シービスケット

ローラ・ヒレンブランド(Laura Hillenbrand) 著
奥田 祐士 訳
ソニー・マガジンズ


これがノンフィクション、現にこの世にあったことだとは…。
信じられないような波瀾万丈の物語であった。
現実は小説より奇なり

癖のある男ども、スミス調教師、ポラード、ウルフの2人の騎手、
そしてオーナーであるハワード
彼らがシービスケットに惚れ込み勝負の世界に生きた。


騎手の厳しさ、危険さということをまざまざと知らされることとなった。
華やかなジョッキーと言えどギリギリのところで生きているんだなあ
と畏怖の念を強く感じた。

映画では色を添えるであろう女性陣であるが、小説の中では軽く扱われている。
勝負の世界に限定して描いていることが珍しい。これは女性筆者による作品だからだろう。
厳しい勝負の世界に生きている男どもを癒して元気づけてくれた女性の貢献をもう少し
描いて欲しかった気はするが、これはきっと映画で満たされることであろう。
ハワードの後妻マーセラ そしてポラードの妻アグネスである。

実際の写真がいくつか散りばめられているのも非常にイメージを出すには
貢献してくれて嬉かった。
シービスケット、ポラード、スミス、ハワード、ウルフ、そして宿命の敵
ウォーアドミラブルとのマッチレースの写真などなど

すべて紹介してみよう

 1 ビュイックのレースカーに乗るハワード
 2 1939年ベイメドウズ競馬場での落馬事故
 3 ポラードのメキシコ入国のための査証
   ジョージ・ウルフ
 4 シービスケットとポラード
 5 1937年サンタニア・ハンデ戦ゴール前
 6 説明がないがウィナーズサークルでのシービスケットとポラード
 7 落馬事故で重傷を負い、トラックから運び出されるポラード
 8 1938サンタニア・ハンデ戦ゴール前
 9 シービスケットの手綱をひくスミスとハワード
10 1938年ベルモント競馬場でマッチレース前の2頭
   ウォーアドミラブルとシービスケット
11 リガロティとのマッチレース
12 ロケットスタートの練習をするシービスケット
13 1938年11月1日 ピムリコ競馬場でのマッチレース
14 サンタニア・ハンデ戦でレース中に左脚を負傷したシービスケット
15 サンタニアの厩舎でハワードの指示を待つシービスケットとポラード
16 1940年サンタニア・ハンデ戦
17 悲願のサンタニア勝利のウィナーズサークル
18 リッジウッド牧場で引退したシービスケットにまたがるハワード


また馬を直前で出走取消することが頻繁にあった。
雨が降ってトラックが合わないから何度もスミス氏は取り消した。
今の日本では考えられないが、馬のことを本当に大事に思えばこその処置だが
日本では馬券を売り出してからでは難しいだろうなあ。

こういう細心の注意が払われ、故障による長期ブランクがあったが、奇しくも
同様に骨折してリハビリ中のポラードとともに再起し、見事にサンタニアハンデで
優勝。命がけの騎乗で勝利をものにしたポラードとシービスケット。

最高に盛り上がった場面だ。
ウォーアドミラブルとのマッチレースと最後のサンタニアハンデが最大の見せ場で
ある。

最後のエピローグはわびしいものがあった。
ここは映画では見せないだろう。

シービスケット引退後は燃え尽きた男どもは苦しい人生を送ることになる。
それもまた現実、人生である。

ノンフィクションだけにその後をしっかり書き留めてくれた筆者に御礼をいいたい。
非常に楽しめた小説である。
映画を見るのが楽しみだ。

シービスケット戦績
1935.9.14 〜 1940.3.2 
83戦 33勝 2着15回 3着13回 
生涯獲得賞金 437,730ドル