「ザ・ラストマン」
川村 隆 角川書店
若き友人からこんなメールをもらって読んでみようと思った。
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グループ会社から異例の抜擢で日立製作所本体の社
長に就任、7873億円の赤字から
奇跡の復活を成し遂げた、川村隆
さんによる一冊。
タイトルになっている『ザ・ラストマン』とは、著者が30代の頃、後に日立製作所
副社長に就任する綿森力氏(当時日立工場長)に
教えられた言葉で、綿森氏はこうおっしゃったそうです。
「この工場が沈むときが来たら、君たちは先に船を降りろ。それを見届けてか
ら、オレはこの窓を蹴破って飛び降りる。
それがラストマンだ」
最後に責任を取る人。著者自身がラストマンとなって日立製作所の社長を引き受け
たのは、実は1999年に起こったハイジャック事件がきっかけでした。
全日空61便ハイジャック事件──機長が犯人に首を刺され、亡くなった痛ましい事件
ですが、著者は何とこの飛行機に乗っていたのだそうです。
二階のコックピットに刃物を持った青年が押し入り、副操縦士は追い出され、機体
が急降下。
そんな時、たまたま非番で乗り合わせたパイロットの山内純二さんが陣頭指揮をと
り、操縦桿を奪い返しました。
著者はこの事件に遭遇して、<緊急時にこそラストマンになることが必要である>
と悟ったようです。
本書には、日立製作所の「ラストマン」となった著者の覚悟と哲学、そして再生ノ
ウハウがまとめられています。
・意思決定をする人数を絞る
・出血を止める
・キャッシュを生む事業を見つける
・戦術は変えても戦略を変えてはいけない
「沈みかけている会社」を立て直すためのポイントや手順がまとめられており、実
に勉強になりました。
ぜひ読んでみてください。 (2015.3.17)
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そうすると時を同じくして日経新聞の「私の履歴書」で川村さんの連載が始まっ
た。(2015年5月)
ほぼ同時期に読んだのでよく理解できたと言える。
読後記が遅れるのは毎度のこと。
これまでにも残したくて書き残してない本がいくつかあり、いずれ書き残すつもり
はあるのだがなかなか進んでいない。
この本は図書館ではなく自分で購入した。
要約は上記メールに見事に要約されているので、付箋をつけたページの記載を抜書
きしていこう。
【数字以外の話もできるか】
P114 日本の部長クラスは海外に行っても、数字は語れてもヴィジョンを語れな
いので、現地の人たちの
求心力を失うという話をよく聞きます。
【まず方向性を示すことの重要性】
P116
方向性を示すのと同時に、その製品がどう役立っているかを全社員に実感さ
せることは、実はとても大切だということです。
【朝令暮改にもルールがある】
P118
戦術は変えても戦略は変えてはいけません。
戦略はどんなに情勢が変わってもグラグラしてはいけないものであり、朝令
暮改していいのは戦術だけです。
状況が変わると、あっさり戦略まで変えてしまうリーダーは少なからずいます。
それでは周りは振り回され、現場に混乱が生じます。
戦略と戦術は似て非なるものです。
よく言われるように、戦略は会社の方向性を定めた長期的な考え方であ
り、戦術は会社の目指す方向を実現するための短期的な方法です。
【アイディアはノートにメモする】
P120
ノートに何でも書きます。人の言葉の中で大切だと思う箇所をメモした
り、本や雑誌を読んだときに気になる情報を
書き出したり、本の感想を書いて読書ノートのように使うこともあれば、仕
事で何かアイディアを思いついたときに
ちょこちょこっと書きとめることもあります。
「人生で何が楽しいか」よいった自分なりの人生論を書くときもあるの
で、中身はあらゆる情報でごった煮の状態です。
⇒ 私はこれをHPと手帳でやっています。
こうやってHPに書き残した読後記はいつでもどこでも何度でも読み
