「Suicaが世界を制覇する」
アップルが日本の技術を選んだ理由
岩田 昭男 朝日新書
内容紹介
iPhoneに搭載され、Suicaが国際標準の電子マネーとなる!
それはアップルが金融業界をも牛耳ることを意味する。
追いつめられた銀行やクレジット会社の逆襲は?
「決済三国志」を描き出すビジネスドキュメント。
著者紹介
1952年生まれ。早稲田大学大学院修士課程修了。
流通、情報通信、金融分野を中心に活躍するジャーナリスト。
著書に「電子マネー戦争Suica一人勝ちの秘密」「「信用力」格差社会」など。
私はSuicaは発売開始直後から利用している。
モバイルスイカも利用。
岩田氏とは1歳違いで感覚が良く似ているなと言う印象を受けた。
東京出張の際には部下にもSuicaを買わせてとにかくスピーディな移動を求めた。
スマホを購入するにあたってはおさいふ携帯機能がアップルにはないということが不満で、
また仕事で関係のあったauにするためアンドロイドを購入するしかなかったので
アイフォンユーザーではい。
iPadは発売当初に購入してはいるが。
アップルペイに対してアンドロイドペイという言葉を使っているが
グーグルペイではないかとの違和感は大きかった。
Suicaのフェリカが国際標準に認められ、そしてiPhoneに搭載された。
2016年、初めてiPhoneでSuicaが利用できるようになったとは
知らなかった。
カード会社のうわまえをはえるIT盟主アップル。
それに対して手数料は取らないが情報を利用するとのグーグル。
カード会社からIT会社へ。
そんな流れが理解できる内容であった。
それにしても岩田さんの傾注ぶりには若干危うさも感じた文面ではあった。
ほんと世界にSuicaが広まるという希望は果たして叶うのであろうか。
●Suica導入の背景
IC乗車券は、磁気方式乗車券よりも自動改札機の負担が少ないことは明らかだった。
改札通過のスピードアップにもつながるから、乗客の利便性もアップする。
これらの理由から、IC乗車券の開発を目指すことになったのである。
90年に導入した自動改札機の寿命は10年とされていた。
すなわち2000年頃には機器更新の時期を迎える。
IC乗車券を導入するとしたらそれに合わせる必要があり、JR東日本として開発を急がねばならなかった。
○国際認証を得る
2016年7月に行われた「第11回NFCフォーラムジャパンミーティング」において、
ある重要な報告がなされた。
2017年4月以降、非接触の交通系ICカードが使えるグローバルタイプのスマホに、
NFCタイプA/タイプBに加え、「NFCタイプF」すなわちフェリカを載せるよう義務付けることが確実になったというのである。
これはJR東日本が熱望していた、フェリカが事実上のグローバルスタンダードの非接触IC技術になったということを意味している。
(背景は2014年頃からそういう動きが出ていた。
経済のグローバル化の進展で、国際間の人の行き来がますます活発になる。
そうしたことで重要な役割を果たす交通系ICカードの規格が地域や国ごとに異なっていて相互利用できない現状は、
利用者にとってマイナスであり改善されるべきである。
従来のNFCに加えてフェリカを国際標準規格に加え、将来的には各ICカードの相互利用を可能にする必要がある。)
◎フェリカの3つの強み
@ 処理スピードの速さ ラッシュ時に1分間で60人改札通過可能
A 高度なセキュリティ機能
B 「マルチアプリケーション機能」
フェリカの内部は事業者別にそれぞれ個別のエリアが割り当てられている。
そして、エリアごとに鍵とアクセス権が設定できる。
そのため、あるエリアはオープンにして、あるエリアはクローズするといったことが自由にできる。
これを応用すれば、たとえばJRの直営店で電子マネーを使うとポイントがつくが、
非提携店で電子マネーを使って買い物をしてもポイントがつかない、という柔軟な使い方ができるのだ。
Suicaの事業を展開するうえで、大きな可能性につながった。
Felicuty(至福)に名前の由来するフェリカは、1988年に「宅配便の荷物整理タグ」を目的として開発が始まった。
その計画自体は頓挫したのだが、当時ソニーの名誉会長だった井深大が鉄道総研の会長に就いていた縁で、
鉄道総研の目にとまった。
そしてJR東日本とソニーの間で共同研究が始まったのである。
(⇒なるほど。井深さんはさすがだ)
○2016年10月25日アップルペイ開始
ベイリーVP(アップルペイ担当)来日 Suicaを強調
「朝夕の新宿駅、東京駅の光景は印象的です。何千人、何万人の通勤客で駅の構内はごったがえしていますが、
改札では一瞬も留まることなく整然と進んでいます。
こういう光景は他の国では見られない。
そこで通勤客が使っているのがSuicaなのです。
Suicaを使えばいちいち乗車券を買わなくても電車からバスへ乗り継ぐことができます。
そのベースち¥となっている非接触IC技術がフェリカなので、今回、私たちはそれを選んだのです」
⇒思い出したが、Suicaは日本オリエントではない。山之内さんの本で読んだが、確か香港で見て驚愕し、開発を命じたと記憶している
「JRはなぜ変われたか」
・Suicaへの挑戦
自動改札の普及状態について、ヨーロッパ、香港へ視察へ出かけた報告を受けた。
特に強い印象を受けたのは香港で、オクトパスカードとして広く普及し始めていて、
