「 政治を見る眼 24の経験則」
芹川 洋一 日本経済新聞出版社
「政局」という言葉がよく使われるが、よく理解していなかった。
この本でよくわかった。
筆者は日経新聞の元政治部長。長年のキャリアからわかりやすく解説してくれている。
この本もE先輩の推薦図書であった。
第1章 政治は数である
第2章 政治は権力闘争である
第3章 政治は言葉である
第4章 政治は合意形成である
第5章 政治は立地である
第6章 政治は風まかせである
第7章 政治は平等追求の歴史である
第8章 政治は情報である
政局とは「政争」のことで、政治家の争いのことである。
争いという言葉が嫌で「政局」という言葉が使われているのだそうである。
そのような語感や使われ方をしていると感じていたので、はっきりしてよかった。
第二章「政治は権力闘争である」である。
政争とは権力を取るための争い。
それで立ち位置を変えたりするという。
小沢一郎の言うことが変ったではないか!お前はなんぞい。
と思っていたのだが政局の男、小沢一郎氏にとっては主義主張を変えることなぞなんともないのであろう。
それが「第5章 政治は立地」である
位置取りとスローガンにこう書いてある。
政治家にとって純然たる政策論争などありえない。政策は権力闘争の道具だ。
そこに政治のリアリズムがある。政治家にとって、政策にからめた位置取りが何よりも大事になってくる。
それは椅子とりゲームに似ている。あるスローガンが書いてある椅子に早く座った方が勝ちだ。
本家本元になれる。遅れれば、二番煎じの椅子か、別のスローガンの椅子に座るしかなくなる。
小沢氏は完全に自分の立地を変えた。
2001年に首相になった小泉純一郎が進めた改革は、小沢の理念を橋本の道具立てで実現したものだった。
私はこれがよくわかるだけに、小沢氏の今の主張が空虚に聞こえてしまう。
政治家にとって理念はないのか?いや、それを実現するための戦略道具としてスローガンを変えただけなのか。
小沢は地方の痛みの象限に立地を変えたのだ。
明確にこの書でわかった。
非常にスッキリしたが、だけど何かさびしい思いをした。
所詮は権力を握りたい欲でやっているのか?志はないのか?
政権交代!を声高に叫ぶ民主党だが、手段であって、理想郷の未来をキッチリ描いたマニフェストには見えない。
それはバラマキ自民党も同じだ。
もっと高貴な思いでひっぱっていくリーダーは出ないのか?
政局などと言っている言葉を聞くたびに嫌になってしまう。
読後記を書くのがなかなかできなくなってきた。
以後は付箋をつけた部分を全部ではなく一部だけ抜き書きしておこう。
第1章 政治は数である
「沈黙のらせん仮説」
山本七平の「空気の研究」を引用
・空気がすべてを制御し統制し、強力な規範となって、各人の口を封じてしまう。
第2章 政治は権力闘争である
93年の構造改革の小沢ビジョンは小泉によって手がつけられてしまった。
第3章 政治は言葉である
小泉は、リポートトーク(報告)ではなく、情緒中心の言葉の使い方である「ラポート・トーク」の政治家であった。
raport=共感 聞き手との心理的なつながりに関係するもの
言葉によって聞き手を惹きつけ、心理的な距離感を少なくし、支持を導き出した首相だった。
→ よくわかる。リーダーには必要な資質ではないだろうか?
第4章 政治は合意形成である
第5章 政治は立地である
自民党と民主党が似たところに立地している結果、いつでも政権交代可能な状態になっている。
まさに政権交代が起こりそうな今年の総選挙である。
第6章 政治は風まかせである
政権党に逆風が吹くのは、争点の設定に失敗したときか、過去の業績への評価でノーの判断を下されたときで、
有権者によってお灸がすえられる。
メディアは投票日の10日から1週間前に世論調査を実施、さらに独自の取材も加えて事前の予測報道をする。
それを受けて、次なる動きが出てきて、化学反応が起こり、結果が変ってくる。
→ 今年の総選挙ではそうはならないくらいの風が吹きまくっている。
日本の有権者数は1億300万人
おおまかに言えば1億人で、第一の政治的無関心層は1500万人、第二の政党拒否層は2000万人、
第三の脱政党層は1500万人となる。
第一から第三までの無党派の総数が5000万人だから、これを除いた政党支持を持った有権者は5000万人で構成比は50%となる。
地方の場合、各県の小選挙区の一区で自民が民主に敗れる「一区現象」が「二区」「三区」現象になとうとしている。
小選挙区の区割りでは、県庁所在地が一区で、そこから離れるに従い、二区、三区と数が増えていくのが普通だ。
区の数が増すごとに、地方のなかでも地方になっていく。
第7章 政治は平等追求の歴史である
第8章 政治は情報である
テレビでの情報発信の巧拙が、政治家としての評価につながり、本人の選挙だけでなく、ポストにも影響を及ぼしている。
政治を競争や勝敗中心で報じるやり方や否定的な文脈付けが多用されたテレビ朝日系列の「ニュースステーション」の
選挙報道は、視聴者に政治的シニシズム(政治をさげすんで冷笑する)を高めていることを実証した分析もある。
→ 確かに、その感は受ける。