「 負け犬の遠吠え」
酒井 順子 講談社
● 未婚、子ナシ、30歳以上が負け犬の定義
その負け犬の心の内を明かした本であった。
負け犬が強く意識する「いや汁」という言葉に対しては非常な嫌悪感を感じたが
それ以外は割とすんなり読めた。
負け犬は家族がいないので必然的に自分と向き合う時間が多いため、
思索的になるというのはなるほどと思った。
例によって印象に残ったフレーズを書き残しておこう。
○ いずれは結婚するのだろうとは思いつつも、だからついつい彼女たちは恋愛を繰り返してしまう。
身体に良い野菜は食べず、甘いお菓子ばかり食べてしまう子供のように。
(別の個所ではアリとキリギリスのキリギリスにもたとえてていました)
○ 3万円もするTシャツを普段に着ていても、冠婚葬祭になると弱い、負け犬。
普段はユニクロのTシャツでも、冠婚葬祭では俄然、存在感を発揮する勝ち犬。
負け犬は常に個人として存在しているので、何でもない平日の服装にお金をかけるのですが、
勝ち犬は個人としてではなく、「家」の人間として行動している。
普段はどんな安い服を着ていても、喪服の生地の質では、負け犬を凌駕するのです。
この文章の前にあった結婚式の対比が面白かった。
・黒いドレスの負け犬一団が醸し出す暗雲のような雰囲気
・若いミセスらしい桜貝色や若草色の着物に身を包んだ、まるで歌舞伎役者の奥さんのような
勝ち犬一団が醸し出す春の野のような雰囲気
○ 休日を全て趣味に費やし、スターのおっかけをする人たちは、とても忙しそうです。
私はつい思ってしまう。「これって…、アディクションってやつだねえ」と。
そして30歳を過ぎたら、追っかけだけはしてはならないと心に誓う。
・アディクションがよくわからなかったので調べた。
ネットは本当に便利。
すぐに答えがみつかる。
嗜好、はまるということのようです。
http://www.t-pec.co.jp/news/2005/06.html
◎ 「20歳下の法則」 ← これ良かった!
「私も40代までは、若い人と仲良くしようなってちっとも思えなかったのよ。
でも50歳になったら、急に20代も30代も可愛く思えるようになって、
ごはんをご馳走してあげたりするのが楽しくなってきた…。」
そこでハタと気がついた。
もしや女性には「20歳下の法則」というのがあてはまられるのではないかと。
女性というのは、年下女性には意地悪な心理を抱くとは言っても、それはあくまで近年齢憎悪的な心理。
自分より20歳くらい離れてしまうと、「敵ではない」と見なすようになるのではないか。
◎ 他者から見る男女の幸せの価値観の相違
女性の人生における真の仕事とは、恋愛や結婚といった「つがい作り」行為なのだなあ、ということ。
金銭を得るための仕事は、「女としての人生」の中では仕事というより余暇活動のようなもの。
だからこそ、つがいも作らず働き続ける女は「女として不幸」であり、
つがいは作っても仕事ができない男は「男として不幸」なのです。
○ 女は愛嬌が求められる社会
それにしても私たちは、負け犬になってまでも、そしておばあちゃんになってまでも可愛らしく
あらねばならないというのは、なんだか虚しいものです。
実際、日本において可愛らしいとは、歳をとればとるほど必要になってくるもの。
「容姿が可愛くないのだったらせめて態度は可愛くあれ」というプレッシャーが、そこにはあります。
幼形愛好が盛んな日本において、それは仕方のないことかもしれません。完璧に成熟した容姿や精神は
人を恐がらせるので、幼く未熟な部分を、フリでもいいから残しておかねばならない私達。
日本に生まれてしまったことを不運として、甘んじて受け入れるしかないのでしょう。