ヒューマンファクターセミナー 2003.6.19
コクヨホールで開催された第3回ヒューマンファクターセミナーに参加した。
電力中央研究所ヒューマンファクターセンター(HFC : http://criepi.denken.or.jp/jpn/hfc/
)の主催で、
今年から電力業界以外にも声をかけたところ236名もの参加者となった。
失敗学の中尾先生の講演「失敗を分析して教訓を作ろう」を含め4人の発表があったが
なかなか内容の濃いものであった。
そもそも私自身はHFCの創設に深く関与しており、
原子力発電所のヒューマンエラー分析のレポートを1987年?にまとめて
HPES(Human Performance Evaluation System)コーディネータミーティング(フロリダ)で
発表しており、その2年後にHFCが創立されたのである。
当時の発表のポイントは日本では運転エラーよりも保修にヒューマンエラーが多いという
ものであった。
今回はトップバッターの長谷川尚子女史の「ヒューマンエラーはなぜ起こってしまうのか」と
いう発表が非常によかった。
私が強く意識している組織の問題をはっきりと認識させられる点があった。
それは「朱に交わればあかくなる」
「社会的同調」 一人だけ外れた行動は取りにくくなるという点
ヨーロッパで行われたいじわるな実験で10人のうち実は被験者は1人であり
7番目に回答するが、その前に回答するさくらの人はことごとく違う答えを言うのである。
質問は左の線の長さと同じものを右の3本から選べというもので、答えは明かだから
被験者は困惑してしまう。
正解率100%のはずが、なんと60%にまで落ちる。
誰か1人でも前に正解を言ってくれた場合はほぼ100%となる。⇒重要
組織の悪い常識に染まってしまうということが容易にわかる。
組織全体を常に健全なものに保てなければ、悪いことをやっていても平気になるという
ことだろう。
「組織風土」の問題を私は一番の課題として考えている。
いくら規制をかけても風土は良くはならないのである。
今の原子力規制強化の方向は完全に間違っている。
セイフティカルチャーをいかに作るかという組織の問題なのである。
組織風土のチェックを常に忘れてはいけない。
しかし組織内にいる自分ではわからないハズである。
誰か第3者のコンサルテーションが必要ではないか?(規制ではない)
私の強烈な印象として残っているのは
新入社員で本店に配属された時に
なんという仕事の遅さだろう!
というショックであった。
それが2,3年もたつとみんな忙しく仕事をしていると思うようになるのである。
こういうことから新入社員の感想というのは大切にしている。
新入りの印象が一番強烈なのである。
そこに組織風土改善のヒントがあると思っている。
いい組織風土はパフォーマンスが高いことがヒューマンファクターセンター(HFC)の研究成果で
わかっている。。
最後に長谷川女史が示した「藍に交わり青くなる」
というように健全なる組織で健全な社員を増やしたい。
健全なる心は健全なる組織から。
組織の常識、風土チェックの研究をHFCにお願いしたい。
ヒューマンと言いながら、個人の問題ではなく組織の問題を今後重視すべきであろう。