著書「ストレス危機の予防医学」より

森本兼曩先生(大阪大学医学部教授)の著書のサマリーを報告しておきます。

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この本はちょっと専門的で読みにくいのですが、
ざーっと読んでみて、ポイントと思われることをまとめてみました。


・不健康なライフスタイルを身につけた人々は健康的なライフスタイルの人々に
 比し、およそ2倍早く歳をとっていく。ライフスタイルが良いと健康長寿となる。
 (50歳でも40歳に見えたり、70歳くらいに見えたりするゆえんである)

  いいライフスタイルとしては
   1.喫煙をしない
   2.過度の飲酒をしない
   3.毎日朝食を食べる
   4.毎日平均7〜8時間眠る
   5.毎日平均9時間以下の労働にとどめる
   6.身体運動スポーツを定期的に行う
   7.栄養バランスを考えて食事する
   8.自覚的ストレス量が多くない

 守っている上記の生活習慣数
   0〜4    ライフスタイル不良
   5〜6           中庸
   7〜8           良好
   

・ストレス度の高い生活出来事は、職場関連の生活出来事よりも家庭関連(夫婦関連)
 出来事の方が多い。
  (配偶者の死 100、離婚 73、解雇
47、転職 36)
 ストレス度合いを結婚を50点基準として各種設定しており、各種のストレス値を
 合算してみる。1年間でのストレスの合計値が300点以上になると80%以上の
 確率で健康障害が発生する。
  (ストレッサー評価法)

・日本人のタイプAは攻撃性の表出が極めて弱く、会社への減私奉公的帰属意識が強く
 現れるのが特徴であり、「付き合いのタイプA型」と言われている。
 タイプAには虚血牲心疾患(高血圧、高脂血)のリスクが高い。

・ヒューマンサポートの重要性
 大きなストレスを受けている状況下でも心おきなく話せる友人や同僚、あるいは家族
 と心を開いて話し合うことでそのストレス反応は随分と軽減される。

・自由なのびのびとした子供心を持って明朗な性格である場合には、さまざまな意味で
 ストレス感の少ない生活を享受できる。

・定期的な運動習慣(軽いものがいい)を確立する努力は重要なストレス対処行動の1つ
 である。

・ナチュラルキラー(NK)細胞はガン化した細胞を検知し、最終的に破壊死滅させる。
 喫煙者のNK細胞活性は非喫煙者の数分の一となる。 
 飲酒との関係ははっきり出ていない。酒の弱い人間(酵素の関係)は下がる。         
 睡眠時間が減るとNK細胞活性は明らかに下がる。
 運動習慣では上がる。
 ストレス下では下がる。
笑いでは上がる。
 → ライフスタイルのいい人はガンになりにくい

・染色体変異
 主観的ストレスが多く、かつ喫煙をし、肉食や脂っこいものなどのアンバランスな
 食事を続け、多量の飲酒をしているような場合には染色体変異が多いのみならず
 ガん免疫力も大きく低下する。

・活性酸素は有害
 強いストレスを受けた際には、一時的に虚血状態(各種臓器に供給される酸素量が
 減少した状態)が生ずる。このような虚血状態が長時間続いた場合、生体の機能を
 維持できないことから、すぐさま脈拍が上がりつつ、かつ血管の弛緩が生ずる結果
 大量の酸素が急激に血流中に送り込まれる。このように血液中に酸素濃度が一過性
 に急上昇した際、血中には反応性の高い酸素分子が発生する。
 この活性酸素は遺伝子そのものであるDNAに障害を与える有害なものなのである。


・クオリティ・オブ・ライフ(QOL)
 人は100年足らずの短い人生の中で種々のストレスを受けながら、その克服に向け
 て努力を続け、葛藤の人生を通じて高い自己実現を達成しようとする、その意味で
 ストレスはより高い自己実現達成へのプロセスとして、日常生活において高いQOL
 =生活満足度や働きがい感が得られることも重要である。

・調査結果によれば、
 健康習慣で規定したライフスタイルの良否が、強くQOLや働きがい度・生活満足度
 を規定している。
 この因果関係は極めて複雑ではあるが、いずれにせよ、幼少の頃から良好な健康意識
 に支えられた健康的なライフスタイル環境を自らの内部に形成することにより、
 成長してからの社会・家庭生活において、QOLを高く維持した日々の生活を実現でき
 るものと考えてよい。


  いいライフスタイル(再掲)
   1.喫煙をしない
   2.過度の飲酒をしない
   3.毎日朝食を食べる
   4.毎日平均7〜8時間眠る
   5.毎日平均9時間以下の労働にとどめる
   6.身体運動スポーツを定期的に行う
   7.栄養バランスを考えて食事する
   8.自覚的ストレス量が多くない  

以 上