返すことができるのでとても重宝しています。
やはり記録にしっかり残しておかないと人はつい忘れてしまいますから。
【未来を話す時間を持とう】
P124
「タウンホールミーティング」と称して、現場の社員とのコミュニケーショ
ンを取る場を設けました。
国内だけでなく、海外の事業所にも出向いて部課長クラスを中心に20〜30人
集めて、直接、話をするようにしたのです。
⇒ ANAさんのダイレクトトークに似ていますね。
私はこういうトップの活動は絶対に現場にとってうれしいももである
と確信しています。
川村さんもやられていたんだなーと嬉しく思いました。
【情より理を取れ】
P134
ラストマンは「情」を理解しつつ、「理」をとることができる人間なのかも
しれません。
「情」を理解しないで「理」をとるから角が立つのでしょう。よく言われる
ように 「小事には情、大事には理」ということになるのかもしれません。
⇒ これができる人なら、つらいことを言われても社員は納得して従うでしょう。
この人が言うことなら仕方がないと。
親分、社長にはそういう器の大きい人になってもらいたいものです。
【部下の指導に持ち時間の2割を割け】
P160 皆さんは部下の指導にどれくらいの時間をかけているのでしょうか?
それほど時間をかけていない方の方が多いのではないかと思います。
私は「部下の指導には自分の持っている時間の2割を割け」とよく言っています。
リーダーにとって部下の教育はそれほど大事だということです。
⇒
これはその通り!!!! と実感。
よくぞ言ってくれたと。
人材育成こそが管理者の役目。
自分を育ててくれた、そのお礼を部下に返していかねばならないのである。
【慎重なる楽観主義】
P178
リーダーは「慎重なる楽観主義(Cautious
optimist)であるべきだ。」とい
うのが私の持論です
この一見矛盾するような言い回しは、フランスの哲学者アランの「幸福
論」の一節
「楽観は意志に属する、悲観は気分に属す」から考えたものです。
私なりのリーダー論と言えるかも知れません。
【開拓者精神を忘れてはいけません】
P182
ビジネスの世界では、常に上流に向かってボートを漕いでいるようなもので
す。
油断しているとあっという間に流されてしまいます。さらに言うなら、ずっ
とボートの中だけを
見ていると、自分が今どの流れにいるのかわからなくなります。
本流にいるのか、傍流にいるのかを確かめるために、ときにはボートを外か
ら見る体験も必要なのです。
停滞することなく成長しつづけるためには、常に新しい知識、技術、事
業、市場を開拓し続けなければなりません。
開拓者精神は成長の基本です。
日立の創業者・小平浪平は、日立創業の精神として
「和」「誠」「開拓者精神」という言葉を私たちに残しました。
以上が印象に残ったフレーズである。
このほか、投資家回りで資金集めで苦労した話などは非常に日立のためによかった
ことなんだと実感している。
というのも、日立のコーポレートガバナンスについて川村さんの後を引き継いだ中
西さんからプレゼンを受ける機会があり、
どん底から這い上がった後、非常に良いガバナンス体制を敷き、それが効果的に
回っているという印象を持っていた。
そして川村さんの著書を読んで、その大きな要因が川村さんのリーダーシップだっ
たんだなとわかったような気がした。
現在東芝が混沌としていることが非常に対照的に見えている。
カッコだけいくら作ってもそれが機能しなけければ何にもならない。
創業者精神が日立のように引き継がれているのだろうか。
今一度、創業者の精神、企業理念に立ち戻って再構築することが東芝に求められて
いることだと
私は思う。
ANAの企業訪問でその言葉が引きつかれていることを知った。「和協」の精神
雪印でもしかり。「健土健民」の精神である。
東芝は何なんだろう。「万般の機械考案の依頼に応ず」
https://newswitch.jp/p/1234
ちょっと長すぎるな。やはり4文字熟語以内の短い言葉にすることが後世に伝わる
秘訣かもしれない。