「強いニッポン」 
  御手洗 富士夫 朝日新書
新しいのが出たよと家内が図書館で借りてきてくれた。
御手洗さんの本は読みやすい、納得の書である。

以前話題にした「会社と社会」の答えを御手洗さんが言ってます。
CEOは Chief Ethics  Officer だとも思ってます。
御手洗さんはそれをやっていると思います。
最後の白秋はしりませんでした。(青春しか知らない)


○ 「コンペティティブ・エッジ(競争力格差)」
こういう言葉は初めて聞いた。日本語に直すよりもそのままの方がいい言葉だ。
 
日本が「希望の国」であるためには、このコンペティティブ・エッジを保持することが欠かせないと説く。
 
 
○ 「部分最適」ではなく「全体最適」を
小泉さんへの3つのお願い
 
・前例主義の廃止
・縦割り行政の解消
・重責を自覚し、気概をベースに仕事に励んで欲しい
 
○ 会社の存在理由
 4年前の朝日新聞のインタビューに答えた
 
1 従業員の生活の安定、向上
2 投資家への利益還元
3 社会貢献
4 会社が生きていくために自己資本を稼ぐこと
 
この4つをきちっとやるためには、利益で売上ではない。
会社の利益は目的で、その利益を生むために事業という手段がある。
手段として役立たないものはやめるべきなのだ。
 
 
○ 卑怯を憎む武士道の復活を
企業は社員の幸福に責任を持たねばならない。
 
そういう意味で社員教育にたいへん力を入れてきた。
自立した人間を育てようと、創業以来の「3自の精神(自発・自治・自覚)を叩き込んできた。
「会社から何を言われようと、人間としておかしいと思ったら、反対しなさい」
「私を含め、上司に何か言われて、人間としておかしいと思ったら反対しなさい。そういう自立した人間になりなさい」
と全社員に繰り返して言っている(HPでも)。
 
幹部研修でも同じ。
まず教えることは、
「会社は社会の一部であるから、社会の公益の方が私企業の利益よりも優先する」という
当たり前のことだ。
 
 
中村さん(松下)との対談で
 
技術投資  キャノンは連結売上の8%(2800億) 松下は7%(5800億)
 
M 大学や研究機関と連携するにしても、自分のところの技術を見抜く力、開発する力を持つ人材が不可欠です。
  中村さん、どんな人が欲しいですか。
 
N やはり技術の目利き。これは難しいですから。
  でも、そんな人、なかなかいないですよ(笑)。
  それと、やっぱり執念です。技術者としてあきらめない執念。
 
 
○ ノブレスオブリュージュを
リーダーに何より必要なものは、「使命感」である。
使命感をモチベーションとして働ける人間が、リーダーだ。
何らかの利害をモチベーションにしてやるというのは、誰でもやっている当たり前のことだ。
でも自分を起点に発想する人間ではダメだ。
モチベーションが、自分の利益から出るか、自分の役職に対する使命感から生まれるかで、
本当のリーダーかそうでないかが決まる。
フランス語にある「ノブレスオブリュージュ」のように、
他人のため、社会のために、自分の能力を注ぐことが、与えられた使命だと感じる人間。
それがリーダーの条件だ。
言い換えれば「私心がない」ということになる。
幕末から明治時代にかけて尊敬を集めた西郷隆盛のような「無私」の人が、真のリーダーだ。
 
 
○ 組織のあり方
 コミュニケーションをよくするためには、組織はフラットなほどいい。
課や部の数をなるべく減らし、課長や部長の権限の範囲を広げ、部下の数を増やす。
課や部にいる人数が少ないと、2つの弊害がある。
10人くらいしかいない組織では、リーダーシップが育たない。
何十人も任せて、自分の知恵で組織を維持しないといけないところに、リーダーシップは育つ。
もう一つ、小さく分けた組織ほど、定型的な仕事ぶりになって、管理職の「機転」が利かない。
大きな部門では、しばしば臨機応変にやらなければならないので、「機転」が利くようになる。
だから管理職の数を減らし、部下の数を増やして、苦労しながらでも治めることのできる人材を
育成している。
 
○ 白秋
東洋思想では、人生を四季にたとえている。
幼少期が「玄冬」で
青年期が「青春」、
中年期は「朱夏」で、
高齢期が「白秋」。
「白秋」とは、実りの季節のことだ。
社会で最も弱い立場でみられがちな高齢者は、実は、長い間の経験や知恵を生かし、
自らの時間を充実させるとともに、社会に還元もしていく。
これも隠れた「公徳心」であり、実は「愛国心」なのだ。
私も、その「白秋」の一人として、日本のために全力を尽くしたい。