「熔ける」

  井川意高  双葉社




カジノ借金大王の大王製紙・前会長(49才)の自叙伝

名前が読めなかった。
「もとたか」さんである。


いやーはんぱじゃないです。
106億円の借入  すべて カジノですってしまった井川さん

経営者としての振り返りを書いているところで
なかなかいいことを書いているなと感じた一節があった

カジノは問題だが仕事はほんとしっかりやっていたようだ。
工場の現場にもよく入ってよく勉強している。

安全の標語で
1mの落下が「一命取る」でうまい安全管理の言葉を教えてもらった。

○ 決して華やかではない現場の仕事を皮膚感覚で学びとる経験は、後の経営者となってから
  とても役立った。
  もちろんすべてを理解できたわけではないが、何かを指示する立場となった時、
  理念ばかりでカラ回りするようなことにはならなかった。
  モノを作る社員、それを売る社員、彼らをまとめあげる管理職と、
  それぞれの職場にそれぞれの価値観がある。
  組織が人で動いている以上、そこで働いている社員が有する価値観を知っておかなければ
  トップの人間が会社を正しい方向に導くことはできないと今でも思っている。

 →この言葉は非常に素晴らしいと思った。

カジノでは、ブラックジャックでもルーレットでもなく偶然そのものの「バカラ」にはまったという。
バカラなるものは私はよく知らない。知らないほうがいいだろう。

その他、VIPカジノの雰囲気(20億円のチップを積み上げ勝っている場面からのスタートで度胆を抜かれる)
種銭作りの裏ワザ、(その額がもう一般の人間の範囲を大きく超えている)
カード質屋の仕組みや
ブラックカードでロレックス10個3000万を質屋で45%キャッシンングで1350万を作ったことには
ほんとあきれました。
(井川氏のブラックカードはアメックスとダイナーズを所有していて、3000万円まで買い物ができるのだそうだ)

ブラックカードは富裕人のものと最近知ったところであるが、
チタンカードまで最近はあるらしい(ズボンのポケットの中で折れないようにだそうだ)

○ アメックスのクレジットカードのランクづけは
  最も標準的なグリーンから始まり
  ゴールド → プラチナ → ブラックへと上がっていく。
  ブラックカードと同じ位置づけとしてのチタンカードがあるほか
  世界の大富豪にはクリスタルやスケルトン、パープルと呼ばれるカードを持つ者もいるという


プラグマティズムは父親の鉄拳を避けるために備わったようである。
筑駒時代に生まれたと本人は書いている。
中、高一貫教育の国立東京教育大学付属駒場中学校(後の筑波大付属駒場中;筑駒)
に合格しこの男子校に6年通った。
お父さんは官僚にさせたいために、東大コースに行かせたようだ。
弟や両親は慶応。

小学校の時に飛行機で東京の塾に通っていたというのは、誇大表示のようであった。
春休みや夏休みの集中講座に2,3回行っていただけのこと。
それも中学受験が目的であったということを知る。
会社規模の拡大に伴って、一家は東京に移住していたのである。

東大時代に銀座で飲んでいたのはホントでした。
父親のお供で英才経営者教育の一場面ということ。
酒はめっぽう強く、いくら飲んでも酔わない。
ただ1年生のとき、急性アルコール中毒で死にかけた逸話を披露している。

車を東大合格でBMWをもらったり、
学生時代に、すでに関係会社の役員で株式を有していたのでこずかいには困らなかった
(銀座の支払は自分でしていた)と、やはり普通の人ではないですわなー。

芸能人の名前がかなりでてきたが、さらっと書いていてこの世界にはあまり興味がな
い印象。

一方、カジノは2日間も寝ずにずっと勝負しつづけるほんとビョーキだとと
自分もギャンブル依存症と認めている。

ホリエモンの拘置所への座布団の差し入れはほんと嬉しかったと殊勝に感謝。

 ○ ホリエモンは他者への深い情けを持っている男だ。
   きっと彼は、普通の人よりもずっと正直であるがゆえ、
   いろいろ誤解されてしまうのだろう。
   ホリエモンからの座布団と温かい真心は今も忘れられない。

監査法人のトーマツは資金貸付については気づいていた。(2010年7月)
トーマツが経理担当者にそのことを尋ねたところ
「井川の判断で事業活動の運転資金に充てている」との担当者の説明に納得し、
さらに追及されることはなかった。

井川氏自身、
「過半数の株式を持っている会社から、一時的にカネを融通したって問題はなかろう」
という軽い気持ちであったとの回想。
(いずれ返すのだから)

○ 会社法違反(特別背任)の罪で逮捕された私が、(懲役4年の実刑)、なぜ控訴、
  そして上告までして裁判で争ったのか。
  世間の中には、それをもって「井川は反省していない」ととらえる向きがあったことは
  私も承知している。
  だが、私としては会社に被害を与えたり借り入れた金56億3000万円は、
  「利息を含めて完済した」という思いが燻(くすぶ)っていた。
  その点に関しては、一審判決でも
  「各被害会社の損害を回復するものとして、量刑上大きく斟酌されるべき事情ではある」
  と述べられている。
  己の不徳と甘さについては、何も言い訳できない。
  ただ、ギャンブル熱に浮かされ、周囲が見えなくなっていた私だが、逮捕されたことで
  犯した罪の大きさにはたと気づき、自己資産で借金を返済したのは事実だ。
  身勝手なもの言いかもしれないが、
  「返済しようと思えば、いつでも自分の金で返済できる」という甘い考えが私の中にあった。
  盗みとるような気持ちは、神に誓ってなく、時期を見て返済しようと考えていた。
  だからこそ、会社のカネと自分のカネを混同するという、
  経営者としてあるまじき行動に出てしまったのだが…。

ということでこの本の印税は
全額社会福祉事業に寄付いたします。

で結びとなっている。

ほんとお金には困っていないんですなー。