撮ってきたビデオの画像を見ると若い女性がハンドバッグの中に定期券を入れたまま、
それを自動改札に触れるだけで自由に通っている。
このカードは、鉄道やバスだけでなくショッピングなどにも利用できる便利なもので、すでに相当な数が普及しだしているという。
もう日本も待っている時期ではない。
香港ではすでに実用になっているのだ。
社内に残っていた記録のメモを見ると、私は98年3月5日に関係者を呼んで「ICカードは技術開発の段階から実用化を考える時期に来た。
強力なリーダーの下に、関係する部門と連係を密にしながら実用化する体制を作れ。
実現目標は20世紀中に。そして磁気式の時と同じように、一部の区間でよいのでまずやってしまえ」と言っている。
21世紀がスタートする時に、この画期的なシステムを実現したかったからだった。
⇒ 香港にモデルがあったとは知らなかった。
◎アップルのやり方
ある計画を実行に移す際に、初めから全方位では取り組まず、
まずやりやすいところ、リスクの少ないところから手をつけていき、
試行錯誤を繰り返しながら、絵に描いたもの(全体像)を徐々にリアライズ(遂行)していく。
計画の遂行が難しいと判断すれば、躊躇なく撤退する。
iPhoneにSuicaを載せたことは、その試行錯誤の段階であり、
ひとつの実験と捉えることができる。
◎かざすだけでSuicaを取り込むことができる
これは知らなかった。驚いた。
アンドロイドではアプリを入れて登録が必要。
iPhone7では、Suicaカードの上に重ねてデータを自動的に取り込むことができるようだ。
これが終われば、カードの方は文字通りただのプラスチックの板になり、使用できなくなる。
デポジットの500円はiPhoneにチャージとして還元される。
(モバイルスイカは1000円の年会費が必要だが、この場合は不要なのかなあ)
◎急増したモバイルSuica会員
2015年度1年間で約17万人増
2016年9月末〜2017年1月末 約47万人増 アップルペイ開始後の4か月
大半がiPhoneユーザーであろう
◎電子マネーの決済金額が5兆円を突破
クレジットカード年間利用額 約50兆円
電子マネーは10% 1000円以下の金額なら電子マネーという人がクレジットの2倍
(私の場合はほとんど楽天Eddyだが、クレジットでチャージしているので上記の額はダブリが多いのではないだろうか?)
◎カード会社の憂
最近では自動車業界でも中抜きの動きがあり、
グーグルが開発中の自動運転技術が、すべての自動車メーカの息の根を止めるのではないかと恐れられている。
最終的にはあのトヨタやGMでさえ、グーグルの下請けになるのではないかと懸念されているのだ。
今やそれと同じことが起こるのではないかと、クレジットカード業界、
あるいは決済業者は戦線恐々としている。
電子決済サービスが主流となれば、グーグルやアップル、アマゾンなどのIT企業、
ネット企業が従来のクレジットカード会社に取って代るのではないかというわけだ。
クレジットカード業界の盟主、つまり支配者が変わる可能性が出てきたのだ。
◎iPhoneのセキュリティ
iPhoneのセキュリティは認証システムが優れており非常に高い。
クレジットカードのようなスキミングリスクもない。
アップルペイは、利用者の利便性と安心の双方を満足させるためによく考えられたサービスだとわかる。
このうち利便性の面で言えば、Suicaなどの電子マネーの部分とクレジットカード部分の2つに分かれていて
使いやすくなっている。
一方でアップルペイは、安心感の面でもずいぶん考えられていて、これまでのクレジットカードに比べれば
雲泥の差がある。
スキミングの恐れはなく、TouchIDによる本人認証でなりすましを防げる。
セキュリティを高めプライバシーを守る設計
@紛失時には「紛失モード」で探すことができ、「遠隔消去」で個人情報をすべて消すことができる。
Aクレジットカード番号はそのままサーバに保存されることはなく、各デバイス固有のアカウント番号が発行され
暗号化された状態で安全にデバイス無いのセキュリティエレメントに保管される。
◎iPhoneの日本のシェアは50%
iPhone7発売で売り上げ好調だったのは日本だけ
日本はアップルのドル箱
(我が家も家内と娘はiPhoneです)
●グーグルとの争い
アップルは、ユーザーがクレジットカードを利用した場合、アップルペイに参加したJCB,三井住友カードなどの
クレジットカード会社から一定の手数料を取る。
一方のグーグルは、アンドロイドペイに参加したカード会社からは手数料は取らない。
つまり、国際ブランドのVISAやマスターカードの領分は侵さないと約束しているから手を組みやすかったのだ。
この違いは、決済サービスに参加するクレジットカード会社にとって大きい。
ただし、アップルは、クレジットカード利用に関係した顧客データを集めることはしない。
これに対してグーグルは顧客データを取る。
日本経済新聞電子版2016年8月31日号によれば、グーグルは手数料を取らない代わりに、
「利用者の消費動向に関するデータを収集・分析。一人一人に提供する情報や広告の精度をさらに高めることで
収益の柱である広告事業の拡大を狙う」という。
このように、アップルペイとアンドロイドペイという決済サービスには、対照的な違いがある。