送電線の向こうから−もと原発所長の回想記 千葉 幸 文芸社 この本は、 伊方発電所長から四電エンジニアリング゛専務を勤められて平成11年に引退された 千葉さんの回想記である。 2003年に出来た直後に購入勧誘があり、2つ返事でOKして2割引きで購入。 しかし、読んだのは半年後となった。 軍隊、住友化学、四国電力と新しい仕事を転々とされ、その度に大きくなっていか れた 様子がよくわかった。 すごい勉強家である。敬服。とても私はここまで打ち込んで必死で勉強したことが ない。 死に物狂いの勉強家である。 私は楽しいから勉強するといった風があり、怠惰な自分を再認識させられた感があ る。 自分が「甘いな」と思う。 千葉さんとは上下関係になったことは一度もなかった。 したがってその仕事の内容、苦しみが今になってわかった。 私が51年入社で千葉さんが51年3月に火力から原子力へ異動となった。 奇遇である。原子力部門での経験年数は常に同じであったことになる。 しかし、それまでに水力発電所、火力発電所と現場第一線の業務をやってこられた 経験は雲泥の差である。 今の若い人にはこれだけの経験を積むことは不可能であろう。 高度成長期に電源の主役が変わってい時に、その時流に乗って、常に主流の 現場に居ることが出来た大変幸運な会社人生であっといえる。 しかし、千葉さんの場合は、それを自分で自ら掴み取ったといえる。 キャリアコースではなくノンキャリコースから実現させたのは、 本人の向学心、志の高さがあってのことである。 本当に敬服する次第である。 私には現場経験がほとんどない。 しかし、入社以来常に現場志向であるのだ。 だが配員はそうはならなかった。 これも運命であろう。 私はジェネラリストとしてがんばるしかないと思っている。 私の信念は「熱意」、「誠意」をもって物事に当たること。 そして「人」をもっとも大切にすること。 である。 千葉さんも書いている。 「日頃の努力が安全を作る」 「人の教育・訓練が会社を支える」 「活力ある職場が成果を生み出す」 これが私の信念である。 また千葉さんは軍隊経験もあったこともあり、身だしなみにはうるさかった。 髪が長い!とか注意を受けていた人を何人も見た。 「broken windows」と同じく、身だしなみがスッキリしていることは 業績向上、安全につながる。 小さな汚れを放置すれば大きな犯罪が起こるように、発電所の安全もそうである。 規律を守る風土がいかに大事かということを、無意識に体得されていたからだと 思う。 千葉さんの人生の核は電験第一種合格である。 私が東京支社副支社長の役職ゆえにこの6月から電気技術者協会の理事となったのも ホントに何かの縁である。 来年はその総会が四国で開催される。 また元気な千葉さんにお会いできるのを楽しみにしている。