその原因を除き、
災いを転じて福として主人に心配させないようにする
「貞臣」
節度を守り、法を尊重し、高給は辞退し、賜物は人に譲り、生活は節倹を旨とする
「直臣」
国家が混乱したとき、諂(へつら)わずにあえて峻厳な主人の顔をおかし、
面前でその過失を述べて諌める
六邪
「見臣」
官職に安住して高給をむさぼるだけで、公務に精励せずに世俗に無批判に順応し、ただただ周囲の情勢をうかがっている
「諛臣(ゆしん)」
主人の言うことにはみな結構ですといい、その行いはすべてご立派ですといい、
密かに主人の好きなことを突き止めてこれをすすめ、見るもの聞くものすべてよい気持ちにさせ、
やたら迎合して主人とともにただ楽しんで後害を考えない
「姦臣」
本心は陰険邪悪なのに外面は小心で謹厳、口が上手で一見温和、善者や賢者をねたみ嫌い、
自分が推挙したい者は長所を誇張して短所を隠し、失脚させたいと思う者は短所を誇張して、長所を隠し、
賞罰が当たらず、命令が実行されないようにしてしまう
「讒臣(ざんしん)」 讒とは事実にないことを言って他人をおとしめること
その知恵は自分の非をごまかすに十分であり、その弁舌は自分の主張を通すに十分であり、
家の中では骨肉を離間させ、朝廷ではもめごとをつくり出す
「賊臣」
権勢を思うがままにし、自分の都合のよいように基準を定め、自分中心の派閥をつくって自分を富ませ、
勝手に主人の命を曲げ、それによって自分の地位や名誉を高める
「亡国の臣」
佞邪(ねいじゃ)をもって主人にへつらい、主人を不義に陥れ、仲間同士でぐるになって主人の目をくらまし、
黒白を一緒にし、是非の区別をなくし、主人の悪を国中に広め、四方の国々まで聞こえさせる
「六邪」がいると「六正」は自ら去るか失脚するかだから、結局は「六邪」がすべて取り仕切ることになってしまう。
そうならない場合は「賢臣は六正の道に処(お)り、六邪の術を使わず、故に上安くして下治まる。
これを現出するのが「人臣の術」なり。
「十思」「九徳」− 身に付ける心構え
十思
1 欲しいと思うものを見たら、足る事を知り自戒する事を思う
2 大事業をしようとする時は、止まる事を知り民の安楽を思う
3 高ころびしそうな危ない事を考える時は謙虚に自制する事を思う
4 満ち溢れるような状態になりたいと願望が起これば、
老子の『江海の能(よ)く百谷の王たる所以は、其の善く下るを以ってなり』で、
満ち溢れる海はすべて川より低い事を思う
5 盤遊(遊び)したいと思うときは、必ず限度をわきまえ、
狩のとき『三駆以て度となる』
すなわち一方に逃げ道を用意してやるのを限度とする事を思う
6 怠け心が起こりそうだと思えば、始めを慎重にして終わりを慎む事を思う
7 自分の耳目を塞がれているのではないかと心配ならば、虚心、部下の言葉を聞く事を思う
8 中傷や讒(ざん)言を恐れるなら、まず自ら身を正して悪を退ける事を思う
9 恩恵を与える時は喜びによって賞を誤る事が無いように思う
10 罰を加えようとするときは、怒りによって重すぎる罰にならないように思う
裏返しを考えてみると明瞭になる
十不思
1 欲しいとなれば、前後の見境なくやみくもに欲しがる
2 企画を思いつくと社員のことなど忘れて突っ走る
3 名誉職を高望みして自分の位置を忘れる
4 まだ足りぬ、まだ足りぬ、と上へ上へと事業を拡張して破綻し、
静かに、低く堅実にやっていればそうなることを忘れる
5 遊び出すと限度なくそれに溺れ
6 軽率に始めてすぐいやになって関心を失い、終わりを全うせず放り出してしまう
7 おだてられて耳目を塞がれていることを思わず、部下の直言に耳を貸そうとしない
8 中傷や告げ口に楽しそうに耳を傾け、厳然たる態度でそういうことを言わせないという態度がない
9 恩恵を与える時は喜んで無茶な恩恵を与え
10 罰するときは怒り狂って罰に限度がない
九徳
1 寛にして栗 : 寛大だが、しまりがある
2 柔にして立 : 柔和だが、事が処理できる
3 愿(げん)にして恭 : まじめだが、丁寧でつっけんどんではない
4 礼にして敬 : 事を治める能力があるが、慎み深い
5 擾にして毅 : おとなしいが、内が強い
6 直にして温 : 正直・率直だが、温和である
7 簡にして廉 : 大まかだが、しっかりしている
8 剛にして塞 : 剛健だが、内も充実している
9 彊(きょう)にして義 : 強勇だが、義(ただ)しい
裏返しをなぜか十八不徳(九不徳と言わないのかな?)としている
1 こせこせうるさいくせに、しまりがない
2 とげとげしいくせに、事が処理できない
3 不真面目なくせに尊大で、つっけんどん
4 事を治める能力がないくせに、態度だけは居丈高
5 粗暴なくせに、気が弱い
6 率直にものを言わないくせに、気が弱い
7 何もかも干渉するくせに、全体がつかめない
8 見たところ弱弱しく、内もからっぽ
9 気の小さいくせに、こそこそ悪事を働く